「由々しき事態」は意味があいまいになりやすい日本語のひとつです。何となく理解していても、実際にビジネスや正式な場で使う場合は、どの程度の問題について使えばよいかわからず困ってしまうかもしれません。この記事では、「由々しき事態」の意味や由来、別の言い方、英語表現について例文とともに解説します。
「由々しき事態」の意味とは
由々しき事態の意味は「放っておくと大変なことになる様子」です。以下で意味を詳しく解説します。
そんなにたやすくはない
「たやすくない」とは、何かが困難であり楽にはできない様子です。つまり「由々しき事態」は、それほど簡単には問題が解決できない事態を示しています。
かなり大変
「由々しき事態」では、かなり大変な問題が起きています。例えば、大規模災害のように問題の程度がはなはだしい場合は、簡単に解決ができません。
重大である
「由々しき事態」は、直面する問題自体がとても重大な場合を表します。少子高齢化対策など軽々しく扱えない事態の場合、状況を重く受け止めたうえで、正しい分析と熟慮が欠かせません。
「由々しき事態」の読み方
「由」の字は、「由来(ゆらい)」「由緒(ゆいしょ)」「理由(りゆう)」「由(よし)」という読み方があります。「由」の字がそれぞれ「ゆ」「ゆい」「ゆう」「よし」と読まれるため、「由々しき」の部分をどう読めばよいのかがわかりづらく不安になることがあるかもしれません。
この「由々しき事態」の読み方は「ゆゆしきじたい」です。「ゆうゆうしきじたい」「よしよししきじたい」などは誤りなので、正しい読み方を覚えておきましょう。
「由々しき事態」の由来とは
「由々しき」は「由々しい」と同じ意味の言葉です。「由々しき」の「しき」とは、「由々し」を文語形容詞として活用したもので、やや古い表現として使われています。
例えば、「美しき人生」などの言い方を見たことがあるかもしれません。この場合の「美しき」と「美しい」は同じ意味の言葉で、「由々しき」と「由々しい」も同じ関係です。
「由々しい」の語源は「神聖、恐れ多いこと」という意味がある「ゆ」を重ねた言葉です。「由々しい」の意味は幅広く、以下のように特別なもののことを表しています。
・神聖で恐れ多い
・程度がはなはだしい
・不吉である
・すばらしい
・美しい
・恐ろしい
「由々しき事態」の関連語との違い
ここでは、「由々しき事態」の「由々しき」に着目して関連する言葉を紹介します。
「由々しき」と「忌々しき」の違い
「由々しき」を調べると「忌々しき」という表記が加えられている場合があります。実は「由由」と「忌忌」は本来同じ意味の言葉で、どちらも「ゆゆしき」と読みます。しかし「忌々しき」を「ゆゆしき」と読むのは常用漢字音訓表にはありません。
時代を経るなかで「忌忌し」を「いまいまし」と読むことが増え、現在は「腹立たしくてしゃくにさわる感じ」を指す「忌ま忌ましい」という意味で使われるのが一般的です。
「由々しい」と「由由し」の違い
「由々しい」と「由々し(よしよしし)」は大きく見ると同じ言葉です。
「由々しい」が現代の形容詞の終止形なのに対して、「由々し」は古文の形容詞終止形の表現です。「由々しい」と同じく「由由し」には「由緒ありげである」「いかにも風情がある」という良い意味と「不気味」「不吉」というあまり良くない意味があります。
「由々しき事態」が使われるシーンと例文
「由々しい」は、文章語であり、普段使われる言葉のなかでも話し言葉よりも書き言葉で使われます。例文を見ていきましょう。
・会社が倒産しかねない由々しき事態だ
・戦争が続くことは国家の興亡にかかわる非常に由々しき事態だ
「由々しき事態」の別の言い方と例文
ここでは、由々しき事態の意味に近く、状況により言いかえの余地がある表現を関連語として紹介します。問題などを容易に解決できそうもない状況や悪い影響をもたらすようなものごとを示す表現に悩んだ際に参考としてください。
ただならぬ
