小山怜央アマがプロ入りを目指す棋士編入試験は、第4局の横山友紀四段戦が2月13日(月)に関西将棋会館で行われました。対局の結果、133手で小山アマが勝利して通算成績を3勝1敗として合格を決めました。小山アマは今年4月1日付けで四段となります。

四間飛車対居飛車穴熊の対抗形

棋士編入試験は新四段5人と対局を行い、3勝を挙げることができれば合格となるもの。1月に行われた編入試験第3局の狩山幹生四段戦を落としていた小山アマは2勝1敗の成績で本局を迎えました。試験官を務める横山四段は兵庫県出身の23歳。四間飛車党で、オーソドックスな駒組みから繰り出す無理のない大駒のさばきを長所としています。

小山アマの先手で始まった本局は、後手の横山四段が得意のノーマル四間飛車を採用して幕を開けました。これに対し小山アマは迷いなく居飛車穴熊の堅陣に玉を収めます。攻めの右桂を活用しておいてから4筋に飛車を回ったのが小山アマ用意の作戦で、後手の攻めを誘って局面を動かす狙いがあります。横山四段がこれに応戦した結果、先手の桂頭をきっかけに戦いが始まって局面は中盤戦に突入しました。

小山アマがリードを奪う

盤面右方でのもみ合いは部分的には互角の取引ながら、振り飛車の美濃囲いが中途半端な状態にある点が小山アマの主張です。中盤の難所を前に試験官の横山四段が一手一手慎重に時間を使うのとは対照的に、入念な事前研究をバックにした小山アマはプロ入りを懸けた一局とは思えないハイペースで指し手を進めていきます。

対局開始から60手あまりが経過して激しい攻防が一段落した局面で、両対局者の消費時間は横山四段が1時間19分、小山アマが6分と大きな差が開いています(持ち時間3時間)。局面は、自然に指し進めていたように見えた横山四段の方に誤算があり、居飛車穴熊の堅陣を背景に大駒のさばきを成功させた小山アマが優勢となって終盤に突入しました。

横山四段の執念

劣勢に陥った横山四段ですが、一間竜の寄せ形を作られた窮地からもギリギリの執念の粘りを見せます。自身の攻めの要の角を金と刺し違え、この金を自陣に打ち付けたのが受けの勝負手。こうして小山アマの竜を捕獲すれば一気の寄せはないという判断で、これによって形勢の針は一気に互角に近いところまで引き戻されました。

優勢の将棋を決め切れずに悪いムードを迎えた小山アマは、残しておいた持ち時間を利用して立て直しの方策を練ります。攻め合いに持ち込みたい気持ちを抑えて自陣に持ち駒の金を打ったのが冷静な受けの好手で、本局全体を振り返るとこの手で小山アマが踏みとどまった格好です。横山四段としては守りの方針を一貫して自玉を固めるなどの勝負手も有力な局面でした。

踏みとどまって小山アマが夢叶える

再び優勢に立った小山アマは、今度は冷静な攻めで確実に収束に向かいます。「端玉には端歩」の格言通りの端攻めを起点に桂の連続跳躍で後手玉を隅に追いやったのが最後の決め手となりました。最後は横山四段が形作りをしたところで小山アマが後手玉を即詰みに討ち取って勝利を手にしました。

勝って念願のプロ編入を決めた小山アマは、局後に開かれた記者会見で「本当にうれしく安心している。今後も勉強を続けていきたい」と喜びを語りました。小山アマは今年4月1日付けて四段として棋士デビューを迎えます。順位戦に関してはフリークラスの所属となり、C級2組への昇級には「良い所取りで、30局以上の勝率が6割5分以上」など一定の成績を収める必要があります。

  • プロ入りを決めた小山アマは奨励会を経験せずに現行の編入試験に合格した初の棋士となる(提供:日本将棋連盟)

    プロ入りを決めた小山アマは奨励会を経験せずに現行の編入試験に合格した初の棋士となる(提供:日本将棋連盟)

水留 啓(将棋情報局)