ダイビングのメッカとして知られる静岡県の伊豆。

たくさんの生き物たちが暮らす海中世界で、伊豆富戸城ヶ崎インディーズのダイビングインストラクターであり、水中撮影チーム「CONTRAST」のメンバーであるtakuya(@takuya_sea)さんが見つけたのは、九州ゆかりの“珍客”でした。

昨日伊豆半島にてニシムタの買い物カゴ発見。 調べたところ南九州のホームセンターとの事。
風に吹かれ黒潮に乗りまた風に吹かれたどり着いたのでしょうか。
もちろん回収しましたが、流れ着く生物だけでは明確にイメージできない季節来遊魚のルートを感じさせてくれてありがとニシムタ(@takuya_seaより引用)

  • @takuya_seaより引用

青い海中に漂う買い物カゴ。

  • @takuya_seaより引用

シュールな姿はどこか難破船のようでもあります。

この投稿に対し、Twitterユーザーからは「不思議な光景。。。」「新種のカニかと思った。」「お前伊豆半島まで行っとんたんか・・」といった驚きのコメントが続出。近年、海洋プラスチックゴミが世界的な問題になっていることもあり、「潮の流れってすご!っていう気持ちと、プラスチックが海に…。という気持ちと複雑」という声もありました。

鹿児島のホームセンター「ニシムタ」になじみのあるユーザーからは、「毎日のようにニシムタ利用させてもらってます。回収していただきありがとうございます」といった感謝のコメントも多数寄せられています。

伊豆の海に漂う鹿児島発ホームセンターの買い物カゴ。見つけたときはどのような状況だったのでしょうか。ツイ主のtakuyaさんにうかがいました。

投稿者に聞いてみた

――takuyaさんのダイバー歴とお住まいの地域を教えてください。

ダイバー歴は20年です。父親がダイビングショップを経営しており、12歳でダイビングを始め、現在32歳です。静岡県伊東市に住んでいます。

――動画を撮影されたときの詳しい状況を教えてください。

発見したのは1月20日で、いつも通りお客様をお連れしてダイビングをしているときでした。風向きから、漂着ゴミの多くなるコンディションの日でした。

場所は、静岡県伊東市富戸の「ヨコバマ」というダイビングポイントです。買い物カゴを発見したときは水面付近を漂っており、撮影時は少し引っ張り下ろしたタイミングでした。

漂着ゴミはそこまで珍しくなく、ダイビングのコースや安全を逸脱しない程度に日々ゴミは回収しています。ただ、今回は買い物カゴという大きいものであったため見過ごせず、回収したところ「ニシムタ、、? どこ?」という感じでした。

漂着ゴミの種類は多岐にわたり、ときには海外からのゴミを回収することもあります。買い物カゴや漁具のカゴ、貨物カゴなどが打ち上がったり、水中を漂ったりしているのも稀に見かけます。今回は聞いたことがない店名であったこともあり、調べてみました。

――カゴがたどったルート、takuyaさんはどう考えられていますか?

カゴを盗んだ人が近隣で捨てた可能性や、船から落ちた等の可能性も捨てきれません。風や不意に川に落としてしまったなど、海洋ゴミの海への流入は本当にひょんなことから発生します。

なんらかの事情により海に落ち、冬時期ならではの季節風により沖に流され、黒潮に乗って北上し、20日に吹いていた伊豆の東側に吹き込む風により沿岸に寄せられたものではないかと推測します。

伊豆半島には毎年夏から秋にかけて「季節来遊魚」と呼ばれる、本来南方にいる魚の幼魚達が台風や黒潮に乗り流れ着きます。そのルートが九州など南方から来ているのは知っていましたが、生物にはもちろん産地の記載はありません。

今回ニシムタのおかげで、「やはり南方の生き物は黒潮にのって流れ着くんだ!」というイメージが明確になり、感動しました。

――今回の投稿には大きな反響が寄せられましたね。

何気ないツイートにここまでの反響があると思わず、配慮が足らなかった点や、場所名が珍しかったというだけで店名を挙げてしまい、ご迷惑をおかけしてしまっていないか少し心配です。

ただ、コメントを見る限り「ニシムタ」というお店が地域にとても愛されていることを知り、そして海のスケールや海流のつながりについて驚き、興味を持ってくれている方が多く、ほっこりしています。

――takuyaさんが所属する水中撮影チーム「CONTRAST」は、どのような活動をされているのですか?

水中撮影チームは全員30代前半のメンバーで構成されており、

・日本の海を世界に発信すること
・世界的にはスタンダードであるチームでの撮影に挑戦すること
・ダイビング業界の若手で力を合わせてムーブメントを起こすこと
・とにかくプロダイバー同士で楽しむこと

をテーマに世界的なフォトコンテスト受賞を目指して活動しています。昨年開催された国際的な写真コンテスト「Tokyo International Foto Awards」では、金賞を受賞しました。


今回、「ニシムタ」の買い物カゴがどのようにして伊豆の海に行きついたのか、正確なところは誰にもわかりません。ただ、takuyaさんの推測通り、九州から黒潮に乗って北上してきたのであれば、自然のスケールの大きさに驚かされる反面、海洋ゴミ問題の深刻さを感じずにはいられません。

買い物カゴのような大きなものでもちょっとした拍子に海に落ちてしまうとのことなので、意図せずゴミが飛んでいってしまうことのないよう、気をつけたいものです。