「しょうもないこといっとったらいてこますぞ」といったセリフを、テレビや映画、漫才などで聞いたことがある人も多いはず。この「いてこます」にはどのような意味があるのでしょうか。そしてどこの方言なのでしょうか。
この記事では「いてこます」の意味や由来、使い方などについて解説します。
「いてこます」とは
まずは「いてこます」の意味や由来について解説します。
「いてこます」の意味
「いてこます」とは、やっつけるという意味の言葉です。暴力的な言葉であるため、日常生活の中ではあまり使いません。
「いてこます」の語源
「いてこます」は「行ってかます」という言葉が変化したものだといわれています。
「かます」とは動作や行動で相手がひるむように衝撃を与えること。「張り手をかます」「はったりをかます」というように使われます。
「行って一発かます」がなまって「行ってかます」「いてこます」と変化していったと推測されます。また「やってこます」と表現することもあるようです。
岸和田だんじりの引き回しが由来という説も
「いてこます」は、岸和田のだんじり祭が由来という説もあります。岸和田だんじりは、江戸時代から300年以上続く由緒ある祭です。江戸時代中期の岸和田藩主が豊作を祈願し、稲荷祭を行ったことがはじまりだと伝えられています。
ねじり鉢巻きにはっぴ姿の若者たちが、「ソーリャ、ソーリャ」と力強いかけ声をだしながらだんじりを引き回します。
なお、だんじりとは祭礼に繰り出す山車(だし)のことで、西日本地域特有の呼称です。だんじりの大きさは約4m、重さは約4tもあり、大きなだんじりを引き回す様子は圧巻です。
この引き回しの動作「走って行って、突っ込んで回す」が「行って、込み回す」「いてこます」に変化したといわれています。
「いてこます」はどこの方言?
「いてこます」はあまり普段見聞きしない言葉ですが、どこの方言なのでしょうか。「いてこます」が使用される地域を紹介します。
「いてこます」は大阪の方言
「いてこます」は関西地方の方言で、主に大阪で使われることが多く、大阪弁として認知されています。
由来といわれているだんじり祭は、大阪の岸和田市で開催されているため、だんじりと共にこの言葉が広まったと推測されます。
「いてこます」を使い方
「いてこます」は、やっつけるという意味の暴力的な言葉であるため、日常的には使いません。相手を脅迫する意味合いがあるので、映画やドラマの喧嘩シーンなど不穏な場面で用いられます。
また子ども同士でふざけて言い合ったり、SNSなどで冗談として使ったりすることもあります。
ただし「いてこます」はマイナスの言葉であるため、冗談だと通じる仲の良い相手ではない限り、口にだすのは控えた方がいいでしょう。
また、喧嘩などの険悪な場面だけでなく、スポーツ観戦で野次を飛ばすときに使う人もいます。その場合は「やっつけろ」「行け」「やれ」といったニュアンスで用いられます。
「いてこます」の例文
「いてこます」の意味をよりくわしく理解するために、例文をご紹介します。
しょうもないことばかりいっとったらいてこますぞ
「くだらないことばかりいっていたらぶん殴るぞ」という意味になります。
お酒の席で楽しくなったときや親しい間柄であれば、冗談で用いることもできますが、仲良くない相手に使うとマイナスな印象を与えてしまう恐れがあるため、使う際はシーンや相手を見極めることが重要です。
いてこましたろか・どついたろか
「いてこましたろか」は「やっつけてやろうか」「ぶん殴ってやろうか」といった意味があります。「どついたろか」も同じニュアンスで使用されます。
いちびっとったらいてこますぞ
「いちびる」は「調子に乗る」「調子に乗ってふざける」といった意味の関西弁です。「いちびってんちゃうぞ」「お前、いちびってんなや」のように使われます。
つまり、「いちびっとったらいてこますぞ」は「調子に乗ってふざけているとぶん殴るぞ」という意味合いがあります。
「いてこます」の類語・言い換え表現
「いてこます」の言い換え表現は「どつく」や「しばく」、「いてまう」などがあります。これらはいずれも関西弁で「いてこます」と同様「やっつける」という意観です。より強い意味をもたせるために「どつきまわす」「しばきまわす」といった表現もあります。
映画やドラマなどで上記のようなセリフが登場したら、「蹴ったり殴ったりする」の意味合いであると理解するといいでしょう。どの言い回しも攻撃的なニュアンスがあるので、使わない方が無難です。
「いてこます」は「やっつける」という意味の関西弁
「いてこます」とは「やっつける」という意味の関西弁で、主に大阪で使われます。
親しい友人に冗談で使われることが多い一方で、険悪な場面やスポーツ観戦で野次を飛ばすときにも用いられる言葉なので、使い方には注意が必要です。
「いてこます」と同様の意味をもつ「どつく」や「しばく」などもあわせて覚えておけば、映画やドラマのセリフでこれらの言葉が使われた際に、その場面をより深く理解できるでしょう。