カシオ計算機は2月2日、2023年3月期第3四半期の決算発表をライブ配信した。実績は、売上高679億円、営業利益は64億円。利益率は9.4%となり、売上高は対前年同期比で99%となった。ただしこれまでの好調を受け、2023年3月期の第1~第3四半期通期の合計売上高は2,012億円と、前年同期を4%上回った。

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「中国のゼロコロナ解除の影響」も

セグメントごとの第1~第3四半期の合計実績として、売上高は時計セグメントが1,211億円で、対前年同期比1パーセントの増収。コンシューマセグメントが653億円で8%の増収。システムセグメントが108億円で12%の増収となった。

  • 第1~第3四半期を合わせた売上高実績は前年を上回ったが、営業利益は減額となった

  • システムセグメントの収益改善が課題

  • 時計、コンシューマ、システムセグメントの修正内容と要因

営業利益は時計セグメントが203億円で前年同期比17%の減益、コンシューマセグメントは40億円で19%の減益、システムセグメントは22億円の赤字となった。これに伴い、カシオ計算機 執行役員 広報・IR担当 田村誠治氏は、2023年3月期通期の見通しを2022年11月9日発表値より下方修正すると発表した。修正内容は以下の通り。

  • 修正後の2023年3月期計画

時計セグメントは売上高1,540億円(公表値より▲80億円)、営業利益245億円(▲40億円)。コンシューマセグメントは売上高890億円(▲20億円)、営業利益45億円(▲10億円)。システムセグメントは売上高150億円(▲20億円)、営業利益が▲30億円(▲10億円)。合計で売上高は2,630億円(▲120億円)、営業利益は180億円(▲60億円)に修正された。

  • 各セグメントにおいて、売上高、営業利益ともに第1~第3四半期実績の現状維持を見込む

田村氏はこれらの要因について「時計事業においては中国のゼロコロナ解除の影響が大きい」と説明。「12月7日にゼロコロナが解除されたが、これにより感染が拡大。市場環境はさらに悪化しており、現在の市場の関心は生活必需品が中心。第4四半期まではこの傾向が続くという想定に変更した」と語った。

また、「北米およびアセアンの一部地域でインフレによる普及価格帯商品の販売が影響を受けている」とし、これも第4四半期までは同様の傾向が続くという前提で計画を変更したと述べる。

  • 時計と楽器は普及価格帯商品の販売が低下。ただし高価格帯は健闘した

  • ハーモニアスマスタードという珍しいカラーを用意している電子ピアノ「Privia PX-S7000」。部屋のどこに置いても違和感がないという全周囲デザインが特徴的

田村氏いわく「楽器事業も北米を中心とした一部地域で普及価格帯商品の販売がインフレの影響を受けている」とのこと。こちらも第4四半期まで同傾向が続く前提で計画を変更したという。またシステムセグメントでは「現在、ハンディターミナルと電子レジスタの販売計画の見直しを行っており、第4四半期に抜本的な対策を講じて、来期に向けた利益の改善を図りたい」とした。

リ・オープニングでの成長回帰に向けて

田村氏によれば、現在、カシオは2030年度に企業価値最大化を目指した「C30プロジェクト」を推進中という。本プロジェクトのポイントは「事業ごとの中、長期戦略成長戦略とそれを支える現場の実行力強化」であり、今期の通期決算までに中期経営計画を発表する予定としている。

  • カシオが取り組んでいる「C30プロジェクト」のポイント

プロジェクトの詳細について、一例として中国でのG-SHOCKのマーケティング戦略が紹介された。外的要因によって今回は販売に影響が出た中国においても、G-SHOCKのブランド熱はしっかり維持できているとのこと。「リ・オープニングでの成長回帰に向けて順調に準備を進めていく」と田村氏は語る。その根拠として、カシオブランドおよびG-SHOCKブランドは中国国内で大変高く評価されており、主要ECサイトの会員数は1,000万人にも及ぶという。これは業界内でも最大規模とのこと。

2022年12月に「天猫」(テンマオ:中国の巨大ECサイト)が実施したスーパーブランドデーでは、市場が非常に厳しい環境で売り上げは前年を超えられなかったものの、AIPL総数(※)による「カシオ興味層」は1億人を突破(1.37億人)。スーパーブランドデー前の約3,300万人から大きく増加した。今後につながるユーザー資産を着実に伸ばすことができたとのこと。

※「天猫」ユーザーのブランドへの関与状態を示す指標。A:認知 I:興味 P:購入 L:ロイヤリティを示す。

  • 中国市場でのカシオおよびG-SHOCKブランドへの評価は、現在も上昇中

各地域で時計製品の高価格帯製品は非常に伸びており、カシオもG-SHOCKのプレミアムラインのラインナップ強化を図るという。若者や女性ユーザー層の拡大にも注力し、Z世代の調査を行いながらインフルエンサーの起用などによって、若者に共感される生のコミュニケーションで着実にユーザー層を広げている。

さらに、直営店舗とECの連携を活用したワントゥワンマーケティングを強化。G-SHOCKのロイヤルファンと深く長くつながることに力を入れていく。ちなみに、G-SHOCKのスポーツ健康ラインでは、デザインと機能をアップデートした「G-SQUAD」新モデルが登場予定だ。

  • 時計事業第3四半期の実績と第4四半期の計画

  • G-SHOCKはメタルモデルが世界的に堅調。女性ジャンル(ジェンダーレスモデル)も欧州をはじめ前年超えに

  • エリア別概況では「若者や女性に向けたマーケティングが成功した」(田村氏)という欧州の伸びが目を引く

  • リ・オープニングに向けた戦略は着々と進行中

  • 関数電卓や電子辞書、オールインワンのICT学習アプリ「ClassPad.net」などの教育事業も大きな成長が期待できる

  • 楽器事業では、音楽で暮らしを彩るカシオ独自の「Enjoyment」市場拡大を目指す

  • プラスチックのエコ素材化をはじめ、環境問題にも積極的に取り組んでいる