里見香奈白玲への挑戦権を争うヒューリック杯第3期女流順位戦(主催:ヒューリック株式会社)は、A級4回戦の全5局が1月30日(月)に東京・将棋会館で行われました。無敗で首位タイを走る西山朋佳女流二冠は1敗の加藤桃子女流三段と対戦。対局の結果、101手で勝利した加藤女流三段が通算成績を3勝1敗として西山女流二冠に並びました。
三間飛車対居飛車銀冠
後手となった西山女流二冠は角道を止めた三間飛車に構えます。ゴキゲン中飛車とともに西山女流二冠が得意としている形で、この形の三間飛車については直近5局連続での採用となりました。居飛車党の加藤女流三段が銀冠囲いに組んで持久戦を見せたのに対し、西山女流二冠は飛車を自陣四段目に浮いて石田流の好形に構えます。
駒組みが頂点に達したところで、先手の加藤女流三段は自陣の右金を力強く自陣四段目に上がって局面を動かしにいきました。先手番らしく千日手を嫌った積極策で、後手が放置すればこの金を盤面左方に移動して玉頭戦に加勢する狙いがあります。これに対し後手の西山女流二冠が4筋から歩をぶつけて仕掛けを決行したことで本格的な戦いが始まりました。
加藤女流三段の金が局面を打破
局面は加藤女流三段が桂得となって推移しています。もたれ指しを目指す西山女流二冠が6筋に桂を打って千日手を志向したとき、この桂を金で食いちぎって局面を打開したのが加藤女流三段自慢の一手でした。駒割は先手が2枚の桂対後手の金という微差ながら、飛車角銀桂の攻め駒が無駄なく後手玉に狙いを定めている点で加藤女流三段が指しやすい形勢となっています。
非勢を認める西山女流二冠は、先手の攻め駒をいじめるべく持ち駒の金を盤面右方に投入していわゆる「B面攻撃」に打って出ます。局面が穏やかになればここからと金を作って先手の攻め駒を取る狙いでしたが、これに対して加藤女流三段は飛車を見捨てて敵玉の本丸を攻める鮮やかな手順を用意していました。
お手本の寄せで加藤女流三段が勝利
西山女流二冠の放った勝負手の金打ちが不発に終わり、盤上は先手の加藤女流三段が着実に優勢を築いて終盤戦に突入しています。盤上に据えた角を中心として攻勢を強める加藤女流三段は、このあとも緩みない寄せの手順で確実に寄せの網を絞っていきます。この直後、攻めの要となっていた角を犠牲にして美濃崩しに向かったのが加藤女流三段らしい最短の勝ち方でした。
端に逃げ込んだ西山玉に対し、最後は「端玉には端歩」の格言通りに歩を突いたところでは加藤女流三段の勝勢が誰の目にも明らかでした。終局時刻は16時17分、お手本のような寄せを見せた加藤女流三段がライバル相手に貴重な白星を挙げました。これで勝った加藤女流三段、敗れた西山女流二冠ともに3勝1敗に。同日行われた対局で勝利した伊藤沙恵女流名人が4勝0敗で単独首位を走ります。注目の次局5回戦は3月13日(月)に予定されています。
水留啓(将棋情報局)