マネ―スクエアのチーフエコノミスト西田明弘氏が、投資についてお話しします。今回は、米国の金融政策について解説していただきます。


バイデン大統領は2月7日、議会の両院合同会議において一般教書演説(State of the Union address)を行いました。パンデミックからの回復や大量の雇用創出など過去2年間の実績を強調し、ミドルクラスの復活などに向けて今後の政策提案を訴えました。

今月中にも、具体的な政策提案を盛り込んだ2024年度予算教書が発表される見込みで、それを受けて政府・議会間、そして、上院の過半数を握る民主党と下院の過半数を握る共和党との間で、予算交渉が本格的にスタートします。

バイデン大統領は一般教書演説で、ミドルクラス支援の財源として富裕層への課税強化(ミニマム税導入)や企業の自社株買いに対する増税などを提案しました。しかし、共和党の反発は強く、実現する可能性はかなり低そうです。

また、バイデン大統領は、デットシーリング(債務上限※後述)の問題に言及し、「デフォルト(債務不履行)は起こさせない」として、上限引き上げを求めました。そして、共和党が社会保障などの歳出の大幅削減を交換条件にしていることを批判。一部の共和党議員がヤジを飛ばし、大統領が応酬する場面もありました。

予算交渉は2024年度が始まる10月1日まで、あるいはそれ以降も続く長丁場です。予算交渉の進捗次第では、とりわけ税制変更が絡む場合に市場が反応するかもしれません。また、夏ごろにはデットシーリングの事実上の期限が到来。対応が遅れれば、市場でデフォルトの懸念が高まる可能性も否定できません。

◆デットシーリング

米連邦政府の法定「債務上限」のこと。政府はデットシーリングを超えて債務を増やすことができない。債務が上限に達すると、都度、議会が上限を引き上げてきたが、予算交渉などに関連して引上げが難航すると、デフォルト(債務不履行)の懸念が高まる。とりわけ、国債の利払いや社会保障は自然発生するので、これが履行できない可能性が意識される。米政府は債務が上限に達すると、一時的に政府基金等から資金を流用する奥の手を使って時間稼ぎをするが、それにも限界がある。米政府はこれまで一度もデフォルトしたことはないが、2011年は8月の限界ギリギリまでデットリーリングの引き上げが遅れて金融市場が大きく動揺した(米ドル安、株安、金利低下)。