アール・ヌーヴォーの代表的な画家アルフォンス・ミュシャのマルチ・アーティストとしての魅力をひもとく「ミュシャ展 マルチ・アーティストの先駆者」が、4月8日より福岡市美術館で開催される。
アール・ヌーヴォーの代表的な画家として知られるアルフォンス・ミュシャ(1860-1939)は、サラ・ベルナールの演劇のポスター「ジスモンダ」をはじめとする数々のポスター作品で知られているが、実際に手がけたジャンルは非常に多岐にわたっている。ミュシャ作品に特徴的な優美な女性像と花々を組み合わせたグラフィックおよびプロダクトデザインは、絵画作品とはまた異なる魅力を宿しているという。
同展では、チェコ在住のズデニェク・チマル博士のコレクションから、19世紀末、ベル・エポックの時代を象徴するミュシャ芸術の中で、とくにデザインの仕事に着目し、マルチ・アーティストとしてのミュシャについてひもとく。書籍の挿絵、ポストカード、お菓子や香水のパッケージ、宝飾品などを中心に、油彩画、水彩画、写真まで、様々な形のミュシャの作品を楽しむことができる。
展覧会は5章で構成されている。
第1章「挿絵画家としての出発 Different Ways」では、書籍、雑誌、ポストカード、そのほかのグラフィック作品が展示される。イヴァンチッツェ生まれのミュシャが画家をめざしはじめたのは、故国チェコおよびウィーンにあるときだった。20代半ばを過ぎた頃、ミュンヘンを経て芸術の街パリに出てアカデミー・ジュリアンに入学。パリでのミュシャは、当初生活のため、雑誌や書籍に挿絵などを描いていた。この章では、まったく無名の画家であったミュシャが、夢をつかむために行っていた、才能あふれる初期の仕事の数々を紹介する。
第2章「成功の頂点― ポスターと装飾パネル Apex of his Career」ではポスター、カレンダー、装飾パネルが展示される。1895年の年明け、ミュシャはまさに一夜にして有名になった。女優サラ・ベルナール演じる劇「ジスモンダ」のポスターが一斉にパリの街に貼りだされたのだ。それは、ミュシャにとっての栄光への第一歩であるとともに、アール・ヌーヴォーを象徴的するポスターのはじまりであり、以後ミュシャはその第一人者としてこの分野で活躍していく。この章では、このポスターをはじめ装飾パネルなど、ミュシャ芸術の頂点をなす作品群を紹介する。
第3章「生活のなかのデザイン Everyday Life」
アール・ヌーヴォーの時代は、生活革命、すなわち消費文明のはじまりでもあったという。その中で、ミュシャはさまざまな商品のパッケージを手がけた。既存の図案や新規に考案した図案を商品の広告に利用したのだ。ミュシャは、自らの作品を広告に積極的に利用したはじめての芸術家でもあり、切手や紙幣、さらには宝飾品に至るまで、生活の中でも用いられたさまざまな商品のデザインも手がけている。この章では生活のなかで見ることのできたミュシャの仕事を紹介する。
第4章「プライヴェートな生活の記録 Family Life」では、写真、素描などが展示される。 ミュシャは、身近な人々と生活を写した写真家としても知られていた。この章では、ミュシャが撮った写真から、私的な家族や友人たちとの生活を紹介。また、ミュシャが芸術家になる前、学生時代のノートに走り描きされた素描や、初恋の人に対する純朴な気持ちなどを表現した素描など、ミュシャのきわめてアンティーム(親密な)世界をあわせて紹介する。
第5章「唯一無二のオリジナル作品 Original is Only One」では、油彩、水彩、素描、挿絵原画が展示される。チマル・コレクションの魅力は、なんといっても、一点しか存在しないオリジナル作品を多く所蔵している点。なかでも、イヴァンチッツェ、ウィーン、ミクロフで描かれた初期の作品群はきわめて貴重であり、ミュシャの早熟な才能を示すものだという。また、ミュシャが手がけた『おばあさんのお話』(クサヴィエ・マルミエ著)の挿絵の原画6点も、一か所にまとまって存在するものとして貴重であり、さらには、ミュシャ晩年の重要な仕事である《スラヴ叙事詩》のための習作も含んでいる。この章では、素描、油彩など、これら貴重で魅力的なミュシャの直筆作品を紹介する。
「ミュシャ展 マルチ・アーティストの先駆者」は、4月8日~6月4日(月曜休館)、福岡市美術館にて開催。開場時間は9時30分~17時30分(最終入場は30分前まで)で、観覧券は一般1,700円(1,500円)、高大生1,000円(800円)、小中生600円(400円)。
※( )内は前売、20人以上の団体料金で、学生は入場の際に学生証等の提示が必要。身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳をお持ちの方(介護者1名を含む)は前売料金(要証明)で入場可。