「聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥」という言葉があるように、分からないことは放っておかずに聞くことが大切とはいうものの、調べれば分かるようなことや、あまり重要でない内容を何度も聞かれると、聞かれる側も負担に思うことがあります。
今回は、職場の「なんでも聞いてくる人」にどのように対応すればよいか、その対処法や、彼らに共通する特徴、心理などを解説します。
職場にいる「なんでも聞いてくる人」の特徴・心理とは
あなたの職場の「なんでも聞いてくる人」は、なぜ人になんでも聞いてくるのでしょう。そこにはさまざまな理由があるはずです。まずはその特徴や心理を、タイプごとに整理してみます。
自ら調べず、考えようとしない
行っている作業や、扱うテーマについて、基本事項をなんでも聞いてくる人がいます。特に困るのが、マニュアルを読んだりインターネットで調べたりすれば済む内容の質問を投げかけてくる人です。
なんでも聞いてくる人は「課題に対してスピード感をもって物事を進めたい」という考えや、せっかちな一面がある一方、自力でできないことが多くあり、ジレンマを抱えている場合が多いようです。
こちらが質問に答えれば、付け焼き刃で仕事を進めることはできますが、せっかちで本質を理解していないため、多くは再現性がない傾向にあります。こういった人には、焦らずに一歩ずつ順序立てるよう声掛けを行いながら、理解のための時間を取らせることがポイントです。
調べ方がわからない
なんでも聞いてくる人は、そもそも自分が何がわからないかを理解していない、または調べるにしても、どこから手を付ければいいか分からなくて困っている場合があります。中には前提となる基礎の部分から理解していないケースもあります。
このような場合は、物のとらえ方次第で身に付くこともありますので、どのような観点でとらえるといいかを伝えることが大切です。
同じ事を何度も聞いてくる
なんでも聞いてくる人のうち同じことを何度も聞いてくる場合は、よっぽど内容を理解していないか、自分の役割ではないので理解が必要だとも思っておらず、興味がないのでしょう。または覚えることが苦手という人もいます。ひょっとしたら不安な出来事があり、頭に入らないのかもしれません。
どの理由によるものなのかで対応が変わるので、日頃のコミュニケーションによる見極めが大切です。
例えばその仕事に興味を持っていない人へは、今行っていることの目的や、行うことで得られるメリットを説明し、当事者意識を持たせると変わる部分も出てくるかもしれません。認識の仕方が違うために誤解が生じることもあるため、話し合いで誤解を取り除くことも重要です。
覚えること自体が苦手な人へは、「忘れにくくするために印象付けるもの」を視覚やイメージとして伝えることで変わる可能性があります。
自身への絶対的な自信の無さ
特に作業手順が多いとき、作業を覚えたてのときなどは、現象の原理や、見極めるポイントが分からないという焦りから、不安で冷静に判断ができない状態に陥っているとも考えられます。
この場合はマニュアル作成を担当させることで、担当者本人や他の人が理解できるように作業を整理でき、自信を持たせることが可能でしょう。
思考が停止してしまっている
なんでも聞いてくる人は、今、自分が何をしたらよいか分からないなどの理由でつまずいているのかもしれません。理解が進んでいないときや、ストレスなど何か別の懸念事項があるときは、つい思考が停止しがちです。
どのような理由でつまずいているかを一緒に洗い出してあげて、何か手伝える点があるか考えてみることをおすすめします。
人の時間を奪っていることに対して無自覚
人に何かを確認することは聞く相手の手を止め、時間を奪うことにつながります。なんでも聞いてくる人の中には、その辺を自覚しておらず、周囲への配慮に欠けているというケースもあるでしょう。
また、自分でできる範囲を増やしていかないことは、その人自身のスキル向上においても大きな壁です。
目に余る部分は指摘しつつ、一つの仕事に対して、仕事に必要な守備範囲を共有することも大切です。
なんでも聞いてくる人への対処法
「なんでも聞いてきてうっとうしい」と感じる相手がいたとして、プライベートならば一切関わらなければいい一方で、職場だと必ずしもそういうわけにはいきません。今回は、職場で「なんでも聞いてくる人」への対処法を紹介します。
