山里亮太が映画好きのゲストと映画の深掘りトークを繰り広げる、WOWOWプライム&WOWOWオンデマンドで毎週金曜日の深夜(土曜24:00~)に放送・配信中の映画番組『フライデーミッドナイトシアター』。2月のゲストとして登場するのは、日本テレビの「金曜ロードショー」のプレ番組にも出演し、自身のyoutubeチャンネルでも「ハリウッド映画あるある」ネタが人気を博すなど、映画大好き芸人として知られる、ピン芸人ユニット「おいでやすこが」のこがけん。今回、こがけんはオススメ映画として、『ビバリーヒルズ・コップ』『メッセージ(2016)』『コーダ あいのうた』をピックアップ。本番組の収録後のこがけんを直撃インタビューし、普段どのようにして映画を選んで観ているのか、じっくり聞いてみた。
――大の映画好きとして知られるこがけんさんですが、普段どうやって映画情報を収集されているんですか?
いまはTwitterで情報収集することが多いですね。SNSに映画の感想を上げている人や映画評論家の人たちのアカウントを片っ端から一旦フォローして、自分とは感覚が合わないなと思った人を外していくようにしています。そうすることで「じゃあ、こっちを優先的に観てみよう」といった感じで、どんどん「面白そう!」の精度が増してくる気がするので。
――なるほど。
とはいえ、自分と完全に映画の好みが一緒だったらフォローしている意味がなくなってしまうので、「この人は目の付けどころが面白いな」と感じたり、共感できるところがある人たちのアカウントを残したりすることの方が多いですかね。
――「こういう見方もあるのか!」と、新たな視座を与えてくれる人ということですね。
そうですね。その上で、僕の場合は基本的には「監督軸」で追っていくことが多いですね。監督じゃなくても、「あの作品と同じ製作陣なら間違いないから観よう」とか。逆に言うと、俳優さん軸ではあまり深掘りはしないかな。同じ俳優が出ているからといって、必ずしもすべての作品が面白いというわけでもないじゃないですか。もちろん、好きで追いかけている俳優さんもいますけどね。
――例えば?
トム・クルーズには狂気を感じるところがあって、すごく好きですね。トム・クルーズって、ジャッキー・チェンが自分でスタントをやらなくなったタイミングくらいで、逆に自分でやり始めたじゃないですか。トム・クルーズはめちゃくちゃジャッキー・チェンのことをリスペクトしてるんですけど、いわば師匠超えをやってるんですよね。憧れの存在を自分が更新していくって、すごいことですよね。それこそ、アイドル路線で売り出されていた当時はアンチも多かったと思うんですが、それを払拭しようと頑張る人が僕は好きなんです。トム・クルーズもそうだし、レオナルド・ディカプリオもそうだし。逆境のなかでもがいて、本当の自分の理想の映画人になろうとして。現に、いまトム・クルーズを批判してる人なんて、もういないですからね。
――トム・クルーズの他に注目している俳優は?
ジェイク・ギレンホールかな。あんなに目が大きい人は、他に観たことがないですよ! 目だけであそこまで演技ができる人はいないし。生まれながらに持っているものが全然違う。「一挙一投足を見ていたい」と思っちゃうんですよね。
――目で感情表現できる俳優に、コメディアンとして惹かれるところがあるんですかね?
あぁ、確かに。番組でも話しましたけど、僕はニコラス・ケイジもめちゃくちゃ好きなんです。でも、「俳優軸」では観ないと言った理由としては、ニコラス・ケイジほど、それほど面白くない映画にも出ている俳優も他にいないと思うからです。
――(笑)。あまり作品を選ばずに出ている感じがしますよね。
2種類あると思うんですよ。エージェントが良くないのか、本人が単純にお金がないのか。ニコラス・ケイジの場合は後者だと思うんですけど。すごく浪費家なので。ロールス・ロイスを3台持ってたりとか、化石を持ってたりとか。ブルース・ウィリスとかも割とそっち側の系統というか。とにかくいろんな作品に出まくるから、なかには面白くない作品も結構あるという意味で、俳優軸で追いかけていると時間が足りなくなるっていう理由があります。
予告編を観ないようにしています
――それはそうと、こがけんさんの「ハリウッド映画あるあるネタ」は最高ですね。ネタの着想はどこから?
