4月3日にスタートするNHK連続テレビ小説『らんまん』の主人公のモデルとなった植物分類学の世界的権威・牧野富太郎博士の植物標本写真作品を軸としたアートプロジェクト「MAKINO Botanical Art Project」が立ち上がった。
発起人を務める写真家の菅原一剛氏は、牧野博士の植物標本の生命感に感銘を受け、撮影した写真は、牧野博士の生誕160年の誕生日である2022年4月24日発行の高知新聞の朝刊を、記事全体をくるむラッピングという形で飾った。
「MAKINO Botanical Art Project」では、菅原氏の写真を通して、牧野博士が残した標本や植物そのものの美しさや生き様を伝え、博士が晩年まで抱きつづけていたという、平和を願う心を広く伝える活動を展開。2月20日には、菅原氏が撮影した、牧野植物園所蔵の植物標本41点の写真を収めた写真集『MAKINO植物の肖像』が出版される
撮影は、人物のポートレイト撮影のように照明セットを組んで、1億5千万画素(15K)のデジタルカメラを用いて実施。高知県立牧野植物園に並べられた植物標本を1点1点セッティングして撮影していくたび、高精細かつ立体的にその表情を映し出された標本たちの姿に、関係者の感嘆の声が漏れたという。
また、東京・渋谷PARCOで開催される「牧野植物園がやってきた展。」(2月1日~3月5日、主催:ほぼ日刊イトイ新聞)に、写真集に収めた標本写真のうち8点を出展。全国の植物園、牧野博士ゆかりの施設、美術館での企画展も開催予定だ。
さらに、ポッドキャストで「マキノラジオ」スタート予定(開始時期調整中)。菅原を中心とし、今回撮影した植物標本の解説をはじめ、牧野博士や植物に詳しい各界の人々をフィーチャーし、それぞれの視点で植物愛を語るラジオを配信する。
菅原氏は「牧野富太郎博士の標本には、他の植物学者のものとは異なる美しさと生命感があり、美意識すら感じます。標本は現在、植物学という学問のための貴重な資料として大切に保管されていますが、ぼくは博士の標本ひとつひとつの美しさを、肖像写真を撮るかのような眼差しでもう一度光を当て蘇らせたいと願いました。それを、今回ご協力いただいた藤川研究員、竹内一氏(高知新聞)は、新しいボタニカルアートと称してくれました。その写真が、博士の生誕160歳の誕生日に高知新聞をピンク色に染め、博士の平和に対するメッセージとともに高知の16万世帯に配布されるという企画が実現したとき、この活動はこれで終わらせず、続けていくべきだと確信しました。残念ながら、いまだに戦争は続いています。コロナ禍も収束はしていない中、誰もが平和の大切さ、日常の大切さを強く感じているはず。牧野博士は、植物を見つめながら、人々や世界の平和を願っていました。サクラ色の新聞に載せた博士の言葉を、ぼくの標本写真とともに、広く伝えていくこと。それは、ぼくにとって新しい試みであり、ぼくたちなりのささやかな平和運動です。この活動が人々の心に何かを残すことを願って」とコメントしている。