駒の動かし方と基本的な戦法は分かったけど、ネット対局などで人と対戦するとなかなか勝てない‥‥なんとことありませんか? この記事では、マイナビ出版刊行の将棋に関する書籍より、対局に活かせる戦法や考え方に関する内容を抜粋して、お伝えします。
前編では、美濃囲いの弱点のひとつ、5五角+3六桂の筋の攻防をご覧いただきましたが、後編では、もうひとつの振り飛車党にとって大きな悩みのタネ「端攻め」についてご紹介します。
美濃囲いの弱点その2 端攻め
振り飛車党にとって大きな悩みのタネ「端攻め」。少しくらい優勢と思っていても、端攻めへの対応ひとつで奈落の底へ、ということは珍しくありません。
第3図、第4図をご覧ください。
両者の違いは、後手の持駒が[金銀桂香歩]か、[金銀銀桂歩]か。
2つの局面、攻めますか? 受けますか? 皆様の選択は?
まず、第3図から見てゆきましょう。
正解は▲5二との攻め合いです。
問題は、△1七歩成に対する応手。この形でのセオリーは、なるべく・・・
「▲1七同桂△1六桂」とされないように、 「2八玉型で△1六桂」とされないように!
1七地点での清算に応じることです。
よって、△1七歩成には、▲同歩△同香成▲同香(途中図)が正しい応対。
続く△同角成にも、▲同桂は△1六桂で詰まされてしまいます。セオリー重視の▲同玉が正解で、続く△1一香に▲1六歩が、のちの△1六桂のスペースを消すテクニック。以下△同香▲2八玉(結果図)で、最後まで△1六桂と打たれることなく受け切りることに成功しました。
少々難しい手順ではありますが、
第3図の金銀桂香の持駒は大丈夫!
です。
では、第4図はどうでしょうか。
第3図との違いはわずかですが、ここは、▲2六香(正解図)の受け(※後手陣にも利いていてまったく受け一方の指し手ではありません)が正解です。
仮に、第3図と同様に▲5二とと攻め合うとどうなるのでしょうか。
それには△1七銀の打ち込みが成立し、▲3九玉には△6六角の王手がぴったりとなって詰むため、先手は1七地点での清算に応じるよりありませんが、以下△2五桂(失敗図)と打たれて、上に逃げても下に逃げても詰まされてしまいます。
※上に逃げた場合の一例は、▲1六玉△1五歩▲2五玉△3五金▲1五玉△2四銀▲1六玉△1六香まで。下に逃げた場合の一例は▲2八玉△1六桂▲3九玉△2八銀▲4八玉▲5七金△5九玉▲6八とまで。
つまり、
第4図で後手の持駒が金銀銀桂は、やばい!
です。何かしらの受けを講じる必要があるようです。
パターン熟知で「美濃の最終盤」を極めよう
美濃囲いの最終盤における攻防、テクニックをご覧いただきました。
本稿に使用した局面、手順は、すべて2022年12月31日発売の『美濃囲いを極める終盤総手筋』からのものです。(書籍紹介ページはこちら)
著者は、「振り飛車定跡 基本のキ」「将棋手筋基本のキ」「相振り飛車基本のキ」「よくわかる中飛車」「よくわかる四間飛車」「美濃囲いを極める77の手筋」「1冊でわかる右四間飛車 その狙いと対策」(マイナビ出版)の著書があり、また、子供教室を開くなど指導に定評のある藤倉勇樹五段。女流棋士の和田あき・はな姉妹の師匠でもあります。
本書は「美濃囲いを極める77の手筋」の続編的位置づけで、藤倉五段はまえがきに、
「前作の後から美濃囲いの続編が出せないかと思案しておりました。構想から3年が経ちましたが、美濃囲い愛好家として、全てを出し切るつもりで取り組みました。今回は応用編として、一手違いの局面における攻めるべきか受けるべきかの問題を多数ご用意しました。横からの攻めはもちろん、端攻めや角のライン攻めへの対応まで幅広く紹介しております」
と記しています。
ここでは4つの局面しか紹介しませんでしたが、「美濃囲い愛好家」藤倉五段の美濃囲いへの愛は半端なものではありません。ここで、本書の章立てをご覧ください。
例題の数は86。似たような局面ではあるものの、配置が少し違う、持駒が少し違うなど、その全てが実戦で出現しやすい局面であり、そして「この条件なら、攻めるべきか、受けるべきか」が、本稿で太字で記した部分のようにはっきりと結論づけられています。
86の局面をすべて覚えるのは簡単ではないかもしれません。しかし、本書を繰り返し読むことで、実戦の中で「この条件なら、この形なら」と、ピンと来て正解手を導き出せることが多くなるでしょう。もちろん、ピンとくる、のレベルでなく、本書の手順その一手一手を理解して指せるようになれば、それに越したことはありません。
振り飛車党の方にはもちろん、日々、美濃囲い攻略を目論む居飛車党の方にもおすすめできる一冊です。
ところで、腕に自信のある方にとっては、本稿で紹介した局面はやさしすぎたかもしれません。
上記「章立て」にも出ていますが、本書の第4章は「チャレンジ問題」となっています。正解は記しませんが、その中から1題を紹介します。ぜひ挑戦してみてください。
皆様ならこの局面、攻めますか? 受けますか?
執筆:富士波草佑(将棋ライター)