アサヒ飲料は2月7日、メディア関係者向けに2023年の事業方針説明会を開催した。

2023年の同社の事業方針は「100年ブランドや高付加価値商品の強化とお客さまのニーズを先取りした新規ブランドの育成」。緑茶の新ブランド「颯(そう)」の4月立ち上げをはじめ、「無糖」「炭酸」「健康」の3つの切り口を軸にさらなる成長を見据える。

  • 左:アサヒ飲料 代表取締役社長 米女太一氏、右:同 執行役員 マーケティング本部長 坪野達也氏

3つの無糖茶ブランドを柱にシェア拡大へ

2023年のアサヒ飲料のマーケティング方針は、「共感 “At your side”」。このフレーズには、「常に生活者に寄り添ったマーケティングで共感を得る」という意味が込められており、「期待を超えるおいしさと価値で直観的に“欲しい”と思う価値の高い商品・サービスを提供する」ことを目指している。

  • アサヒ飲料 代表取締役社長 米女太一氏

それを実現するための成長戦略の3つの切り口として、「無糖」「炭酸」「健康」を掲げる。なかでも注目すべきが、近年市場が拡大しつつある「無糖茶」だ。この領域において同社は、今年発売30周年を迎える「十六茶」に加えて、2022年4月には国産茶葉を100%使用した「和紅茶」の販売を開始した。

そして、この「無糖」領域における3本目の柱として期待されているのが、2023年4月4日に発売予定の新緑茶ブランド「颯(そう)」だ。同社は、「おいしさと爽快感」が売りの緑茶「颯」、「おいしさと健康」が売りのブレンド茶「十六茶」、「おいしさとリラックス」が売りの「和紅茶」の3ブランドを軸に、無糖茶市場におけるシェア拡大を狙う。

これまでにない香りと爽快感を実現した緑茶「颯」

「無糖」領域の新たなチャレンジとして誕生する「颯(そう)」は、2年の開発期間をかけて、12,000名の声から生まれた緑茶ブランド。

日本最高位茶師十段の酢田恭行氏全面監修のもと、国内の煎茶のわずか0.02%という希少な微発酵茶葉「萎凋(いちょう)緑茶」を一部使用し、これまでにない華やかな香り立ちを実現している。

茶葉を手で摘んでいた時代は微発酵茶葉がスタンダードだったそうだが、工業化によって緑茶の味が変化してしまった。つまり、「颯」は昔の日本人が飲んでいた、古くて新しい味わいの緑茶なのだ。

筆者も試飲させてもらったが、口の中いっぱいに広がる香りと、これまでのペットボトル緑茶では経験したことのない「透明感」に驚いた。これなら途中で飲み飽きることなく、最後まで香りと爽快感を楽しみながらゴクゴク飲めそうだ。

無糖茶に「香りのよさ」を求める人が増加

「颯」立ち上げの背景には、生活者のライフスタイルやニーズの変化があるという。

コロナ禍でストレスフルな日々が続く中、サウナやストレッチ、ヨガ、アロマなどが人気を呼び、自分で自分を「整える」人が増加した。「リラックスタイムにお茶の香りでリラックスする」という人も増えており、アサヒ飲料の調査では、無糖茶に「香りのよさ」を求める人の割合が年々拡大していることがわかっている。

加えて、既存緑茶への不満として「もっとスッキリしたペットボトル緑茶がほしい」との声があったことから、同社は喉の渇きをスッキリと潤し、華やかな香りと爽快な味わいを特徴とする緑茶ブランドの開発に着手。試行錯誤の末「颯」が誕生した。

「颯」の発売に加えて、「無糖」領域では、「十六茶」の30周年記念商品の展開や「和紅茶」のパッケージ・中身リニューアルも予定されている。

「炭酸」で地域共創・ソバーキュリアス対応を推進

  • アサヒ飲料 執行役員 マーケティング本部長 坪野達也氏

成長戦略の2つ目の切り口を担う「炭酸」領域では、「三ツ矢サイダー」が品質はそのままに、さらに環境に配慮したブランドへと進化する。原材料を見直し、砂糖を果糖ぶどう糖液糖に変更することで、約100トンのCO2削減につながるという。

産地指定した国産果実を使用した「三ツ矢日本くだものがたり」シリーズを通じて地域共創に取り組むほか、「特濃」シリーズ、「クラフト」シリーズといった高果汁・高付加価値型の商品も強化していく。

また、「ウィルキンソン タンサン」「ウィルキンソン タンサンレモン」は4年ぶりにパッケージをリニューアルし、ブランドの鮮度向上を図る。さらに、若年層のソバーキュリアス志向(お酒を飲める人があえてお酒を飲まない、または少量しか飲まないライフスタイルを選択すること)に対応した「#sober」シリーズの展開を通して、より強固なブランド構築を推進する。

機能性表示食品で「健康」訴求を強化

成長戦略の3つ目の切り口を担う「健康」領域においては、生活者の日常に寄り添い、健やかな毎日のために「生活リズムを整えること」の大切さを提案していく。

睡眠の質(眠りの深さ)を高め、腸内環境の改善に役立つ機能が報告されたガセリ菌CP2305株が配合された「届く強さの乳酸菌W(ダブル)」は昨年、一部チャネルでの200ml容器の展開により飲用シーンが拡大したことから、200ml容器の強化や大規模サンプリングでさらなる認知拡大と商品理解促進を図る。

また、「L-92乳酸菌」を配合した「守る働く乳酸菌」は、グループ3社の免疫領域の機能性表示食品の届出が受理されたことから、「健康な人の免疫機能の維持に役立つ」機能性表示食品として、2023年6月にリニューアルを予定している。

高付加価値商品の数々で、業界のリーディングカンパニーを目指すアサヒ飲料。とりわけ、大型新商品として発売する「颯」が生活者にどう受け止められるのか、反響が楽しみだ。