女優の奈緒がナレーションを務めるカンテレのドキュメンタリー番組『ザ・ドキュメント ウクライナ、9×9の歌 明日をつくる子どもたちへ』が、17日(25:25~※関西ローカル)に放送される。

奈緒

2022年2月に始まったロシアによる侵攻で国外に脱出し、日本で暮らしているウクライナ人は2000人を超え、そのうちの約400人が18歳未満とされている。番組では、避難生活を送るウクライナ人の子どもたちが通っている都心の小学校へ。6年生のオリビアさんと3年生のヤンくんの授業には通訳を入れるなどの体制を整えているが、全てカバーすることはできず、2人は日々戸惑いながら学校生活を送っている。一方4人の子どもを育てるシングルマザーのエフゲニアさんは、小学校2年生のグリーブくんの算数の宿題を手伝おうとするも、肝心の翻訳アプリが適切な日本語に変換されず、問題文を読むこともままならない。

京都教育大学の黒田恭史教授は、以前から外国にルーツを持つ子どもたちがどんな場所でも学べるようにさまざまな言語の教材作成に取り組んできた。小学校から高校まで対応するウクライナ語の数学の動画教材を約600本作成し、YouTubeにアップロードするプロジェクトを進めている。

動画教材の翻訳を担当している留学生であるカテリーナさんは、留学中に祖国が侵攻を受けたことで帰国できなくなった。母と弟はドイツに避難したものの、父親は軍に入隊し、前線で戦っている。カテリーナさんは家族のこと、自分の将来のことについての不安を抱えながらも“自分にできることはないか”と考え続けていた。そんな中、「ウクライナの子どもたちが自信を持ち学習に前向きになれるきっかけをつくりたい」という思いから黒田教授が立ち上げた 「ウクライナの九九の歌」を作るプロジェクトで、カテリーナさんはウクライナ語の数字のフレーズを歌詞にしていく作業を担当。自らも大変な環境に置かれ、葛藤を抱えながらも、翻訳に取り組んでいる。日本に避難してきたウクライナの子どもたちを支援する人たちの姿を通して、言語の壁によって避難者が直面する問題について考える。

語りを担当した奈緒は、「ウクライナで起こっていることが、すごく遠い距離の話になってしまうところがあった中で、今回の映像を見て、自分のすぐ近くにいらっしゃることに気づかされましたし、自分でどう思うか、何を信じるか、自分に何ができるのかを考えて、向き合い続けることがとても大切なことだと感じました」と話し、子どもたちを見て「ヤン君が『ありがとう』の気持ちを返すだけじゃなくて、その先のアクションを起こす姿に、私自身すごく学ばせてもらいましたし、希望やパワーをたくさんもらいました。大人になって振り返ってみると、学校で勉強したことよりも、逆上がりができたとか、友だちとけんかしたけど仲直りできたとか、何かを乗り越えた体験の方が、今の自分にとって大切なことになっているなと思います」と自身の学生時代を思い出したことを明かした。

また、母1人で4人の子どもを抱えて避難してきたエフゲニアさんの姿からは「うちも父が早くに亡くなったので、母が1人で育ててくれたんですけど、だからこそ、今、大人になってみて『あっ、この時お母さん大変だっただろうな』とか、『この時、たぶんこれ我慢してくれてたんだろうな』って、気づく機会っていうのがたくさんあって、その度に自分が受けてきた無償の愛っていうのを感じる瞬間が、一緒にいなくても、ただ生きているだけですごくあるんですよ。そんなに愛されていた自分を感じるだけで、自分を肯定できるんです。母は、環境を少しでも良くしてあげようとか、そういう風に思って、汗水たらして私を育ててくれていたんだなっていうのを、今になって気づかされます」と振り返り、「お母さんから受けた愛っていうのは、記憶の中で消えることは絶対にありませんし、それは、本当に本当に私自身にとって、すごく幸せなことだったんだなって……。だから、きっとエフゲニアさんの思いっていうのは、お子さんたちが大きくなった時に、すごく温かい形で、かけがえのないお守りになるような愛情だと感じました」とコメントした。