東北大学は1月24日、天然ゴムなどの弾性体伸縮時の発熱・吸熱現象の「弾性熱量効果」に着目し、この現象を用いて高温領域と低温領域を作り出すことにより、冷却機構の高効率化に成功したことを発表した。
また、性能向上についての検討も行い、弾性体の配置を最適化し、その熱量効果を有効に利用することで、成績係数(COP)が6以上となることを明らかにしたことも併せて発表した。
同成果は、東北大 流体科学研究所(IFS)のGiulia Lombardi研究員(日本学術振興会外国人特別研究員)、フランス国立応用科学院リヨン校のGael Sebald教授、同・Jacques Jay教授、同・Laurent Lebrun教授、同・Gildas Coativy研究員、IFSの小宮敦樹教授らの研究チームによるもの。詳細は、熱プロセスに関する全般を扱う学術誌「Applied Thermal Engineering」に掲載された。
現在の冷媒を用いた冷却機構は電力消費が大きく、冷房や冷蔵における消費電力は全体の約20%を占めるに至っており、今後も消費が増すものと推測されている。かつてのフロンに比べて現在のものはオゾン層への影響などは抑制されているが、それでも冷媒は環境への影響が懸念されており、こうした冷媒を用いない新たな冷却機構の実現が強く望まれている。
そこで注目されているのが、磁性体や弾性体といった「カロリー材料」と呼ばれる物質を利用した新たな冷却機構だという。同方式は冷媒を用いない点からも期待されているが、その課題は出力が小さく、実用化が困難であるという点だという。
そうした中、冷媒を用いない手法として、弾性熱量効果を利用した冷却機構が、原理的に実現可能であることを明らかにしたのが研究チームだという。弾性熱量効果とは、ゴムのような弾性体の形状が急激に変形する際に、変形前後のエントロピーの差に相当する発熱や吸熱が起こる効果のことをいう。そこで研究チームは今回、弾性熱量効果を利用した冷却システムの実現に向け、熱輸送の観点から高効率で低温領域を取得できる条件について検討し、その実証実験に取り組むことにしたという。