渡辺明棋王に藤井聡太竜王が挑戦する第48期棋王戦コナミグループ杯五番勝負(共同通信社と観戦記掲載の21新聞社、日本将棋連盟主催)は、第2局が2月18日(土)に石川県金沢市の「北國新聞会館」で行われました。対局の結果、132手で勝利した藤井竜王がスコアを2勝0敗として自身初となる棋王獲得まであと1勝としました。
半年前の実戦例
先手となった渡辺棋王は角換わり腰掛け銀の定跡形に誘導します。これに対し後手の藤井竜王は、先後同型となりそうな局面の直前で自陣一段目に飛車を回る変化を採用。昨年9月にあった王位戦七番勝負での対豊島将之九段戦でも藤井竜王は同様の変化を採用しており、藤井竜王の後手番の用意の形であることがうかがわれました。
千日手を含みにした待機策を敷く藤井竜王に対し、先手の渡辺棋王はすぐに4筋の歩を突いて右桂の活用を図りました。この数手後に本局は全ての実戦例を離れており、ここから二人の戦いが始まります。後手の藤井竜王が手に乗って二枚銀での反撃を用意したことにより、渡辺棋王はこれを上回る激しい攻めを繰り出す必要に迫られています。
藤井竜王の苦悩
盤面右方で双方の大駒が飛び交う激しいやりとりが繰り広げられた結果、渡辺棋王は角と銀を、藤井竜王は飛車と桂を手にして局面は一段落を迎えました。このあと香取りを見込める渡辺棋王は駒得を、敵陣への飛車打ちを狙える藤井竜王は玉の安定度の差を主張して、局面は中盤の難所に突入します。
手番を握った後手の藤井竜王が敵陣に飛車を打ち込んだ局面は、感想戦でも重点的に研究されたポイントの局面になりました。この手に代えて後手は自陣飛車を打つことで先手の2筋の角を捕獲する順が有力で、数手後に控える桂の成り捨ての妙手と合わせて十分に指せる展開とされました。チャンスを逃した格好の藤井竜王は、実戦の進行では自信を持てなかったと振り返ります。
二枚角の攻めで藤井竜王が抜け出す
打った角の再活用に成功した先手の渡辺棋王ですが、こちらもすぐに分岐点に立たされます。2筋に歩を打って攻め合いに持ち込むのは第一感の候補手ですが、渡辺棋王はその後の展開で自玉が不安定になることを重く見てこの順を見送りました。代えて選んだ金寄りは決着を先送りにする守りの手ですが、渡辺棋王は局後「手の流れからこれではおかしいかな」と振り返りました。
容易に結論の出ない押し引きが続いたのち、局面を抜け出したのは後手の藤井竜王のほうでした。攻めの要と見られていた竜をじっと自陣に引き付けて自玉を安全にしつつ、得意の三段玉で先手の攻めをかわした組み合わせが渡辺棋王の意表を突きました。優位に立ってからも素早く、自陣に放った二枚角のコンビネーションで渡辺陣を守る5枚の金銀を一気に崩し切りました。
終局時刻は19時27分、自玉への詰みを認めた先手の渡辺棋王が駒を投じて熱戦に幕が引かれました。これで勝った藤井竜王はスコアを2勝0敗として自身初となる棋王獲得並びに六冠奪取にあと1勝としています。注目の第3局は3月5日(日)に新潟県新潟市の「新潟グランドホテル」で行われます。
水留 啓(将棋情報局)