研究チームによると、今回の成果は、今まで理解が乏しかった、ホログラフィ原理における時間軸の創発という問題に対する重要な進展といえるとした。また、擬エントロピーは空間的測地線に相当する実数部分も持ち、その実数部分にも物理的な解釈を与えることができたという。さらに、時間的測地線と擬エントロピーの虚数部分の関係が従来のAdS/CFT対応の枠内でも、実は見出せることが示されたとする。

宇宙の誕生と共に時間という概念自体が生まれる過程を、物理学の理論的立場で解明することは大変重要と考えられている。今回の研究では、主に3次元ドジッター宇宙や反ドジッター宇宙を具体例にとって「時間とは何か」という問題に挑み、ホログラフィ原理を量子情報理論の観点から考察することで、『時間軸が擬エントロピーの虚数部分から創発する』という重要な手がかりが得られたとする。

加えて研究チームは、今回と同様の結果は高次元の宇宙においても少なくとも部分的には成立することが、今回の研究でも明らかにされたとしており、これに関しては今後、より完全な解析を行う予定とした。

また、誕生したばかりのプランク長サイズの宇宙では、量子重力効果が強いため、一般相対性理論のように幾何学で扱うことは難しい。しかし擬エントロピーを用いることで、定量的な記述ができるようになることが期待されるという。同チームはこのような観点で量子重力理論にアプローチし、宇宙創生のメカニズムを解明することを考えていくとした。