2022年10月19日にNTT西日本を含む11社が共同出資を行い、新会社「Actibaseふくい」(アクティベースふくい)を設立。福井県坂井市の三国湊エリアで、地域活性化に資する観光街づくりを推進し、観光事業を運営する。
2月3日に新会社設立記者発表会が開催され、NTT西日本社長の森林正彰氏、三国湊エリアを拠点とする新会社「Actibaseふくい」社長の樋口佳久氏らが登壇。新会社の設立背景などを紹介した。
■観光を起点に「地域循環型モデル」の創出を目指す
発表会の冒頭、NTT西日本の森林社長は新会社「Actibaseふくい」の設立背景として、地域を取り巻く環境を説明した。
「生産年齢人口は都市部でも2015年から2045年の30年で20%減、地方部に至っては35%減少するとの推定があります。一方、社会インフラを維持するコストは、40年で1.8倍に増えるとも言われ、人口一人当たりの税収は東京集中が続いており、地方法人税は都市部と地方部で2〜5倍の開きがある実態もあります」
地域経済の縮小が予見されるなか、NTT西日本では西日本30府県域で地域事情に即した地域活性化活動を展開。ICTを活用した課題解決と「地域循環型モデル」の創出に取り組んでいる。
「さまざまな取り組みのなかで、今回の新会社設立は観光分野における取り組みです。地方経済における観光産業のインパクトは非常に大きく、訪日外国人の旅行消費は自動車の輸出額に次ぐ5兆円近い額に相当します。加えて、観光地としての日本の魅力度はいま世界第1位となり、今後の需要を喚起するのにとても恵まれた環境にあります」
続いて、森林氏は過去10年間での観光トレンドの変化を紹介。二次交通の充実や局所的なオーバーツーリズムなどの課題も指摘されてきたなか、NTT西日本はICTを活用したサービスによる地域観光の実現を目指すとした。
「旅の前には個人の要望にあった情報、旅の最中にはコト・トキを重視した体験をそれぞれ提供し、旅の後にリピートしてもらうための施策を打ち、データを収集。幅広くフィードバックを行い、自治体や観光事業者、地域住民の方々と一緒に街づくり事業をすることで、より良い観光資源をつくり上げていく循環を生み出したいと思います」
「Actibaseふくい」は三国湊のNTT局舎を中心に500mの範囲内に客室とレストランを配置し、三国湊のまち全体をひとつの宿に見立てたオーベルジュの開発・運営する。
三国湊は有名な東尋坊や永平寺を周遊しやすく、北陸三大祭りの「三国祭」や「食の國ふくい」として全国に誇る豊かな食文化、自然が生み出した数々の絶景など、多くの魅力的な観光コンテンツがあること。
また、地元企業・住民の観光まちづくりへの想い、2024年春に予定される「北陸新幹線(金沢~敦賀間)」の開業、坂井市の「三国グランドビジョン」に基づく誘客向上施策なども、新会社設立の背景となったようだ。
「三国湊エリアは周辺にも非常にたくさんの魅力的なスポットがあり、非常に魅力的な観光地。新会社を通じ、長期に渡って持続的で自立可能な地域の循環モデルをつくり上げながら、地域社会に貢献していきたいと考えています」
■町屋を改修、まち全体をひとつの宿に
地域独自の課題探索・解決に向けたサステナブルな地域観光の実現への新たな挑戦となる「Actibaseふくい」の設立。同社の主な事業は「宿泊運営事業(町家ホテル)」「料飲事業(町家レストラン)」「アクティビティ事業」「町並み等整備事業」の4つに分けられる。
まず「宿泊運営事業(町家ホテル)」では、三国湊の伝統的な建築「かぐら建て町家」や象徴的な素材「笏谷石」を活用した、分散・滞在型宿泊施設(10棟18室)を創設。地域の価値ある空き町屋を宿泊施設として改築し、ラグジュアリーな空間を用意する。「Actibaseふくい」の樋口社長が説明した。
「宿泊運営事業は住友林業様の技術を駆使しながら空き町屋を改修し、町屋のオーナーの皆様に調度品や家具をお借りしながら、その歴史と雰囲気を存分に味わっていただける18室の客室をつくっていきます。町屋ホテルのフロント機能はNTT局舎を活用し、外観整備を行いながら、三国湊の観光客の皆様が最初に訪れる場所として改修を施します」
エリア中央には皇室に献上される越前がにや甘エビといった新鮮な海の幸など、地元食材を活かしたフレンチレストランを運営。フレンチ料理のスターシェフで、国内で多数のレストランをプロデュースしてきた吉野健氏を迎え、レストランとなる町屋の改修は熊谷組が担う。
北前船の寄港地として発展した歴史や日本文化、自然環境を活用して、三国湊エリアならではのアクティビティを提供。さらに風情ある街並み整備にも取り組み、ライトアップ/街明かりの整備、緑化など景観の統一なども行う。
「住民の方々の取り組みに寄り添いながら、北陸電力グループ様と連携して、安心・安全かつ統一された景観の整備を進めます。お住まいの方々の現在の暮らしと旅行者の皆様が求められる異日常の心地良い共存、その感動的なつながりの創出、観光を起点とした地域に喜ばれる地域課題解決。当社が目指すのはこの2つの実現です。そうしたことが三国湊エリアのブランド化、地域の存続・発展への貢献につながると考え、地域の皆様と1チームで取り組みを進めてまいります」
レストラン・ホテル事業における町屋の改修工事は、今月から第一期の改修を開始しており、1泊あたり5万円前後で検討中とのこと。客数は年間1万人の計画で、来年2024年1月頃の開業予定だという。
三国湊のある福井県坂井市の池田禎孝市長は、「坂井市は昨年度『三国グランドビジョン』を立ち上げ、このプロジェクトを中核に東尋坊エリア、三国海浜自然公園エリアなどの整備を進めてまいります。こうしたことはハードが整備されても、ソフトが共なわなければ成功しません。何より嬉しかったことは大勢の地元の皆さんの熱い応援と思いがあること。一歩ずつ皆様とともに事業を成功させたいと思います」と、新会社への期待などを語っていた。