実験では、ポリプロピレンを帯電させたところ、表面のSFGスペクトル強度が表面電位に応じて強くなっていく現象を観測することに成功したとする。また、電界誘起効果によるSFG信号増加は、有機デバイスや水溶液中での電極界面、電解質溶液界面などでは報告があったが、今回の実験では、静電気による電荷が作り出す電界によって電界誘起効果が生じることが示されたとする。

さらに、ポリメチルメタクリレート(PMMA・アクリル樹脂)の上に、有機薄膜としてステアリン酸アミドを薄く塗布した試料を用いて帯電によるSFGスペクトルが調べられたところ、帯電によって、有機薄膜で覆われている内側のPMMAに由来するSFGの信号強度が増加していることが判明したとする。これは、試料の帯電によって表面に存在する電荷に由来する電界が、有機薄膜に留まらず、下地となっているPMMA試料の内部にまで広がっていることを示していると研究チームでは説明している。

加えて、帯電によるSFG信号強度の増加を利用し、ポリプロピレンを部分的に帯電させた際の表面の状態について、2次元マッピングの取得にも挑戦することにしたという。ポリプロピレンの試料の一部をガラスで覆い、帯電させた後にガラスを取り除いてマッピングが行われたところ、ガラスで覆われていなかった部分ではSFG信号が顕著に強くなっており、微小な領域(~0.3mm)での不均一な帯電を見分けることに成功したとする。

  • ポリプロピレン表面を部分的に帯電させた時の概要図

    (左)ポリプロピレン表面を部分的に帯電させた時の概要図。(右上)部分的に帯電させたポリプロピレンの面内マッピング(6mm×6mm)。(右下)右上の試料を一晩放置した後に測定された面内マッピング(出所:千葉大プレスリリースPDF)

また、この帯電した試料を一晩放置した上で再度の測定が行われたところ、表面電位では0Vを示しているにも関わらず、SFGの面内マッピングイメージではわずかに帯電が残っていることが確認できたとのことで、研究チームでは、SFG分光が表面にごくわずかに残っている静電気でもその影響を検出できることを示しているとしている。

なお、研究チームでは、表面に存在する分子の構造や状態を高感度で調べることができるSFG分光法を用いることで、長い間の謎であった分子レベルでの帯電の起源や帯電列の序列の謎に迫ることが期待されるとしており、今後、材料の違いによる帯電特性の違いや、摩擦、接触帯電の起源、メカニズムに迫ることを目指すとしている。