「泥のように眠る」とは、病気や疲れなどで普段の眠りに比べてぐっすり眠る時に使われることがあることわざとして知られています。
しかし、「泥のように眠る」という言い回しは日常会話においてあまり頻繁に使われる表現ではありません。使い方に戸惑う人も多いでしょう。
この記事では、「泥のように眠る」の意味や語源、使い方や関連語、英語表現について紹介します。
語彙力の向上を目指していて「泥のように眠る」について知りたいなら、ぜひご一読ください。
「泥のように眠る」とは
「泥のように眠る」の意味
「泥のように眠る」とは、「正体もなく眠り込んでいる」という意味があることわざです。「正体」には「意識が正常に働いている時の様子」という意味があることから、「泥のように眠る」はぐっすりと深く眠り込んでいる時に使われます。
「泥のように眠る」の語源
「泥のように眠る」ということわざの語源は、中国の古典であったと考えられています。
中国の古書である「異物志(いぶつし)」には、「泥(でい)」という虫が登場しました。「泥」という虫が海から外に出ると動かなくなる様子から、「泥のように眠る」と使われるようになったとのことです。
これが「泥のように眠る」の「泥(どろ)」であり、土と水の混合物を指すのではない点を押さえておきましょう。
同じ語源の言葉は「泥酔」
「泥のように眠る」の「泥」は、中国の古典において「正体をなくす」という意味で用いられていました。中でも特によく用いられていたのが「泥酔」で、酔ったさまを泥に例えています。
つまり「泥のように眠る」と「泥酔」の「泥」は、語源が同じということです。
「泥のように眠る」の使い方・例文
「泥のように眠る」という表現は、日常会話でフランクに使う表現とは言い難い部分があり、使い方がよくわからない人も多いでしょう。
ここでは、「泥のように眠る」の使い方や、具体的な例文を紹介します。
「泥のように眠る」は病気や疲れなどで使われる
「泥のように眠る」ぐっすり眠る時に使われる表現ですが、普段の就寝時において使われる表現ではありません。
例えば旅行や運動などで体が疲れ果てている状態や、病気などの影響で、意識が正常に保てないほどぐっすりと眠る際に「泥のように眠る」という表現が使われます。
「泥のように眠る」の例文
・初めてフルマラソンを完走したその日は、充実感と体の疲れから泥のように眠っていた
・気温が急に下がったせいか何となく体調が優れず、布団に入るやいなや泥のように眠った
・急に疲労感が襲ってきたのか、泥のように眠ってしまった
このように「泥のように眠る」は、普段の睡眠よりも深くぐっすりと眠る際に使われます。
「泥のように眠る」の類語(言い換え表現)・関連語
「泥のように眠る」には、似た意味や似た状況で使われる表現がいくつかありますので、「泥のように眠る」とともに押さえておきましょう。
ここでは、「泥のように眠る」の類語表現や関連語を紹介していきます。
昏々と眠る(こんこんとねむる)
・子供が運動会から帰ってきた後すぐにベッドに入り、昏々と眠っていた
・子供が運動会から帰ってきた後すぐにベッドに入り、泥のように眠っていた
「昏々」とは、「意識がない様子」「寝入っている様子」を表す表現です。つまり、「昏々と眠る」とは、「泥のように眠る」と同様、深く眠り込んでいる様子を表します。
爆睡する・熟睡する(ばくすいする・じゅくすいする)
・風邪をひいていたせいか、いつになく熟睡していた
・風邪をひいていたせいか、いつになく爆睡していた
・風邪をひいていたせいか、いつになく泥のように眠っていた
「爆睡」とは、「少々の刺激では目が覚めない程度に深く眠り込むこと」という意味がある言葉です。「熟睡」には、「ぐっすりとよく眠ること」という意味があります。
つまり「熟睡」に比べて「爆睡」や「泥のように眠る」の方が、より深い眠りについている時に使われる表現です。
白河夜船(しらかわよふね)
・ネットでワールドカップを観戦しようと午前4時に起きたが、家族は皆白河夜船だった
・ネットでワールドカップを観戦しようと午前4時に起きたが、家族は皆泥のように眠っていた
「白河夜船」とは、「知ったかぶり」という意味で使われますが、「何も気がつかないほどよく眠り込んでいる」という意味もある四字熟語です。
京都を見てきたふりをした者が、京の白河(地名)のことを尋ねられ、川の名だと勘違いして、夜に船で通過したから知らないと答えたという話が由来になっています。
2つの意味がある表現ですが、「泥のように眠る」とも似た状況で使われます。
夢路を辿る(ゆめじをたどる)
・彼女は帰宅するやいなや、すぐに夢路を辿り始めた
・彼女は帰宅するやいなや、すぐに泥のように眠り始めた
「夢路を辿る」とは、「夢をみる」「心地よく眠る」という意味がある言葉です。前述した「熟睡」と似た意味があります。
「泥のように眠る」の方が、「夢路を辿る」より深い眠りにつく様子を表していますので、状況に合わせて使い分けてください。
綿のように疲れる(わたのようにつかれる)
・息子は合宿に参加したせいか綿のように疲れて、すぐに泥のように眠ってしまった
「綿のように疲れる」とは、非常に疲れることを例えた表現です。疲れた時に体に力が入らない位疲れている様子を綿に例えています。
「泥のように眠る」と意味は異なりますが、同じく「のように」という言葉を用いた表現として覚えておきましょう。
泥のように寝る(どろのようにねる)
「寝る」には、「心身の動きが一時的に低下して、目を閉じて無意識の状態になる」という意味があります。一方「眠る」には、「 眠りにつく」「寝床に入る」などの意味があり、「寝る」と同義語です。
「泥のように眠る」の方が元々の語源に即した一般的な表現ではありますが、同義語の「寝る」を用いた「泥のように寝る」と表現されることもあります。
「泥のように眠る」の英語表現
「泥のように眠る」には英語にも似た意味がある表現がいくつかありますので、一緒に覚えておきましょう。ここでは、「泥のように眠る」の代表的な英語表現を紹介します。
sleep like a log
・He slept like a log last night. (昨晩彼は泥のように眠った)
「log」は、「丸太」という意味がある名詞です。「sleep like a log」を直訳すると「丸太のように眠る」ですが、英語では「ぐっすり眠る」「泥のように眠る」の意味で使われます。
sleep like a baby
・I slept like a baby last night. (昨晩は泥のように眠ったよ)
「sleep like a baby」を直訳すると、「赤ちゃんのように寝る」です。物音があっても起きることなく熟睡している様子を指しますので、「泥のように眠る」の英語表現として使われます。
「泥のように眠る」は中国が由来のことわざ
「泥のように眠る」とは「ぐっすりと深く眠り込んでいる」という意味があることわざです。語源は中国の古書に登場する、「泥(でい)」という虫が関係しています。同じ古書が語源である言葉は、「泥酔」です。
例えば「プレゼンが終わった週末、泥のように眠っていた」など、ビジネスでも使えます。この記事で紹介した使い方を参考に、使い方を理解しておきましょう。
また、「泥のように眠る」は、「昏々と眠る」など関連語も多いです。この記事で紹介した意味や使用例を参考に、「泥のように眠る」とともに覚えておきましょう。