スタイリッシュなデザインをまとうことで見事に変身をとげたトヨタ自動車の新型「プリウス」。目を引くのは19インチという径の大きなタイヤだが、正面から見てみると幅が異様に細い。なぜこんなタイヤを履いているのか、開発陣に聞いてみた。
燃費もデザインも満足させるタイヤとは?
新型プリウスのタイヤをよく見ると、幅は先代と同じ「195」でありながら直径が19インチに拡大している(Z/Gグレード)。先代プリウスのタイヤは15インチか17インチだったので、かなり大型化した印象だ。細幅大径タイヤを装着している理由とは? トヨタ TC製品企画 ZFの菅野伸介主幹に聞いた話を基に解説していきたい。
細幅大径タイヤは、2013年に世界デビューしたBMWの電気自動車(EV)「i3」が採用したブリヂストン独自の低燃費タイヤ技術「ologic」(オロジック)が元になっているという。幅が細くてもタイヤの径を大きくすれば、今まで横長だった接地面が縦長に変わってくるので、接地面積を稼ぐことができるという理論だ。これにより、十分なグリップが得られる。
新型プリウスの開発にあたっては、サイドシルエットをカッコよくするため、やっぱりタイヤをデカくしたいという考えが当初からあったとのこと。つまり径の大きなタイヤを装着したいというわけだが、一般的に大径タイヤを装着するとクルマの燃費は悪化する。燃費はよくて当然というイメージのプリウスとしては、なかなか受け入れがたい考えだ。そこで力を発揮するのが細幅大径タイヤである。幅が細いと転がり抵抗が小さくなるため、燃費も担保できるのだ。
燃費はクルマの前面投影面積(正面から見たときの面積。小さければ風の抵抗が少なくなり、燃費が向上する)に比例する。その意味でも、タイヤの幅が細いことは燃費に有利に働く。新型プリウスは車体の背が低いので、余計にタイヤの面積が重要になるとのこと。それも含めて、細幅大径タイヤは新型プリウスの企画にばっちりマッチしたわけだ。
ちなみに、試乗した新型プリウスが採用していたタイヤは195/50R19サイズのヨコハマ「ブルーアースGT AE51」だった。実際、新旧のプリウス(プラグインハイブリッド車)で同じコーナーを同じ速度で走って比べてみると、新型の方が安定感やグリップ力が圧倒的に優れていて(タイヤのせいばかりではないかもしれないが)、旧型のタイヤが「ギャギャッ」と鳴くような場面でも、新型は音もなく駆け抜けていった。
タイヤの径が大きくなってきているのは自動車業界のトレンドだ。例えば先ごろ発売となった新型「クラウン クロスオーバーRS」は、225/45R21というサイズのタイヤを履いていた。グリップと燃費とカッコよさ、これら3つの要素を兼ね備えた答えが細幅大径タイヤなのだ。