超低金利が続き日本円での運用実績が伸び悩む中で、より効率的な外貨建ての投資に興味を持っている人が増えてきました。外貨建ての投資とは、外国の通貨を使って金融商品の運用を行う事です。この外貨建て投資の中でも初心者でも始めやすいものとして注目されている商品が、外貨預金と外貨MMFです。今回の記事では外貨預金と外貨MMFの違いを詳しく解説していきますので参考にしてください。

外貨投資の方法として

「外貨預金」と「外貨MMF」は、冒頭でも触れたように外貨投資の代表的な金融商品です。

この二つについて詳しく説明する前に、まず外貨投資について解説します。

【外貨投資とは】
日本円を外国の通貨に換金して運用を行う投資手法。換金する通貨は大きく分けて「米ドル・ユーロ」などの先進国通貨と「香港ドル・シンガポールドル」などの新興国通貨に分類され、いずれも「金利差」や「為替差益」を考慮した利益を狙う運用を行うことが一般的です。

※外貨投資において「金利差」と「為替差益」が利益を生み出す仕組みは次の通りです。

①金利差
日本の金利より、高い金利を適用している外国の通貨建てで運用を行い利益を得る方法。
◆例:「1ドル=100円」時に100万円を「日本円の金利1%」「 米国ドルの金利5%」でそれぞれ1年間運用した場合の利子の違いは次の通り。
・日本円の利子→10,000円
・米国ドルの利子→500ドル(日本円で5万円)
・差額→40,000円※米国ドルの方が日本円より受け取る利子が多くなる
※為替レートを省き、「1ドル=100円・金利1%と5%」として計算

②為替差益
為替レート(通貨の交換比率)の変動を利用した外貨購入時と円払戻時に出る差額で利益を得る方法。
基本的には、円高時に外貨預金を行い円安時に払戻を行う事で「為替差益が発生」する。
◆例:円高時に預け入れ、円安時に払戻を行う時の「為替差益」は次の通り。
・円高時に預け入れ→「1ドル=80円」
・円安時に払戻し→「1ドル=140円」
・差額(利益)→60円(=140円-80円)
※「1ドル=○○円」にて表し、為替手数料等の計算は省いてます。

長期的に超低金利が続いている日本では、上記の2つの利益を狙い運用効率を上げる「外貨投資」を行う人が増えてきました。

その外貨投資の中でも、低リスクかつ低費用で始める事が出来る特徴を持つ「外貨預金」と「外貨MMF」が投資初心者から注目を集めているのです。

外貨預金とは

日本円の金利よりも高い利率を適用している外国の通貨を用いて、預金を行い「金利差」や「為替差益」による利益を狙う運用方法を外貨預金と言います。

日本の銀行の普通預金の平均金利は「0.001%程度」で、100万円を1年間預金口座で運用しても10円程度しか利息はもらえません。この状況を考えると、1%を超える好金利の通貨も存在する外国に目を向けて預金をする事は当然と言えます。

外貨預金の特徴として、外貨としては元本割れのリスクが無いという事があります(為替変動や手数料での元本割れの可能性はあります)加えて、金融機関によっては1,000円程度から始める事が可能で、初心者にとって低リスクで始めやすい外貨投資として注目されています。

外貨MMFとは

「外貨マネー(Money)・マーケット(Market)・ファンド(Fund)」の頭文字を取って表される「外貨MMF」とは”外貨建ての投資信託”です。

一般的にアメリカドル・ユーロドル・豪ドルなどの外国の通貨建てで運用する金融商品です。

投資信託である外貨MMFでは、「運用実績に応じた分配金(金利)」「為替差益」が利益となります。また投資信託であるため、その利益を再投資し”複利効果”で利益が増えていく事を期待できる点も特徴です。

基本的には、格付けの高い短期証券や国債など安全性を重視した元本割れの低リスクの商品を中心として運用されています。

加えて、売買手数料が無料な点、金融機関によっては1,000円程度から始められる点、解約もいつでも出来る点から、低リスクかつ手軽に始められる外貨投資として、投資初心者からも注目を集めています。

