「とりとめのない会話」「とりとめのない文章」などの言葉を聞いたことのある人は多いでしょう。しかし詳しい意味や正しい使い方まではっきりとわかる人は少ないかもしれません。
本記事では「とりとめのない」の意味や使い方、類義語・対義語、英語表現を解説しています。
「とりとめのない」の意味とは
「とりとめのない」とは、具体的にどのような状態を表すのでしょうか。まずは意味を見ていきましょう。
「とりとめのない」とは「まとまりがない」といった意味を持ちます。目的とするものがなく定まらない様子、要領を得なかったり結論がなかったりする様子や、重要ではないことなどを「とりとめのない◯◯」と表現します。
漢字で書くと「取り留めの無い」
「とりとめのない」を漢字で書くと「取り留めの無い」「取留の無い」となります。一般的にはひらがなで表記されることが多いです。
「とりとめ」とは
「とりとめ(取り留め)」とは「まとまり」や「定めた目的」「押さえ留めること」といった意味を表す言葉です。よって、「とりとめのない」は「話の結論や結末がない、まとまっていない」といった意味になります。
「とりとめ」という言葉の意味から「とりとめのない」の意味を推測することができますね。
「とりとめがない」「とりとめもない」などとも表現する
また、「とりとめ『が』ない」「とりとめ『も』ない」という言い方もよく使われます。「あの人の文章にはとりとめがない」「とりとめもないことが頭に浮かんできた」「どうにかしようと、とりとめもない考えをたどった」などの形で使われます。
「とりとめのない」の使い方
「とりとめのない」は、文章や会話などでよく用いられます。ここでは、よく使われる具体的なフレーズをいくつか紹介しましょう。
とりとめのない文章
「とりとめのない文章」は「バラバラでまとまっていない文章」のことを意味します。書かれている意図や趣旨が明確でなかったり、書式が定まっていなかったりと、内容や見た目にまとまりがない様子を表した表現です。基本的には否定的な印象があるでしょう。
とりとめのない人
「とりとめのない人」は「話にまとまりがない人」「話がわかりづらい人」を指します。こちらも否定的な印象があるでしょう。「とりとめのない」は、上記のように要点がわかりにくい文章にも使えますし、人に対しても使うことができます。
とりとめのない話・とりとめのない会話
「とりとめのない話」や「とりとめのない会話」は、簡単にいうと「ただのおしゃべり」といった意味合いになります。特に結論や結末がなく重要ではない話、気楽な話に対して用いられることが多く、「雑談」とも近い表現です。
とりとめのない日常
「とりとめのない日常」は「これといった予定がなく、特に何もすることがない毎日」という意味です。
特別なことがないいつも通りの生活、平穏な日々というニュアンスでも使われます。
「とりとめのない」の例文
ここからは実際に、例文を見ていきます。
その人の頭の中は、とりとめのない考えでいっぱいになっていた
頭の中で、考えがまとまらずにバラバラになっている人のさまを表す例文です。
考えることがたくさんあって、それらがバラバラでまとまりがなく考えの結論に至っていない状況がわかるでしょう。
あの先生はとりとめのない説明をするのでわかりにくい
先生の説明がまとまっておらず、わかりにくいことを表す例文です。
説明をしているものの、話す順序や内容がまとまっていないことから「とりとめのない説明」という表現を使っています。
祖父がとりとめのない話をはじめた
祖父が、結論や結末が特になく、内容も重要ではない話をはじめた、ということを表した例文です。
「おしゃべりをはじめた」「雑談をはじめた」などとも言い換えられます。
思いつくままに書かれていて、とりとめのない文章だ
まとまりがなく意図や結論が何かわからない、何が言いたいかわからない文章を指して「とりとめのない文章」と表しています。
思ったことがダラダラと書かれている文章を読んで、結局何を言いたいのかわからずに困っている状況が想像できるでしょう。
「とりとめのない」の類義語・言い換え表現
ここからは「とりとめのない」の類義語として挙げられる言葉を紹介します。
取るに足らない・取るに足りない
