第96回キネマ旬報ベスト・テン表彰式が1日に都内で行われ、各賞の受賞者が登場した。
大正13年から続き、96回目を迎えた日本最古の映画賞となる同イベント。司会は笠井信輔アナウンサーが務めた。
新人女優賞に選ばれたのは、映画『マイスモールランド』で女優デビューを飾った嵐莉菜。「たくさんの方々に評価していただけたこと、このような素晴らしい賞をいただけたことは大変光栄です。ありがとうございます」と受賞の喜びを語り、「まさかいただけるとは思っていなくて……」と受賞の一報に驚いていたことを明かした。
また、同作には嵐の父と妹、弟が家族役で出演しており、「(家族も)自分のことのように喜んでくれました!」と嬉しそうに思い出す嵐。司会の笠井アナから「デビュー作にご家族が出演するのは恥ずかしくなかった?」と聞かれると、「家族全員オーディションで受かっていて……(笑)」と告白し、「恥ずかしさもありましたが、全力でやり切りました」と笑顔を見せた。
続く、主演女優賞は、映画『ケイコ 目を澄ませて』や『犬も食わねどチャーリーは笑う』、『神は見返りを求める』、『やがて海へと届く』の4作品で存在感を見せた岸井ゆきのが受賞。
『ケイコ 目を澄ませて』では、生まれつき耳の聞こえないプロボクサーを演じた岸井。同作を振り返り、「トレーニングだったり、増量だったり、手話の練習だったり、体の痛みというのは、自分だけのものだと思ってしまう瞬間もあった。現場のみんなで、せーので一歩を踏み出せるような現場で、主演できたことをとても光栄に思います」とスタッフやキャストに感謝した。
セリフがほとんどない役での表現の難しさについて、笠井アナから質問されると、岸井は「私はスポーツなどでルールを知らなくてもなぜか感動してしまうことがある。言葉がなくても感じられるものがあることを、みんな知っているという信頼があったので、そこに存在することができたら伝わるんじゃないかと思いました」と回答。これを受け、笠井アナは「手話の話になったら目黒(蓮)さんに聞かないといけないですね」「ドラマ『silent』で同じく手話を使ったお芝居をされましたが、今の岸井さんのお話しを聞いて納得する部分はありましたか?」と新人男優賞を受賞した目黒に話しを急に振り、目黒は驚いた表情を見せながらも「すごくありました!」と共感を示した。
なお、映画『ケイコ 目を澄ませて』は、岸井の主演女優賞のほか、日本映画作品賞、三浦友和が助演男優賞、三宅唱監督が読者選出日本映画監督賞を受賞し、4冠を達成。三宅監督は「ケイコ(岸井)さんと会長(三浦)と一緒にこんなところに立てるとは想像もしていなかったのでただただ嬉しいです」と喜びをにじませた。岸井も「こういった賞を4つもいただけたということを、このトロフィーを持って感じています。この映画はまだスクリーンで観ることができるので、ぜひ劇場で見ていただければ嬉しいです」とアピールした。
■第96回キネマ旬報ベスト・テン 受賞・登壇者一覧
- 助演女優賞:広末涼子 ※花束ゲスト…廣木隆一監督
- 助演男優賞:三浦友和
- 外国映画作品賞:『リコリス・ピザ』 定井勇二氏、宇都宮誠樹氏
- 外国映画監督賞:『パラレル・マザーズ』ペドロ・アルモドバル監督 ※代理…大谷洋氏
- 読者選出外国映画監督賞:『コーダ あいのうた』シアン・ヘダー監督 ※代理…水野貴夫氏
- 読者選出日本映画監督賞:『ケイコ 目を澄ませて』三宅唱監督
- 文化映画作品賞:『私のはなし 部落のはなし』満若勇咲監督
- 読者賞:連載「映画を見ればわかること」川本三郎氏
- 特別賞:小林信彦(コメント映像での出演)
- 新人女優賞:嵐莉菜
- 新人男優賞:目黒蓮 ※花束ゲスト…廣木隆一監督
- 主演女優賞:岸井ゆきの
- 主演男優賞:沢田研二(コメント映像での出演)
- 日本映画脚本賞:『夜明けまでバス停で』梶原阿貴氏
- 日本映画監督賞:『夜明けまでバス停で』高橋伴明監督
- 日本映画作品賞:『ケイコ 目を澄ませて』 ※登壇者…福嶋更一郎プロデューサー