何の落ち度もない前途有望な若者が死んでいくのが「アメリカン・ニューシネマ」だとすると、「こういう落ち度があったり、こういうミスをしたり、こういう不注意があるヤツが、こういう悪い目に遭うぞ!」みたいにだんだんとパターン化されていったのが、1980年代以降のハリウッド映画のような気がするんです。僕はその“あるある”のモノマネをしてる感じですね。最初はそこまでウケるとは思ってなかったんですが、きっとみんなもなんとなく"あるある"を感じてたんでしょうね。特定の映画の場面をそのまま再現しているわけではないのに、「そういえばそんな感じの場面があった気がする」みたいなところで、みなさん笑ってくれるんです。きっと記憶のなかに無意識に蓄積されているんだろうなと思いますね。
――番組内で「今まで外した作品は1本もない」とおっしゃっていたのが印象的でした。
ほぼ外してないですが、てっきり『俺たちフィギュアスケーター』シリーズだとばかり思い込んで観た、『俺たちプロボウラー』っていう映画だけは、唯一面白くなかったです(笑)。
――ビデオ会社がよく使う手口ですね(笑)。『俺たち~』シリーズとは全く関係なかった、という(笑)。
そうそう。吹き替え版の声優を吉本の芸人が担当してるので、あんまり悪く言えないんですけど(笑)。
――番組では「なるべく事前情報を入れずにフラットな状態で観るように心がけている」というお話もされていましたが、外さないコツはありますか?
僕は、「観たい!」と思っている映画の予告編が映画館で流れ始めたら、すぐさま下を向いて、耳も塞いで、予告編を観ないようにしています。でも、逆に完全にノーマークだった場合は、まずは予告編を観てみて、面白そうだったら本編も観ますね。よく「ピンときた!」って言いますけど、勘は経験値の統計だと思っているので、自分の勘は結構信用しています。
――特に好きなジャンルと、逆に優先順位が低くなりがちなジャンルは?
現実との落差が大きいという意味で、ファンタジーとかSFとかが割と好きですね。基本的に、観たことがないものを観てワクワクしたいんですよ。SFやファンタジーとかだと、観たことがないものが観られる可能性が一番高いから。逆にもろに恋愛映画っぽいものだと、優先順位は低いかな。恋愛モノだとしたら、『マトリックス』みたいなヤツがいいですね。
――『マトリックス』って、恋愛モノでしたっけ?
『マトリックス』は恋愛モノですよ! ヒロインのトリニティーは預言者に「あんたが恋をした人が救世主だよ」と言われる。自分が救世主だと知ることと、恋愛をすることとは、一緒だっていう話ですからね。素敵ですよね!僕にとってはれっきとした恋愛モノでもあるんです。恋愛映画のなかでも『エターナル・サンシャイン』は大好きなんですけど、もしチャーリー・カウフマンが脚本を手掛けていると知らなかったら、多分観てなかったと思いますね。
――では最後に、2023年劇場公開作で、こがけんさんが"予告編を観ない"であろう期待作は?
そうだなぁ。ジョージ・ミラー監督の『アラビアンナイト 三千年の願い』ですかね。『マッド・マックス』のジョージ・ミラー監督が、『アラビアンナイト』を撮ったらどんな映画になるのか、興味がありますね。2022年は『トップガン マーヴェリック』や『RRR』といったエンタメ超大作が映画界に非常に貢献した年だったと思っているんですが、それが本年度のアカデミー賞でどんな評価を受けるのかも非常に楽しみですね。注目作は、アカデミー賞にノミネートされている『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』ですね。僕は『マトリックス』がアカデミー賞を獲れなかったことに対してずっと文句を言い続けてきたんですが、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』の監督は、「ミシェル・ヨーで『マトリックス』がやりたかったんだ」って、明言しているんですよ。この作品がノミネートされていることの意味を噛みしめているところです。メタバースとかマルチバース云々ではなく、伝えようとするテーマに血が通っているかどうかが僕はすごく重要だと思っていて。この作品にはすごく血が通っているから、いいところまで行って欲しいなと思ってますけどね。ミシェル・ヨーも、キー・ホイ・クァンも好きですしね。
――ありがとうございました。気になるこがけんさんのアカデミー賞予想の続きは、『フライデーミッドナイトシアター』で!