メモを取らせる
決まった手順によるものや、ちょっとしたコツのようなことであれば、仕事を覚えてもらうためにもメモを取らせることで効果が期待できるでしょう。
説明の前に「今から必要なことを説明するので、メモを取っておいてください」「今後、作業は毎回メモを見ながら行ってください」などの指示を行うことがポイントです。メモを書くことは、聞いている側がポイントを整理できる機会でもあります。
もし一度メモを取らせたことを再度聞かれた場合は、「以前メモを取ってもらったはずなので、一緒に見返しましょう」などと声掛けするといいでしょう。メモをしたことを忘れていただけならばそれで思い出すはずですし、もしメモを取っていなかったのならその場でわかります。
メモはしていたけれど内容を理解していないということなら、面倒ですがつまずいている箇所を再度かみ砕いて説明すれば、その後は聞いてくる回数が減るはずです。もちろん、その補足説明もメモを取るように促しましょう。
調べ方や考え方を教える
勉強でも、教科書に書いてある知識を丸暗記するだけでは、実際にテストで応用問題を解けるようにはなりません。何を見て調べるのか、物事の本質は何なのか、どのような点に気を付けて考察するのかなど、調べ方や考え方について指南することも大切です。
すぐ答えを教えるのではなく、質問を投げかけ、考えさせる
仕事に対する考え方のセンスを身に付けてもらうためにも、自分なりの言葉で考える経験をさせることは、相手の自信や、将来的な人材育成にもつながります。
相手も「自分ならどのように考えるか」という観点から解決策に至る経験ができると、「さらに詳しく知りたい」「そもそも○○ってどのような意味だろう」などと根本的な部分で興味を持つようになる可能性があります。
自分もわからないフリをして突き放す
「なんでも聞いてくる人」は、あなたのことを「なんでも聞けば教えてもらえる、都合の良い人」と思っている可能性があります。そんな人に消耗されないよう、距離を置くことも一つの方法です。
自分が相手の上司であったり、指導担当であったりする場合は難しいですが、単なる同僚の場合などは、「私も分かりません」「担当者ではないので知りません」と言えば、相手はそれ以上絡んでこないでしょう。
聞かれたらなんでも教えてあげる優しさは、自分の時間が奪われることにつながりますし、長い目で見ると相手のためにもなりません。お互いのためにも、時には心を鬼にして、自力で這い上がってきてもらえるような雰囲気を作り、「なんとしても自力でやり抜けるようにならなくては」と仕向けることも大切でしょう。
こちらに責任を転嫁しないよう警戒する
なんでも聞いてきて、その結果言われたことしかやらない指示待ち人間は、明らかに自分の技量不足による失敗があっても「あなたの言われた通りにやった」、あるいは「あなたが細部までちゃんと指示しないから失敗した」」などと責任をなすりつけてくることがあります。
特に製品開発のような、答えが一つでなく自由度が高い現場や、臨機応変さが求められる現場では、その都度自力で考えながら進むことが大切です。そのため上記のような人物が同じチームにいる場合は、前もって前提条件の話し合いが必須です。状況によっては上司を交えて、本人がどのような理解をしている状況なのか共有することもポイントです。
上司に相談する
どのような手を打っても改善されない場合は、率先して上長に相談することをおすすめします。
改善されない理由は、ただプライドが高く聞く耳を持っていないということもあれば、不安やストレス、病気などでメンタル面に不調をきたしている場合なども考えられます。
指導方針や役割分担などに関わることは、自分の裁量では扱い切れないこともあるため、上長と認識を共有することが大切です。
なんでも聞いてくる人と上手に付き合おう
会社にはさまざまな経歴を持つ人物がおり、得意なこと、不得意なことがそれぞれ違います。「なんでも聞いてくる人」のタイプもさまざまで、ただ自分で調べるのが面倒な場合もあれば、仕事に対して経験が浅く、全てに対して不安だらけで日々を過ごしているのかもしれません。
「どのような理由で、何が不安であるか」をくみ取って、相手にとっての最適解を提供するためにも、日々のコミュニケーションを欠かさないようにしましょう。