フジテレビでは、1月クールの連続ドラマにおいて、TVer・FODでの「解説放送版」の配信を、初めてGP帯全3作で実施している。

  • (左から)『女神の教室~リーガル青春白書~』北川景子、『スタンドUPスタート』竜星涼、『忍者に結婚は難しい』菜々緒

    (左から)『女神の教室~リーガル青春白書~』北川景子、『スタンドUPスタート』竜星涼、『忍者に結婚は難しい』菜々緒

「解説放送」は、主に視覚障害の人々に番組を楽しんでもらうための放送。場面設定や出演者のアクションなど、セリフだけでは伝えきれないト書きや情景描写をアナウンサーが補完解説するナレーションが入っている。

同局のドラマで地上波放送の実績はあったが、前クールに放送された『silent』で、初めて配信の「解説放送版」を実施。すると、「予想以上に視聴されたこと、ならびに視聴者からの声で、解説放送版のキャッチアップ(見逃し)動画を配信していることが大変嬉しかったという感謝の声を、本来のユーザーである視覚障がいをお持ちの方以外からも驚くほど多くいただきました」(担当者)と、大きな反響があった。

それを受け、「制作側で対応できる場合は、視聴者のニーズに応えたいということもあり、収録や編集、納品スケジュール等の折り合いがつけば、可能な限り解説放送版も配信していくという姿勢で臨むことになりました」(同)と方針を決定。1月クールの『女神の教室~リーガル青春白書~』(毎週月曜21:00~)、『スタンドUPスタート』(毎週水曜22:00~)、『忍者に結婚は難しい』(毎週木曜22:00~)のGP帯連ドラ全3本(※月曜22時『罠の戦争』はカンテレ制作)で、通常版に加え、「解説放送版」を配信している。

全11話の見逃し配信再生数累計で6,191万再生(※TVer、GYAO!、FODの合計値)という記録を叩き出すなど社会現象を巻き起こした『silent』。“聖地”小田急線世田谷代田駅の乗降客が大幅増になり、ユーキャンの「手話入門講座」受講申込数が放送前→後で約2.5倍に伸びるなど、様々な波及効果があったが、このように誰もが作品を楽しめる環境づくりにも一役買っていたのだ。

1月24日現在、フジ以外にTVerでドラマの「解説放送版」配信しているのは、『星降る夜に』(テレビ朝日、毎週火曜21:00~)と『夕暮れに、手をつなぐ』(TBS、毎週火曜22:00~)の2作品だが、この流れは各局にも広がるのか。

総務省では、テレビ放送での視聴覚障害者や高齢者に配慮した「字幕放送」や「解説放送」などの普及を促進。聴覚障害者に向けた「字幕放送」の普及目標対象番組における実施割合(2021年度)は、NHK総合(※埼玉・千葉・東京・神奈川)と民放キー局でいずれも100%に達したが、これに対して「解説放送」はNHK総合で15.2%(前年比-1.5ポイント)、民放キー局で17.6%(同+0.9ポイント)にとどまっている。