具体的には、マグネシウム、バナジウム、マンガンの3種類の金属元素を含む複合酸化物に着目し、金属の組成比を系統的に変化させたときの結晶構造と物性との相関性を明らかにすることにしたとする。

原料であるMgO、V2O3、MnO2の混合比が調整された後、固相反応法により組成の異なる4種類のMg1.33V1.67-xMnxO4(x=0.1~0.4)の合成が行われた。合成された酸化物について、粉末X線回折により相の同定、誘導結合プラズマ発光分光分析により金属組成の同定、透過電子顕微鏡により粒子の形態観察が行われたほか、放射光X線回折で得られたパターンに基づく結晶構造と電子密度の解析と、X線吸収分光法により金属元素の価数分析や結晶構造の歪み解析も実施された。

それらによる分析の結果、いずれの酸化物においても、立方晶で空間群Fd3mを有するスピネル型の結晶構造であることが判明したとする一方、x=0.4の酸化物のみ、第二相であるペロブスカイト構造に対応する回折ピークが見られたとする。

また、合成されたマグネシウム酸化物に導電剤や接着剤を加えて正極とした後、金属マグネシウムや電解質と組み合わせることにより、マグネシウム二次電池が作製され、その電池特性の評価として充放電サイクルの測定が行われたところ、いずれの酸化物においても充放電サイクルを繰り返すことが可能であり、Vを適量のMnで置換することにより、放電容量とサイクル特性が向上することが明らかにされたという。

条件下において、x=0.1の酸化物では、初期状態の73mAh/gに対して、13サイクル後に256mAh/g、x=0.2の酸化物では、初期状態の77mAh/gに対して、10サイクル後に215mAh/gの放電容量が得られることが確認されたとする。特に、テトラグライム(G4)電解質を使用すると、極端に低い配位能により負極の金属の溶解が抑制されるため、電池性能の向上に寄与することが示唆されたとする。

さらに、初期状態と1サイクル目の充放電後の電極のX線吸収分光スペクトルなどの結果から、結晶構造中のVO6八面体の歪みがMg2+の脱離と挿入を繰り返すことで大きくなることも確認されたとするが、これらの歪みは16dサイトを占有するMnイオンによって部分的に緩和されるため、x=0.1の酸化物においては結晶の歪みが最小となり、ホスト構造が安定化するため、高い放電容量に至ったと考えられるという。

  • 今回の研究の概要

    今回の研究の概要 (出所:理科大Webサイト)

なお、研究チームでは、今回の研究をさらに発展させることで、マグネシウム二次電池など、LIBに代替する次世代バッテリーの開発につながることが期待されるとしている。