名古屋大学(名大)と東京大学(東大)は1月25日、室温を含む幅広い温度領域において、磁場を加えることで体積が大きく膨張する新材料として、「Cr3Te4」と「Cr2Te3」の化学組成を持つクロムテルル化物の焼結体を発見したと発表した。
同成果は、名大大学院 工学研究科の窪田雄希大学院生、東大 物性研究所(物性研)の岡本佳比古教授、名大大学院 工学研究科の兼松智也大学院生(研究当時)、物性研の矢島健助教、名大大学院 工学研究科の平井大悟郎准教授、同・竹中康司教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、米国物理学協会が刊行する応用物理学全般を扱う学術誌「Applied Physics Letters」に掲載された。
物体に磁場を加えた際に形状や体積が変化する「磁歪(磁場誘起歪)」は、強磁性体では一般的に起こる現象だが、一般的な強磁性体における磁歪の大きさの変化の割合は、せいぜい100万分の1~10万分の1ほどとされており、そのメカニズムは、主に強磁性磁区の磁場による整列により生じることがわかっている。
こうした磁歪を起こす物質の中には、変化の割合が1000分の1を超える「超磁歪材料」もあり、それらは大きく高速な磁場応答により変位や駆動力を得る「磁歪アクチュエータ」としてすでに実用化されているほか、有害な鉛を含む「チタン酸ジルコン酸鉛」が使われている圧電効果を用いたアクチュエータの代替え材料となることも期待されているという。
そうした中で研究チームは今回、従来とは異なる発現機構に基づく超磁歪材料を探すため、反強磁性体になりやすいことから磁歪材料としてほとんど注目されていなかったクロムを含む磁性体のCr3Te4とCr2Te3にあえて注目し、その特徴を調べることにしたとする。