次に、上述の動作原理を確認するため、フォトニック結晶レーザーの過渡応答解析が行われた。自己変化フォトニック結晶レーザーに、直流電流20Aを注入した際の光出力の時間変化が計算された。すると、パルス幅30ps未満、ピーク出力100Wを超える短パルス発振が断続的に得られていることがわかったという。
さらに、生成された光パルスの各瞬間におけるデバイス内部の光子分布密度が計算された。その結果、時間の経過とともに光が一方向に移動することが確認され、上述の発振原理に従って短パルスが生成されることが数値計算により確かめられたという。
以上の設計に基づき、実際にデバイスの作製が行われた。そして、そこから出射された光の強度が空間的および時間的に変化する様子が、ストリークカメラを用いて測定された。その結果、時間方向に断続的に光が検出されていることから、作製されたフォトニック結晶レーザーから断続的な短パルス光が出射されていることが確認された。
また、各パルスに注目すると、光がu軸方向に移動している様子が観測され、光の移動を実験的に観測することにも成功したという。取得したストリークカメラの画像が空間的に積分され、光出力の時間変化が示された。その結果、パルス幅30ps未満で、ピーク出力80W以上(従来の4倍以上のピーク出力)の短パルス・高ピーク出力発振の実現に成功したとする。
今回開発された短パルスフォトニック結晶レーザーは、さまざまな分野への波及効果が期待されるとする。たとえば、スマートモビリティ分野において不可欠なレーザー測距センサであるLiDARに適用することにより 、人間の目への安全性(アイセーフ条件)を確保しつつ、可能な限り遠くの物体の測距(>200m)が可能となることが期待されるとした。
さらに、今回の自己変化フォトニック結晶レーザーに、可飽和吸収体の導入を組み合わせることで、ピーク出力がkW級の短パルス・高ピーク出力も実現可能になることが期待されるとする。またこれらの開発により、従来は不可能だった半導体レーザー単体でのレーザー微細加工への適用をはじめとして、さまざまな分野の発展に大きく寄与するものと期待されるとした。