Asuka-881757の特徴としては、KREEPをほとんど含まないことに加え、形成年代が39億年前と古いことが挙げられるという。このようなKREEP-freeの月隕石を詳細に調べることで、過去の月の火山活動の全体像が明らかになるのではないかと期待されたとする。
今回の研究では、走査電子顕微鏡や電子プローブマイクロアナライザ、ICP(誘導結合プラズマ)質量分析計などの分析装置が用いられ、化学組成や鉱物の分析が行われ、岩石学的モデル計算が行われた。そして、アポロ計画で採取された月試料のデータや、別の月隕石の分析結果との比較が実施されたところ、Asuka-881757は、アポロ計画で回収された多くの玄武岩よりも、深度が浅く、低い温度のマントルを起源としていることが判明したという。
アポロ計画で回収された玄武岩は、より深い深度に加え、高温のマントルを起源としており、両者が明らかに別のメカニズムで形成されたことが示されたと研究チームでは説明している。これは、39億年前(Asuka-881757の形成年代)から33億年前(KREEPによる火山活動)にかけて、月のマグマ活動の要因が変化したことを示す結果であるという。
隕石はアポロ計画などでの探査試料とは異なり、月の全球表面から平均的にサンプリングされている可能性があり、重要な試料だとされており、研究チームでは、月隕石を研究することで、月の火山活動の詳しい歴史が解き明かされることが期待されるとしている。