研究の結果、金属錯体(溶質分子)とアセトニトリル(溶媒分子)のそれぞれの構造変化を、原子の位置情報として直接観測することに成功したという。
具体的には、光を吸収した溶質分子は、不安定な構造(正四面体型)から安定な構造(平面型)へと平坦化して振動。平坦化すると配位子の間の空間が広がるため、そのスペースに溶媒分子が入り込み、中心の銅原子に近づく様子が観測されたという。
この過程は、溶質分子の形状の変化が、周囲の溶媒の再配置を駆動していると理解できる(溶質分子→溶媒分子)とする。光を当てた直後はこのような一方向的な相互作用が支配的だが、しばらくすると逆方向の相互作用(溶媒分子→溶質分子)の影響が観測されるようになったとのことで、溶媒の入り込む動きによって溶質分子の振動が減衰し、さらなる平坦化が進行することが判明したと研究チームでは説明している。
研究チームでは、今回の研究で開発された手法によって、溶媒和が光化学反応でどのような役割を果たしているのかという、微視的なメカニズムを解明できるようになったとしており、これにより溶質分子と溶媒分子の双方向的な相互作用を原子の動きとして説明することが可能になったとしている。
また、紫外~可視光のレーザー分光では達成できない今回の手法ならではのユニークな点を活かした成果だともしており、今後、効率的に光エネルギーを化学エネルギーへと変換する人工光合成技術など、新たな光化学反応の開発にとって基盤的な技術となることも期待されるとしている。