外貨預金と外貨MMFの違い

この2つには多くの違いがありますが、一番の違いは外貨預金では預入時に金利が決まっているのに対して、外貨MMFでは投資後でなければどれだけの金利(利回り)で運用できるかが分からないという点です。

このように、投資要素が比較的大きくリスクがある「外貨MMF」の方が収益が大きくなりやすいという違いもあります。

他にも、為替手数料や様々な違いを次の表にまとめましたので確認してください。

【外貨投資と外貨MMFの違い】

比較項目
外貨預金 外貨MMF
為替手数料
※米ドルの場合
1ドルにつき1円必要
往復で2円の手数料
※銀行により違い有
1ドルにつき50銭
必要往復で1円の手数料
※証券会社により違い有
保有期間中に必要な費用 費用必要なし 運用報酬として間接的に管理報酬や監査費用等が必要
運用収益 ・適用される金利差による利息
・為替レートによる為替差益
・運用実績による分配金
・為替レートによる為替差益
税金 ・利息に対して20.315%「所得税および復興所得税15.315%,住民税5%」が徴収される
・為替差益は雑所得としての申告が必要になる
・分配金に対して20.315%「所得税および復興所得税15.315%,住民税5%」が徴収される
・為替差益は申告分離課税の対象となる
主なリスク ・為替変動リスク
・信用リスク(預金管理金融機関)
・為替変動リスク
・信用リスク(組入有価証券発行体)
・価格変動リスク
・金利変動リスク
資産保護 預金保険の対象外となり資産保護なし 分別管理のため万一金融機関が破綻しても外貨建てMMFは保全保有される
※取扱いを行う金融機関に問い合わせ必要

この中でも、特に注意しておきたい違いが「為替手数料」「保有期間中に必要な費用」「運用収益」「主なリスク」「資産保護」です。

これらは、「預金」と「投資信託」という投資方法の違いによる違いが現れている部分ですので、しっかりと確認するようにしましょう。

おすすめは?

外貨預金と外貨MMFのどちらがおすすめかは、実際に外貨投資を行う人の目的やタイプによって分かれます。

【外貨預金】
元本割れのリスクなどを極力冒したくないが、少しでも資産が増える投資を行いたいと考える、より安全な方法を好む人

【外貨MMF】
元本割れのリスクを踏まえても、好利回りが期待できる商品を運用して分配益を含めた利益を得たいと考える、より積極的な方法を好む人

外貨預金、外貨MMFのどちらも金融投資という観点から考えると比較的リスクの低い方法となります。

しかし、外貨預金の金利は各銀行はキャンペーンで初期の金利だけ高めに設定されている事が多々あるので注意が必要です 。

この点を踏まえて、自分自身の目的やタイプに合う方法を選択するようにしましょう。 その際は、上述した2つの外貨投資の違いと、具体的な数字を用いたシミュレーションを忘れないようにしてください。

まとめ

このように同じ外貨投資という枠に入っている「外貨預金」と「外貨MMF」でも詳しく見ていくと、沢山の違いが存在します。今後も超低金利が続く事が予想される日本では、益々外貨投資へ目を向ける人が増えてくるでしょう。その際に、「外貨預金」と「外貨MMF」が実際に行う投資の手法の一つになる事も大いに考えられるので、ぜひ今回の記事を参考にしてください。また、外貨投資はあくまでも投資で、リスクがありますので自分一人で始める事が不安な人は「人生と投資のアドバイザー」であるファイナンシャルプランナーに相談することをおすすめします。

この記事を執筆したファイナンシャルプランナー

小峰一真(こみねかずま)
所属:株式会社マネープランナーズ
2級FP技能士/証券外務員2種/住宅ローンアドバイザー| 明治大学政治経済学部卒業

大手国内証券会社、外資系保険会社を経て、前職では独立系FP事務所に創業から携わっていました。 資金計画作成、住宅購入相談、資産運用、保険相談など全般的に得意で、セミナー講師も担当しています。 趣味はゴルフと読書、スポーツ観戦(横浜Fマリノス、明治大学ラグビー部を応援!)です。