タナベコンサルティングはこのほど、「企業経営に関するアンケート調査」の結果を発表した。
同調査は2022年12月5日〜12月19日、全国の企業経営者、役員、経営幹部、経営企画部責任者・担当者などを対象に実施。有効回答数は、1,677件(同社主催「経営戦略セミナー2023」に参加の経営者・経営幹部1,107件、Web・メルマガによる回答570件)だった。
今期(2022年4月〜2023年3月を想定)の業績の見通しについて尋ねると、各業種とも「増収増益」と回答した企業が最も多い結果となった。
また、来期(2023年4月〜2024年3月を想定)の業績の見通しについても、「増収増益」の割合が今期の業績の見通しよりも増加傾向にある。
事業戦略における取り組むべき課題については、上位の項目と下位の項目の差が顕著に出る結果となった。
その中でも「新商品・サービス開発」(37.7%)、「事業ポートフォリオ戦略策定・転換」(35.2%)、「新事業開発」(34.3%)の3項目に加え、「ビジネスモデル変革」(29.5%)が上位にあがるなど、事業戦略における上流工程の見直しが必要であることがわかる。
経営戦略における取り組むべき課題について聞いたところ、「経営企画・経営戦略立案機能の強化」(49.4%)が最も多く、次いで「戦略的組織再編」(47.0%)という結果となった。
両者とも、戦略"推進"を前提とした課題であり、いわゆる「攻め」の経営戦略が求められていることがわかる。一方、「守り」の機能であるコーポレート・ガバナンス、経営システムなどの意識はまだまだ低い状況であるといえる。
人的資本戦略における取り組むべき課題についての質問では、「人材育成」(72.7%)と回答した企業が圧倒的に多い。次いで「人材採用」(53.2%)となり、人的資本のベースとなる育成・採用の強化が課題といえる。
その反面、「人事制度改革」や「エンゲージメント向上」、「サクセッションプラン(事業承継)」など、人的資本経営の根幹ともいえる項目に関しては、課題認識としては未だ低い傾向にある。
資本・財務戦略における取り組むべき課題については、「成長投資と回収計画」(42.4%)と回答した企業が最も多かった。次いで、「財務資本の強化」(32.7%)、「キャッシュフローマネジメント」(21.3%)という結果に。
「成長投資と回収計画」という回答が最も高いことから、「経営戦略」と同じように「守り」よりも「攻め」に視点がおかれていることがわかる。併せて、財務資本の強化やキャッシュフローマネジメントなど、利益確保への動きが注目される。
DX戦略における取り組むべき課題について聞くと、「DXビジョン・戦略」(47.8%)が約半数と圧倒的に多く、次いで「DX人材の存在」(33.8%)という結果に。「DX」という言葉が社会に浸透した現在においても、根底となる「DXビジョン・戦略」がいまだに課題となっている状況といえる。
また、僅差ではあるものの「マーケティングDX」(29.5%)が「マネジメントDX」(28.8%)を上回っており、「オペレーションDX」や「HRDX」が低いことからも、経営戦略・財務戦略と同様、DX戦略においても来期は「攻め」の領域での投資が求められていることがわかる。
今回の結果を受けて、同社 戦略総合研究所 コンサルティングディレクション部 課長 久保多聞氏は、「アンケートの結果を見ると、来期の事業戦略・経営戦略ともに『攻め』の領域への優先度が高いことがわかりました。短期的な視点ではなく、未来を見据えた戦略的組織変革、人的資本投資、DX投資など、中長期的な目線での『攻め』の戦略構築が来期の大きなテーマとなるでしょう」とコメント。
併せて、「『事業戦略』の抜本的な見直しの必要性」「成長に向けた投資の加速化」「戦略推進機能の強化に向けた事業・組織・人材の一体化」を取り組むべき重要ポイントとして指摘している。