「ただならぬ」とは「普通ではない」という意味です。「ただならぬ」は、「ただならない」の古文用法である「ただならず」が連体形になった表現です。
・ただならぬ事態に頭が真っ白になった。
・ただならぬ雰囲気に圧倒された。
不測の事態
「不測(ふそく)」とは、「思いがけないこと」「はかり知れないこと」など、予測できないことを指す言葉です。
・不測の事態により緊急会議が行われた
・不測の事態を避けるために警備が強化された
憂慮すべき事態
「憂慮(ゆうりょ)」には、「心配」「思いわずらう」という意味があります。「憂」は「物事が思いのままにならないことを嘆いて嫌がる気持ち」や「人を憂の気持ちにさせるものごと」を表します。
・機器の故障は憂慮すべき事態だ
・憂慮すべき事態を踏まえて慎重に検討を重ねた
深刻な情勢
「深刻」は「事態がかなり大変な状態まできている」ことです。事態を重く受けとめて、思いわずらうことを表現しています。また、「情勢」は「変化していくものごとにおいて、そのときどきの様子」を表します。
・消費者の意識の変化は極めて憂慮すべき情勢だ
・憂慮すべき情勢を踏まえて緊急対策を検討する
重大な局面
「局面」は、将棋や囲碁などの盤面を指すこともありますが、「重要な局面」とは「物事のなりゆき」を示しています。新しく状況が変わる場合には「新たな局面を迎える」などのように使います。
・信頼関係の構築にかかわる重要な局面にある
・来期に向けて重大な局面を迎えている
厳しい現状
「厳しい現状」とは、先が見通せない困難な状況にいて、問題を切り抜けるような場面に使われます。一致団結して前向きに進みたい場合などに使われます。
・厳しい現状を乗り切るため、社内一丸となり取り組んでまいります
・厳しい現状に追い込んだ原因を分析する
余程の一大事
「余程」とは何かが度を越えている状態で、「一大事」とはあるひとつの大切な事柄です。大切なことが一定の度合いを超えていれば見過ごせないでしょう。よほど重要な事態だといえます。
・それは余程の一大事だ
・あれほど慌てるのだから、余程の一大事に違いない
大変な問題
「由々しき事態」に比べると軽い印象があるかもしれませんが、「大変な問題」も「由々しき事態」と似た状況を表しています。
・大変な問題が起きて途方に暮れる
・大変な問題をどうにか解決に導いた
「由々しき」を用いたその他の単語と例文
ここでは、「由々しき事態」の「事態」の部分だけを言い換える表現についてご紹介します。「事態」は、「緊急事態」「非常事態」など物事の状態やなりゆきを指します。異なる表現にした場合におけるニュアンスの違いを例文で確認しましょう。
由々しき事件
「事件」は、「窃盗事件」「集団食中毒事件」など、話題や問題になるようなできごとを意味する言葉です。
・由々しき事件の発生を厳粛に受け止める
・非難されるべき由々しき事件だと捉える
由々しき出来事
「出来事」は、「ある夜の出来事」「一瞬の出来事」など、身の回りや社会でふいに起こったことを指します。
・予測を超える由々しき出来事が起きた
・政権交代につながる由々しき出来事があった
「由々しき事態」の英語表現
「由々しき事態」の英語表現は「serious situation(深刻な事態)」「grave consequences(重大な結果)」などです。
It will be regarded as a very serious situation. (非常に深刻な事態とみなされます。)
The fact has serious consequences. (その事実は重大な結果をもたらす。)
「由々しき事態」は放っておけないときに使う言葉!
「由々しき事態」は「放っておくと大変なことになる様子」という意味があります。比較的文章で使われる傾向があるものの、ビジネスシーンなどでよく使われる言葉のひとつです。言葉の持つ意味や使い方がわかると困ったときに活かせるでしょう。