iOS 16.3が公開され、日本でもiCloudの「高度なデータ保護」を利用できるようになりました。名称の響きからすると、安全性が向上した印象を受けますが、何がどのように変わったのか、従来方式から変更することによってデメリットはあるのかは気になるところです。
iCloudにおける高度なデータ保護とは、「エンドツーエンドの暗号化」を指します。一般的にエンドツーエンドの暗号化とは、あるデバイスで暗号化したデータを送信先でしか復号できないようにすることで、対応する暗号化キーがないかぎり復号されません。iCloudの場合、暗号化キーを保管できる端末はユーザ本人が信頼したデバイスに限定され、Appleですら保管できないため、高度なデータ保護が実現されます。
一方、iCloud標準のデータ保護方式ではAppleもデータを復号できます。パスワードを忘れたときの対応など、必要なときにはユーザに代わりAppleが復号できるのです。Apple IDでサインインすれば、写真やメモなどのデータにアクセスすることも可能です。
iOS 16.3で『設定』→「Apple ID(自分の名前)」→「iCloud」→「高度なデータ保護」の順に画面を開き、「高度なデータ保護をオンにする」をタップすると、従来は標準のデータ保護方式だったiCloudに保管されるデータ種(メモ、写真、リマインダーなど)がエンドツーエンドの暗号化に切り替わります。
「高度なデータ保護」に対応するシステムはiOS 16.2以降とiPadOS 16.2以降、macOS 13.1以降です。それ以前のシステムではデータにアクセスできなくなるため、事前にシステムを最新版にアップデートしておきましょう。
ユーザ本人のセキュリティ意識も求められます。アカウント(Apple ID)が利用不能に陥ると、メモや写真といったiCloud上のデータにアクセスできなくなるため、パスコードの管理はもちろん復旧用連絡先の登録や復旧キーの作成など、万一に備えた準備を整えておかなければなりません。