スイス・ジュネーブ大学の研究チームは、高出力のレーザーを使用して雷を誘導することに初めて成功したと発表した。英科学誌「Nature Photonics」に1月16日付けで掲載された。

  • 世界初、自然発生した「雷」をレーザー誘導する実験が成功 - ネット「避雷針が変わる!」

    初めて、高出力レーザーで自然発生した雷を誘導することに成功

雷(かみなり)は、地球上に年間14億回以上落ち、数千人が落雷の被害に遭い、落雷被害者の約30%が死亡しているとされる。現在、落雷から身を守る装置には、1749年に米数学者のベンジャミン・フランクリンが考案した「避雷針」がある。しかし、設置場所の制約から、避雷針では限られた範囲しか保護することができない。レーザーであれば、避雷針よりも長く伸ばすことが可能で、保護範囲を広げることができる。そのため、1960年代から、避雷針の代わりに、レーザーを使って雷を誘導する研究が行われていた。

同研究チームは、スイス北東部にあるサンティス山の標高2,500メートルの山頂で実験を行った。ここは、年に100回ほど落雷があるそうで、山頂の電波塔横に1秒間に最大1,000回という高速で光パルスを発射できる高出力パルスレーザーを設置した。

  • 雷を誘導するための高出力パルスレーザー装置

10週間以上の観測の中で、合計約6時間の雷雨が発生している間に高出力パルスレーザーを稼働。その間に4回落雷を誘導させたとのこと。雷は、レーザーの経路を50メートルほど辿って、避雷針に到達しているのが確認できたという。

  • 高出力パルスレーザーが雷を誘導している瞬間

仕組みとしては、レーザーが発射されると、空気分子がレーザーエネルギーを吸収することで熱せられ、密度が低下した空気になるという。これは電子伝導率が高く、雷の通り道として機能するのだとか。

同研究チームは、パルスレーザーの新たな大気圏内応用への道を開くとともに、空港や発射台などの大型インフラを落雷から守るための重要な一方となるとしている。

ネット上では「すげーの来たな、避雷針が変わるかもしれない」「レーザー誘雷でスプリガン思い出した」「R-GRAY2みたいになってきた」「これで落雷事故が防げるならゴルフ場がみんな買いそう」などの声が寄せられた。