東京国立博物館 法隆寺宝物館の中2階に、1月31日、法隆寺と聖徳太子の生涯をよりリアルに、能動的に楽しめる体験型の「デジタル法隆寺宝物館」が開室しました。保存上の理由で常時展示することがかなわない法隆寺ゆかりの名宝を、臨場感あふれるグラフィックパネル(複製)と大型8Kモニターのデジタルコンテンツで絵の細部までを自在に鑑賞できる常設空間となっています。

かつて奈良・法隆寺の絵殿という建物の内側を飾っていた国宝「聖徳太子絵伝」は、計10面からなる大画面絵画。その原寸大のグラフィックパネルを、法隆寺の絵殿にあったときと同じ「コの字」型の配置に展示し、作品がもともと設置されていた建物内部の配置を体感することができます。

  • 原寸大のグラフィックパネルは絵殿にあったときと同じ配置で、当時の建物内部の空間を追体験できる

  • 臨場感あふれるグラフィックパネル

聖徳太子の生涯にわたる 50 以上もの事績が描かれた「聖徳太子絵伝」は、現存する最古の聖徳太子絵伝ですが、およそ千年前に描かれた現品は長い年月を経て画面のいたみがひどく、肉眼では細部まで鑑賞することはかないません。デジタルコンテンツ「8Kで文化財 国宝『聖徳太子絵伝』」は、そんな原品の高精細画像を大型8Kモニターに映し出すアプリケーション。

  • 70インチの大型8Kモニターで、「聖徳太子絵伝」の細部まで映し出す

  • 見たい部分を拡大すると、8Kモニターに映し出され、聖徳太子の表情までじっくり鑑賞することができる

「11歳、空中を飛行するなど特殊な能力をしめす(第1面)」「12歳、百済の賢者、日羅と出会う(第10面)」「27歳、黒駒に乗って東国にあそび富士山に登る(第3面)」など、聖徳太子の生涯にわたる 50 以上もの事績から見たい場面を手元のタッチパネルで選んで、70インチの8Kモニターでじっくり鑑賞できます。

  • 国宝「聖徳太子絵伝」(部分)/東京国立博物館蔵

  • 復元模造 伎楽面・伎楽装束

また、「伎楽(ぎがく)」という、かつて人々を魅了した仮面芸能の復元模造も展示しています。法隆寺宝物館の第3室で通常展示されている伎楽面の「呉女(ごじょ)」と「迦楼羅(かるら)」の2点を、X線CT撮影や赤外線撮影など多角的な調査をもとに、現存する資料から色や形について検討を重ね、材質や技法、彩色の仕上げに至るまで原品に忠実に再現。さらに装束の「裳(も)」と「袍(ほう)」も、原品の解体修理と並行して復元模造を製造。仮面や装束の製作当時の華やかな彩りには驚かされます。

  • 第3室で通常展示されている伎楽面の「呉女(ごじょ)」が、

  • 復元されるとこんなに鮮やかな色彩に

この「聖徳太子絵伝」と呉女の伎楽面の展示は7月30日まで。8月1日からは「法隆寺金堂壁画」グラフィックパネルと写真ガラス原版デジタルビューアと迦楼羅の伎楽面に展示を入れ替え、半年ごとに2つのテーマを交互に展示していくそうです。

■information
「デジタル法隆寺宝物館」
会場:東京国立博物館 法隆寺宝物館 中2階
会期:1月31日開室 ※以降は通年展示(半年毎に展示替)
総合文化展観覧料:一般 1,000円、大学生500円、高校生以下および満18歳未満、満70歳以上は無料