「畏敬の念」という言葉の意味をご存じですか? 見聞きしたことがあっても、正しい意味や使い方についてはあまり知らないという方も多いのではないでしょうか。
本記事では、「畏敬の念」の意味や使い方・例文をわかりやすく解説します。また、混同されやすい「畏怖の念」との違いや類語・言い換え表現、対義語などについても紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
「畏敬の念」の意味とは
「畏敬の念」は、神や仏などの崇高なものや偉大な人物に対して畏れ敬う気持ちを表します。
「畏敬」のみでも、崇高なものや偉大な人物を畏れ敬うという意味を持ちますが、「畏敬の念」というかたちで使われることが多いです。
読み方は「いけいのねん」
「畏敬の念」は「いけいのねん」と読みます。畏という漢字はあまり見慣れないので、初見で読むのは難しいかもしれません。
しかし、そこまで難しい読み方というわけではないので、一度見聞きすれば覚えられるでしょう。ぜひこの機会に覚えてみてください。
「畏敬の念」の使い方・例文
「畏敬の念」はどのような場面で使う言葉なのでしょうか。ここからは、「畏敬の念」の使い方や例文について紹介します。
偉大な存在に対して使う
「畏敬の念」は主に美しい自然や風景、アートなどを見て強く心を動かされたときや、偉人などに対して尊敬する想いを表すときに使う表現です。ビジネスシーンで使う場合は社長や業界トップの企業など、距離のある存在に対して使います。
心から尊敬する人物に対して使いますが、身近な人に対しては使いません。会社の先輩に「畏敬の念を抱いています」と伝えると、わざとらしく捉えられることもあるので、注意が必要です。身近な人に敬う想いを伝えるときは、尊敬など別の言い回しを使った方がいいでしょう。
「畏敬の念」の例文
「畏敬の念」は頻繁に用いられる表現ではないため、使ったことがない方も多いかもしれません。下記の例文を参考に、文章や会話に取り入れてみてください。
・彼のずば抜けた才能を目の当たりにして、畏敬の念を抱いた。
・社長に畏敬の念を感じた。
・彼女は、畏敬の念をもって海を眺めた。
・身を挺して助けてくれた彼に、畏敬の念を持って感謝を伝えた。
・彼の涙ぐましい努力には、畏敬の念しかない。
・自然や生命への神秘に畏敬の念を覚えた。
「畏敬の念」と「畏怖の念」の違い
「畏敬の念」とよく似た言い回しである「畏怖の念(いふのねん)」。「畏怖の念」は畏れおののくことを表します。「畏敬の念」と大きく異なる点は、恐怖の感情が含まれていることです。
つまり、対象が同じ自然であっても「畏敬」は壮大さや素晴らしさに圧倒されるさまを表すのに対し、「畏怖」は大自然の猛威を恐れる感情を表したいときなどに使います。一文字違うだけで印象が大きく異なるため、混同しないように注意しましょう。
「畏敬の念」の類語・言い換え表現
「畏敬の念」と似たような意味を持つ類語や言い換え表現を知っておくと、ビジネスシーンで役立ちます。ここでは、「畏敬の念」の類語や言い換え表現を紹介していきます。
崇拝
「崇拝(すうはい)」とは、あこがれの気持ちで、ある人を心から敬うことを表す言葉です。また、神や神聖なものなど宗教的対象に自己の救済を求める心をもって尊敬するという意味もあります。ニュアンスが少し異なる点に注意しましょう。
<例文>
・彼はヒンドゥー教の神を崇拝している。
・教会は神様を崇拝するための大切な場所です。
敬愛の念
「敬愛の念(けいあいのねん)」には、敬って大切にすること、尊敬し親しみの気持ちを持つことといった意味があります。
「畏敬の念」のように畏れるという感情ではなく、親しみを持ったニュアンスとなるため、身近な人やものに使えます。
<例文>
・彼の素晴らしい行動に、敬愛の念を覚えている。
・敬愛の念を抱いている作者の著書はすべて愛読している。
仰ぎ見る
「仰ぎ見る(あおぎみる)」は、尊敬するという意味があります。仰ぐは、低い場所から高いところを見上げるといった表現で用いられる言葉です。そこから転じて身分が高い人や目上の人を敬うという意味で使われます。
<例文>
・彼が師として仰ぎ見る田中さんは、卓越した技術を持つ。
・人々は彼をオマハの賢人と呼び仰ぎ見る。
「畏敬の念」の対義語
ここからは、「畏敬の念」とは反対の意味を持つ対義語について紹介していきます。
軽蔑
「軽蔑(けいべつ)」は、つまらないなどと感じて馬鹿にすること、相手を軽く見て侮ること、という意味の言葉です。敬う感情が一切なく、相手を見下しているようなニュアンスがあります。
<例文>
・事件を起こした彼は、世間から軽蔑の眼差しを向けられている。
・人を差別するような人間を、私は軽蔑します。
見縊る
「見縊る(みくびる)」は、軽視する、あなどる、見さげるといった意味の言葉です。悪い印象があり、相手を敬う言葉とは反対のニュアンスで用いられます。
ちなみに、「見縊る」と似た言葉に「見限る」がありますが、こちらは「見込みがないとあきらめる」ことを指す言葉なので混同しないように注意しましょう。
<例文>
・対戦相手の実力を見縊っていて、完敗してしまった。
・友人の才能を見縊っていたが、彼女は世界一の歌手になった。
「畏敬の念」の英語表現
ここからは、「畏敬の念」の英語表現である「reverence」「overawe」「a feeling of awe」について紹介します。ビジネスや日常生活で英語を使う人は、あわせて確認してみてください。
reverence
reverenceは、畏敬の念や尊敬、崇敬、崇拝を表す英単語です。
<例文>
They spoke with reverence.
彼らは敬意を持って話しました。
The followers knelt in reverence.
信者たちは、尊敬と敬意をもってひざまずいた。
overawe
overaweには、威圧する、おどしつけるという意味があります。
<例文>
I was overawed by his self‐confidence.
彼の自信の強さには恐れ入った。
a feeling of awe
aweには、おそれや畏怖、畏敬という意味があり、「a feel of」をつけることで「畏敬の念」と訳すことができます。
<例文>
I was awed by his military exploits.
彼のはなばなしい軍功に「畏敬の念」を覚えた
The snowy landscape evoked a feeling of awe.
その雪景色は「畏敬の念」を呼び起こした。
「畏敬の念」の正しい意味や使い方を覚えよう
「畏敬の念」は、畏れ敬う気持ちを表す言葉で、「崇高なものや偉大な人物に対して使います。言葉の意味をしっかりと理解することで、使う場面や対象が的確に判断でき、正しく使えるようになるでしょう。
「畏敬の念」は普段の会話でよく使うものではありませんが、知っておくと役立つ表現です。今回紹介した例文や類語・言い換え表現などを参考に、ぜひ使ってみてはいかがでしょうか。