第36期竜王戦2組ランキング戦(主催:読売新聞社)は、2回戦の斎藤慎太郎八段―増田康宏六段戦が1月26日(木)に関西将棋会館で行われました。対局の結果、173手で勝利した斎藤八段が3回戦進出を決めました。
角換わり腰掛け銀の注目定跡
振り駒で先手となった斎藤八段は角換わりの序盤戦に誘導します。角換わり腰掛け銀を得意とする増田六段も真正面からの研究勝負に応じ、盤上は斎藤八段が単騎の桂跳ねを敢行する定跡に進展しました。この戦型のメインの変化とあって、実戦例も数多くある展開です。
斎藤八段が1~3筋の歩を次々に突き捨てて攻めの幅を広げていくのに対し、後手の増田六段も丁寧な受けで応じます。攻めが一段落したタイミングで攻防の自陣角を打ったのが増田六段の研究手。局面を落ち着けて歩得を主張する狙いで、ここから前例を離れた二人の将棋が始まりました。
斎藤八段がリードも混戦に
攻めの継続を図る斎藤八段は桂を犠牲に後手陣を乱します。手番を渡された増田六段はここで熟慮に沈みました。2時間の長考のすえに指した増田六段の受けは先手の飛車の位置を乱して次の桂の両取りに期待した手順でしたが、これにかまわず銀をぶつけていったのが好手で斎藤八段が攻めながらペースをつかみました。
受けていてもきりがないと見た増田六段はここから攻め合いに転じます。形勢をリードする斎藤八段は自然に応じて駒得を重ねますが、増田六段の金打ちの受けに対して飛車を見捨てて攻めに出たのがやや危険な指し方でした。この直後、後手からの飛車の打ち込みに対して金を逃げるようでは変調で、攻めの要の金を抜かれては斎藤八段に攻め駒不足の懸念が出てきました。
立て直して斎藤八段が勝利
一度は形勢を互角に戻された斎藤八段ですが、粘り強く指してふたたびペースをつかむことに成功します。攻められた玉を上部に逃げ出しつつ、敵陣に打った飛車を竜にしながら自陣に引きつけてまで「中段玉寄せにくし」の局面を作り出したのが奏功しました。このあとも増田六段からの猛攻を受けた斎藤八段の玉ですが、なんとか敵陣への入玉を果たしたところで斎藤八段の優勢があらためて確立しました。
終局時刻は22時16分、最後は圧巻の即詰み手順で増田六段の玉を討ち取った斎藤八段が二転三転の熱局を制しました。勝った斎藤八段は3回戦に進出。次戦で藤井猛九段-豊島将之九段の勝者と対戦します。
水留啓(将棋情報局)