「取るに足らない」「取るに足りない」は「わざわざ問題として取り上げるまでではない、聞き入れるほどの価値がない、ささいなこと」といった意味を持つ表現です。「あまり重要ではない」といった意味で、「とりとめのない」の類義語として挙げられます。
たわいない
「たわいない」には「しまりがない」「しっかりとした考えがない、思慮分別がない」といった意味があります。「たわいない会話」は「そこまで大した意味のない会話」「雑談」といった意味で使われます。
なお「他愛無い」と書くのは当て字です。
よしなしごと
「よしなしごと」とは「つまらないこと、役に立たないこと」を表す言葉です。「意味がなくつまらない」といった意味で、「とりとめのない」の類義語といえます。
漢字では「由無事(由無言)」と書きます。
漠然と
「漠然と」は、「まとまりがなくぼんやりとした様子、曖昧な」を表す言葉です。「はっきりしない」という意味で「とりとめのない」に似た表現と言えるでしょう。
支離滅裂
「支離滅裂」とは、バラバラで一貫性のないさまを表す言葉で、内容や発言が矛盾している場合に多く使われます。「まとまりのない」という意味で「とりとめのない」に近い表現として挙げられます。
「とりとめのない」の対義語
次に「とりとめのない」の対義語を紹介します。
大切、重要
「とりとめのない」は「目的とするものがなく定まらない様子、結論や意味がない様子」という意味を持つため、反対の「最も必要なこと、物事の中心」といった意味を持つ「大切」「重要」は対義語にあたります。
有意義
「有意義」には「意義のあること、意味や価値があると考えられること」という意味があります。これも「大切」「重要」と同様に対義語として挙げられます。
筋が通る
「筋が通る」「筋が通っている」は「道理にかなっている、物事が正しく行われている」という意味です。「まとまりがない」という意味を持つ「とりとめのない」の対義語といえます。
理路整然
「理路整然(りろせいぜん)」は「物事が道理にかなっている、矛盾やほころびがなく筋が通っているさま」を表す言葉です。
物事が整理整頓され、乱雑ではなく論理的に筋が通っているという点で、「とりとめのない」とは反対の意味を持つといえます。
首尾一貫
「首尾一貫(しゅびいっかん)」は「何らかの方針や考え方などが、はじめから終わりまで変わることなく筋が通っていること」を表す言葉です。
こちらも、物事にまとまりがなく乱雑としているさまを表す「とりとめのない」の反対の意味を持つ言葉として挙げられます。
「とりとめのない」の英語表現
「とりとめのない」を英語で表現する場合は、「discursive」「rambling」「wandering」「pointless」などがあります。
「discursive」は「散漫な、とりとめのない」という意味を持つ形容詞です。「rambling」は「ぶらぶら歩く」という意味の他、「(話や書物などが)まとまっていない、とりとめがない」といった意味を持つ形容詞です。
「wandering」も形容詞として「あてもなく歩き回る、さまよう」といった意味を持つ言葉で、「目的がない、意図がわからない」といったニュアンスで、「とりとめのない」の英語表現に使えます。
また「まとまりがなく何が重要かわからない、無益な」といった意味の形容詞である「pointless」を使うこともできます。
(私の上司はとりとめのない話し方をする)
(彼女はとりとめのない考えにふけっている)
(彼女の議論はいつもつかまえどころがない)
「とりとめのない」は意味や目的がない様子を表す言葉
「とりとめのない」は「まとまりや目的・結論などがなく、バラバラとしたさま」を表す言葉です。その様子から、話や文章などが要領を得ない、重要ではないというようなことを表現する言葉として用いられています。
類義語には、「取るに足らない」「たわいない」「よしなしごと」「漠然と」「支離滅裂」などが挙げられます。また、対義語には「大切、重要」や「有意義」、「理路整然」「首尾一貫」といった言葉が挙げられます。
言葉の意味やニュアンス、類義語・対義語、英語表現などをしっかり理解し、日常の中でも使ってみてくださいね。