ダイソンといえば高性能な掃除機や空気清浄機でおなじみですが、そんなダイソンが今年も専門家を招いた「花粉セミナー」を開催しました。埼玉大学大学院 理工学研究科の王青躍教授による「都市部花粉、花粉由来微粒子とその対策」です。
今回のテーマは、この数年で注目度が高まっている「粉砕花粉」、つまり超微細サイズの花粉について。とくに都市部で気を付けるべきという粉砕花粉と、その対策について王教授に聞きました。
花粉症の原因物質はウイルス並みの微小サイズ?
花粉症を引き起こす原因物質としては、スギやヒノキの花粉が有名です。これらの花粉はだいたい直径20~40μm(0.02~0.04mm)くらい。よく聞く「PM2.5(微小粒子状物質)」は「粒径2.5μmの微粒子」を指すので、花粉というのは空気中の浮遊物質としてはかなり大きいことがわかります。
ただし王教授によると、一般的に花粉は「壊れやすい」性質を持っており、これが問題になるんだとか。空気中の排気ガスやホコリ、小雨などに接触することで花粉が粉砕され、マイクロレベル、あるいはウイルスのようなナノレベルの超微粒子となってしまうのです。これが最近耳にする「粉砕花粉」の正体。
粉砕花粉の最大の問題点はズバリ軽さ。粉砕後のサイズによってはウイルスレベルの微小サイズになるので、少しの動きで簡単に空気中に舞い上がり、粒子によっては何時間も浮遊を続けます。しかも、粉砕前の花粉はその大きさから喘息を引き起こさないといわれていましたが、粉砕花粉は肺の奥まで入り込み、喘息症状を引き起こす原因となりえるのです。粉砕花粉のサイズによっては、肌から体内に吸収されることもあるといいます。
粉砕花粉でとくに注意が必要なのは「雨の次の日」と「都市部」とのこと。「雨の日は花粉が飛散しにくいので花粉症がラクになる」という説もありますが、雨の日は花粉の亀裂から水分が入り込み、内容物が膨張して花粉が破裂する現象が多発します。雨の翌日が晴れた日だと、通常よりも多くの粉砕花粉が空気中に漂う可能性があるのです。
さらに、王教授の調査では山間部よりも都市部のほうが粉砕花粉の総量は多いそう。理由としては、排気ガスやPM2.5のような浮遊粒子が、花粉に雨が侵入するための傷や亀裂を作るためと考えられています。しかも、空中を浮遊する粉砕花粉に大気汚染物質が付着して、これも身体に悪影響を及ぼす可能性があるそうです。
花粉対策の基本のひとつは「掃除」でも……?
王教授によると、自宅での花粉対策の基本は「花粉を家にもちこまない」、「入り込んだ花粉はすこしでも減らす」こと。
前述のとおり、花粉は空気中の微粒子などによって傷ついたり粉砕されますが、吸い込んだ花粉を遠心力で分離するサイクロン掃除機は大丈夫なのでしょうか? サイクロン内の衝撃で粉砕花粉化した超微小粒子が、掃除機の排気とともに空気中に逃げ出さないか心配です。
そこで王教授は、主要メーカーの掃除機でスギ花粉を吸引する実験を行いました。(1)そもそもダストボックス内で花粉は破裂するのか?(2)掃除機の排気口から漏れる花粉の破片量――という2点の調査です。
上記(2)の排気口から漏れ出る花粉破片量は、「10μm以下」「5μm以下」「2.5μm以下」という3つのサイズ別に計測しています。ほとんどの掃除機が2.5μm以上の粒子はブロックしていましたが、2.5μm以下の粉砕花粉を完全にブロックできたのはダイソンともう一社の掃除機だけでした。王教授は「通常の大きな粒子の花粉よりも、超微粒子である粉砕花粉のほうが身体に悪影響を与えることを考えると、掃除機の排気性能は重要」といいます。
また、王教授は「室内に入り込んだ花粉が破裂することもあるので、粉砕花粉だけではなく通常の花粉を掃除機で除去することも大切」とコメント。「掃除機で空中に浮遊する前の花粉を可能な限り除去し、浮遊した花粉(粉砕花粉)は空気清浄機で捕集する」ことが花粉対策の基本だとしました。
ダイソンは今回の花粉セミナーに「花粉対策にオススメの掃除機」として、「Dyson V12 Detect Slim」を展示。この製品はヘッドから緑のレーザーが照射されて目視しにくい微細なゴミを可視化。もちろんウイルスサイズの粉砕花粉は見えませんが、粉砕前の花粉レベルの粒子なら見えるようになるといいます。
今回のセミナーでは、花粉対策はこれまでの「こまめな掃除と高性能な空気清浄機が重要」という基本的な対策にプラスして、「掃除機にもウイルスレベルの高性能なフィルターが大切」という内容が紹介されました。空気清浄機のフィルター性能をチェックするひとは多いと思いますが、今後は掃除機のフィルターにも注目してみてはいかがでしょうか?