「頭角を現す」という言葉について、人間の頭には角(つの)はないはずなのに、なぜこのような表現が使われているのか、不思議に思ったことがある人もいるかもしれません。

この記事では「頭角を現す」の意味はもちろん、由来について詳しく解説します。例文などとともに、正しい使い方も確認しましょう。言い換え表現や対義語、英語表現もまとめました。

「頭角を現す」とはどのような言葉?

  • 「頭角を現す」とはどのような言葉?

    「頭角を現す」は褒め言葉としても使用されるポジティブな言葉です

「頭角を現す」の読み方は、「とうかくをあらわす」です。

ここでは、この言葉の意味や由来について解説します。言葉の背景を併せて確認することで、さらに理解が深まるでしょう。

「頭角を現す」の意味とは?

「頭角を現す」の意味は、「才能や技量などが抜きん出て、周囲の人よりも一段と目立つこと、目立ち始めること」です。

頭角とは、多くの人がイメージする通り、獣などの頭の先端にある角(つの)を指します。「頭角を現す」は、群れの中にいる獣のうち、他よりも大きな角を持つものが目立つ様子から生まれた言葉です。

通常、自分に向けては用いられません。他者の様子に対して、多くは「たちまち」「めきめきと」など勢いを表す言葉とともに使われることが多いです。

他者より優れていることを表す言葉であるため、通常は褒め言葉として使用されます。

「頭角を現す」の語源・由来とは?

「頭角を現す」という言葉の由来は、唐の文人・韓愈(かんゆ)が書いた墓誌の一節にあります。墓誌とは死者の功績や経歴を記したもので、当時の中国にはこの墓誌を墓の中に埋める習わしがありました。

韓愈は友人であり、若いころから大成していた柳宗元(りゅうそうげん)の墓誌に、「嶄然として頭角を見す(ざんぜんとしてとうかくをあらわす)」、つまり「山がそびえるように、その頭の先を見せた」と記しています。

この原文で「嶄然見頭角」とある言葉が、「頭角を現す」という日本語として広く伝わったとされています。なお「嶄」は高く険しいという意味を持ちます。

柳宗元は韓愈と同じく文人であり、また政治家としても活動しました。

「頭角を現す」の使い方と例文

  • 「頭角を現す」の使い方と例文

    「頭角を現す」の使い方を見ていきましょう

「頭角を現す」の使い方には、以下のようなものがあります。

【例文】
・その新人は作業の速さと正確さにおいて、頭角を現していた
・最近、彼は仕事でめきめきと頭角を現してきた
・彼女は新しい部署に異動して、たちまちその頭角を現した

前述の通り、「めきめきと」「たちまち」という言葉は「頭角を現す」と一緒に使われることの多い表現です。また、間違いやすい表現として「頭角を出す」というものがあります。この表現は誤用であるため、注意しましょう。

「頭角を現す」の類語・言い換え表現

「頭角を現す」という言葉をより深く理解するために、類語についても確認しておきましょう。

台頭する

「台頭」の意味は、「勢いを増してくること」です。もともとは「擡げる(もたげる)」から「擡頭(たいとう)」と表記されていました。「擡げる」とは、「持ち上げる、起こす」の意味で用いられる語です。

頭を擡げる(もたげる)

前述のように「擡げる」とは「持ち上げる、起こす」の意味で、「頭を擡げる」という言葉は「隠れていた考えや気持ちなどが浮かび上がってくる」や「だんだんと勢力を得て、人に知られるようになる」という意味を持ちます。

存在感を増す

「存在感を増す」は「頭角を現す」よりもさらに日常的に使われる表現です。意味としては、「印象が強くなり目立つこと」などを表します。

プレゼンスを高める

特にビジネスシーンなどにおいては「存在感」を表す英単語である「プレゼンス」を用いて、「B社がプレゼンスを高めてきた」「あの国のプレゼンスが低下してきている」などのように使われることもあります。

  • 「頭角を現す」の類語や対義語

    類語や対義語も併せて覚えておきましょう

「頭角を現す」の対義語

対義語についても確認しておきましょう。

馬脚を現す

「頭角を現す」の意味が「才能や技量などが優れていて一段と目立ち始めること」とすると、「悪いものが出てくる」という意味では「馬脚を現す」を対義語として挙げられるでしょう。

「馬脚を現す」とは、「隠していた良くないものが知られてしまうこと」を表す言葉です。そのため、通常はネガティブな意味で使われます。

「頭角を現す」と同じく、中国の故事に由来すると伝えられています。諸説あるものの、演劇で馬脚役の役者が姿を見せてしまった話に基づくとする説が有力です。

「頭角を現す」の英語表現

  • 「頭角を現す」の英語表現

    「頭角を現す」を英語で表す際は「目立つ」というニュアンスを含ませます

「頭角を現す」を英語にするときは、以下のフレーズを使用して表すことができるでしょう。

  • to stand out:目立つ、目を引く
  • to distinguish oneself:目立つ・有名になる
  • cut a figure:姿を示す、異彩を放っている

「目立つこと」「良い意味で他と区別されること」を表現することがポイントです。

そのため、「目立つ」というニュアンスを含む「stand out」や「distinguish」を使用すれば、似た用途で使える文章になります。

また、「cut a figure」は「姿を示す」「異彩を放っている」などの意味合いを持つ言葉であるため、こちらも「頭角を現す」と近しい表現といえるでしょう。

頭角を現すは、ポジティブな意味の故事成語

「頭角を現す」は、「才能や技量が他よりも優れていて目立つ様子」を表す言葉です。唐の文人である韓愈が、友人の柳宗元の墓誌に記した故事に由来するとされます。

この機会に、意味や使い方をしっかりとマスターしましょう。