米Googleは2月6日(現地時間)、実験的なプロジェクトとして対話型AIサービス「Bard」に取り組んでいることを発表すると共に、信頼できるテスターを対象としたテストを開始した。順調に進めば、数週間中に規模を拡大する予定。同社は2月8日にパリで「Google presents」という検索に関するイベントを予定しており、同イベントでBardの詳細について語ると見られている。

  • ピアノとギターはどちらが習うのが簡単?

Googleは2021年にGoogle I/Oで、大規模言語モデル「LaMDA」(Language Model for Dialogue Applications)による次世代のAIの対話能力を披露し、昨年11月に「AI Test Kitchen」のシーズン2で「LaMDA 2」のデモを提供していた。BardはLaMDAを搭載しており、Sundar Pichai氏(Google CEO)は「私達の大規模な言語モデルのパワー、インテリジェンス、創造性を世界中の幅広い知識に融合させることを目指している」と説明している。発表の中で紹介している例では、「ジェームス・ウェッブ望遠鏡の新発見について、9歳の子供達に教えてあげられることはありますか?」という質問を受けたBardがグリーンピース銀河や130億年以上前の銀河の観測といった最近の発見をリストして答えている。

「AIによって情報への理解が深まり、より効率的に情報を有用な知識に変えられるようになることで、人々が探しているものの核心に迫り、目的の達成が容易になります」とPichai氏。

  • 「ピアノとギターはどちらが習うのが簡単で、それぞれどのくらいの練習が必要?」とBardに質問

Googleは2017年にAIファーストを宣言し、AI分野への積極投資を進めていたが、世論誘導やフェイクといったソーシャルメディアの負の影響が社会問題化する中で、人々がAIに対して抱く懸念を考慮して研究成果の製品化に慎重な姿勢を徹底していた。

しかし、昨年12月に米OpenAIが対話型AIサービス「ChatGPT」を公開し、人々の疑問に分かりやすく答える対話力が話題を呼び、今日のインターネット検索に代わる新たな情報収集の方法になる可能性が指摘され始めた。

通常ならGoogle I/Oで披露するようなBardをこの時期に公表したのは、OpenAIの台頭に対するGoogleの危機感の表れと見られている。発表の中でPichai氏は「(Bardは)Web上の情報を活用して、フレッシュで質の高い回答を提供します」としている。クローラーで巡回するGoogle検索に比べて、情報の更新に時間がかかるChatGPTは最近の出来事に関する質問が苦手と言われており、ChatGPTの弱点を意識した指摘のようにも読み取れる。AIと倫理については「大胆かつ責任ある方法で世界に送り出します」と、責任あるAI開発を改めて約束している。