KDDIは2月2日、2023年3月期 第3四半期の決算説明会を開催しました。それによれば、第1~3四半期の連結営業利益は、前年同期比で312億円の減益となりました。登壇したKDDI代表取締役社長の高橋誠氏は、期初には予想できなかったマイナス要因として「燃料高騰」と「通信障害」の影響を挙げています。そして質疑応答では、5Gの浸透率や楽天モバイルについての質問のほか、ソフトバンクとの間で進めている「デュアルSIMサービス」についての質問が相次ぎました。

  • KDDI代表取締役社長の高橋誠氏

増収減益の決算

連結売上高は4兆1,829億円(前期比4.2%増)、連結営業利益は8,434億円(同3.6%減)と増収減益の決算でした。営業利益については3G停波関連+コスト効率化などにより613億円増、DX・金融事業で297億円増となったものの、マルチブランド通信ARPU収入が710億円減、グループMVNO収入+ローミング収入が200億円減、さらに燃料高騰+通信障害(返金、対応費など)で238億円減となっています。

  • 連結業績ハイライト

  • 1-3Q連結営業利益 増減要因

この日のプレゼンで高橋社長は、通信障害や自然災害の発生時に1社のモバイル通信が利用できなくなった際に、他社のネットワークを予備回線として利用できるようにする「デュアルSIMサービス」の取り組みも発表しました。それによれば、KDDIとソフトバンクの回線を利用中の個人・法人は2023年3月下旬以降より、緊急時にお互いのネットワーク網で通信できるようになる見込みです。

このときの契約形態については回線卸になるとのこと。たとえば、KDDIが通信障害を起こした場合、ソフトバンクから回線を提供してもらい、KDDIがワンストップでサービスを提供するイメージです。具体的なサービス内容、提供料金などは別途発表するとしています。なお、KDDIはNTTドコモとも協議中であると明かしました。

  • 安心安全で豊かな社会の実現に向けて「デュアルSIMサービス」を実現する

デュアルSIMサービスについて

メディアの質問に、高橋社長が回答しました。

デュアルSIMサービスについて聞かれた高橋社長は、KDDIが2022年7月に起こした通信障害を振り返り「あのとき、昔と違って現在は代替手段がないんだ、ということを改めて痛感しました。昔であれば街には公衆電話がたくさんあり、また家庭には固定電話がありました。単身の方も固定電話をお持ちだった。でも、現在はスマートフォンだけで生活している人も非常に多い。そこで代替手段を作らなきゃいけないんだ、と改めて感じた次第です」。

ソフトバンクの宮川潤一社長は「ぜひともやりましょう」と即応してくれた、と高橋社長。サービス料金については「できる限りたくさんの人にお使いいただきたいので、数百円程度の月額料金をいただくことで実現したい。ただ、めったに使うことがないので、(緊急時の)従量料金は少し高めの設定になるかもしれません」とします。

同サービスは、eSIM対応スマートフォンのほか、SIMカードを2枚挿すことのできるスマートフォンでも利用できるようになる見込み。「今後は、各通信事業者で協調できるところは協調していきたい。障害対応にしても、基地局の整備にしても、それによってコストをセーブできるのであれば。そのうえで競争領域においては、よりよいサービスをお客さんに提供していく。そんなことをやるべきだと思っています」。

楽天モバイルとも協議中か、と問われると「楽天さんは、我々がローミングでネットワークをお貸ししている側。我々のネットワークがおかしくなったときに、楽天さんのローミングエリアもダメになってしまう。そういった観点から今回はお声がけしていませんが、これから楽天さんのエリアが拡大していけば、同じようなことが実現できるのかなと思います」と回答。この取り組みでMVNOとは協議していない、と説明します。

楽天モバイルについて

先のプレゼンでは「ローミング収入の減少幅が期初予想よりも少なかった」と説明していました。この意味について問われると「楽天さんとの契約では、(楽天モバイルが自前で用意するネットワークの)エリアカバー率が70%を上回った地域から順次、ローミングを終了するか否かの判断をすることになっています。2022年4月の段階で、すべての都道府県で70%を上回る状況でした。でも、実際に提供を終了したエリアは東京のみです。当初は2022年3月末に提供終了の予定だった千葉、神奈川などは、2022年10月以降も楽天さんの要望によりローミング提供を延長していますし、ほかの都道府県のエリアにおいても屋内外の多数のローミングを継続している状況にあります。楽天さんにもいろいろと事情があるんだと思います。カバー率70%以上のエリアを一斉に切ってしまうと、かなり通信状況が悪くなってしまうと思いますので、ご要望に基づいて今のところ当初の想定よりも遅いスピードで推移している状況です」。

続く第4四半期、そして来年もローミングを提供していくのか、と聞かれると「現在、楽天さんと協議中です」と説明。こうした理由から、期初に予想していた500億円減といった規模にはならない、との見方を示しました。

5Gの浸透率を上げていくために

5Gエリアの拡大状況については「2022年度内(2023年3月末まで)には人口カバー率90%を達成したいと思っています。これまで既存周波数を使って5Gエリア化を進めてきましたが、Sub 6についてもエリア化を広げていきます。どちらかというと、基地局を広く打って人口カバー率を追いかけるより、商業施設、あるいは鉄道や新幹線など、お客様の生活導線にあるエリアにこだわり、これまでは基地局を打ってきました」と説明。

また今後、5Gの浸透率を上げていくためには5Gモデルを手に取りやすい価格にしていくことが大事、と話し「これについては(関係省庁と)議論もしたい。我々としては当然、ルールを守りながら浸透率の加速を目指していきます」としました。