お墓を購入する機会は一生で一度あるかないか、ほとんどの人は未経験だと思います。お墓といえば、「先祖代々のお墓を引き継いでいくもの」といった考えが一般的でしたが、世帯構造の変化などから変わらざるを得なくなってきています。これからお墓を選び、購入を考えている人に向けて、お墓の種類と費用の相場、さらに維持費まで、長い目でみて後悔しないお墓選びのヒントをお伝えします。
■お墓の種類と費用の相場
代表的なお墓の種類ごとに、費用相場をみてみましょう。なお、費用の相場は、鎌倉新書「第13回 お墓の消費者全国実態調査(2022年)」「お墓の価格相場全国一覧」を参照しています。
一般墓の費用
お墓といってまず思い浮かべるのが「一般墓」です。「一般墓」は墓石を建てて代々継承していく昔からある伝統的な形式のお墓です。
一般墓の主な費用は次の3つです。
・ 永代使用料(墓地代)
・ 墓石代
・ 管理費
● 永代使用料(墓地代)
永代使用料とは、墓地の使用料のことです。好きなところを勝手に墓地にすることはできず、法律によって、墓地として利用できる場所が決まっています。その場所である寺院や霊園から土地を借りて使用する、そのための使用料が永代使用料です。土地の購入ではないので、所有権はありません。「永代」と付くように、一度購入すれば継承者がいる限り、永代に渡って使用することができます。
・永代使用料の平均価格は57.7万円
永代使用料は、墓地の立地や面積によって変わってくるので、40万円~120万円くらいの幅をみて考えておくといいでしょう。
● 墓石代
墓石代の内訳は、墓石の種類や加工費、施工費などです。墓石の価格は石質や産出地で開きがあり、また、石材の量に比例します。加工費はオーダーメードのデザインや手の込んだ細工を施すと、加工賃が高くなります。石材店によっても金額は異なりますが、寺院や霊園によっては石材店が指定されている場合があります。
・墓石代の平均価格は110.6万円
墓石の種類によっては、数十万円から数百万円と価格にかなりの幅が出ることも念頭にいれておきましょう。
● 管理費
管理費は寺院や霊園の立地、設備、区画の種類や広さなどによって異なります。1年ごとに支払う場合もあれば、数年分を一括で支払う場合もあります。管理費の支払いを怠るとお墓の使用権が取り消されてしまうことがあるので注意しましょう。
・平均年間管理費は7907円
管理費の相場は1年あたり数千円~数万円です。
樹木葬の費用
樹木葬は墓石の代わりに樹木を墓標とした新しいタイプのお墓です。価格や管理費が一般のお墓に比べてリーズナブルで、承継者がいなくなってしまった場合にも、永代供養をしてもらうことが可能です。核家族化や生涯未婚率が進行している世の中で、ニーズが高まっています。
・樹木葬の平均価格は69.6万円
形式が多様であるため、霊園によって価格の幅がありますが、ボリュームゾーンは60万円~80万円となっています。
●管理費
樹木葬は1区画あたりの面積がコンパクトで、シンボル(樹木など)を共有するため、管理費は一般のお墓に比べて安くなっています。年間の管理費がかからない樹木葬も近年増えてきているそうです。
・平均年間管理費は6027円
本調査では約8割が管理費はかからないと答えています。
納骨堂の費用
納骨堂は、寺院や霊園の建物の中に、故人の遺骨を納めるタイプのお墓です。「ロッカー型」や「仏壇型」、遺骨が参拝スペースまで自動的に運ばれてくる「自動搬送型」などがあります。
使用期限が決まっている場合が多く、期限後は合葬(合祀)されることになります。そのため、樹木葬と同様に、継承者がいない場合も安心して購入できます。
.納骨堂の平均価格は79.4万円
ロッカー型や仏壇型の納骨堂であれば50万円以下での埋葬も可能ですが、自動搬送式の場合は機械の維持に費用がかかるため価格は高くなります。
<費用の相場>
ロッカー型・仏壇型 : 約30万円~
自動搬送型 : 約70万円~
●管理費
納骨堂は、建物の修繕やメンテナンス、清掃費など、館内を清潔に保つための費用がかかります。
・平均年間管理費は1万1893円
一般墓や樹木葬よりも高くなっています。特に、近年注目を集めている「自動搬送型納骨堂」は定期的なメンテナンスを行う必要があるため、年間管理費が高額になる傾向があるようです。
■お墓の選び方
ここまでお墓の種類と、費用の相場をお伝えしましたが、お墓を選ぶ際には、費用よりも先に、お墓を購入する目的を考える必要があるでしょう。
お墓を購入する理由はさまざまです。「故郷のお墓が遠く、なかなかお参りができないので、生活拠点の近くにお墓を移転(改葬)したい」、「自分たちのお墓を持ちたい」、「継承者がいないので墓じまいをして、永代供養にしたい」など、購入する目的を考えて、それを実現できるお墓を見つけることが先決です。
立派なお墓を建てても、後を継ぐ人がいなければ、行き着く先は無縁仏です。お墓はご先祖、自分、そして子孫のことまで考えて選択をする必要があります。少子化で、将来的にお墓の管理が難しくなるケースは増えてくるでしょう。今はお墓参りができても、将来はわからないという場合は、一定期間が経過したら合葬(合祀)になるものを選ぶといいでしょう。
また、お墓までのアクセスも重要です。前出の調査で、「お墓選びで最も重視した点」を聞いたところ、1位が「お墓の種類」、2位が「自宅から霊園までのアクセス」となりました。
お墓を守る人が高齢になってくると、お墓参りのしやすさは特に重要になってきます。他にも、購入したら終わりではなく、お墓を維持・管理するための見落としがちな費用も考えにいれる必要があります。お墓選びで後悔しないためにも、目的を整理して、十分検討してから決めましょう。