物語や会話の中に時折登場する「寝耳に水」。何となく驚きを意味する慣用句であることは理解しているものの、くわしい意味や由来などまではわからない方も多いでしょう。
本記事では「寝耳に水」について、意味や類語、英語表現について解説。あわせて「寝耳に水」に似たことわざと例文もまとめました。
「寝耳に水」の意味と使い方を正しく理解して、さらに知識を深めましょう。
「寝耳に水」の意味とは
「寝耳に水」とは「思いがけない出来事あるいは知らせを受けて驚く」こと。「寝耳に水の入るごとし」を略した慣用句です。
由来は就寝中に聞こえた水の音
「寝耳に水」の由来は「城中は寝耳に水の入りたるごとく驚き給えり」です。豊臣秀吉の伝記『太閤記』の一節で、就寝中に発生した洪水による激しい水の音が聞こえた様子を表しています。寝ている間に洪水の発生を伝える声を耳にした様子とする意見もあるようです。
就寝中に水、つまり洪水のような想定外の出来事を知り、驚いたことから「寝耳に水」が誕生したといえるでしょう。
耳に水が入ったことが由来との説も
「寝耳に水」の由来には、本当に水が耳の中に入ったことであるとの解釈もあります。基とされるのは『太閤記』などの一節にある「寝耳に水の入りたるごとし」。文章をそのまま、寝ているときに耳に水が入ると理解したことから生まれた説です。
使い方は物事の良し悪しを問わない
意味を踏まえて「寝耳に水」を使用するとなると悪い出来事が対象であると思われがちですが、実は別。「寝耳に水」はいい出来事に対して使っても問題ありません。何か出来事や知らせに直面し、驚いたときに「寝耳に水」で気持ちを表現するのが適切な使い方です。
「寝耳に水」の類語表現-慣用句・ことわざ-
「寝耳に水」には似た意味をもつ慣用句やことわざが複数存在します。表現力を養うためにも覚えておきましょう。
足下から鳥が立つ(あしもとからとりがたつ)
「足下から鳥が立つ」の意味は「身近で予想外な出来事が起こる」こと。他にも「突如思い立ち、慌てて行動を起こす」ことの意味で使われることもあります。
虚をつかれる(きょをつかれる)
「虚をつかれる」の意味は「想定していない事態に戸惑う」こと。無防備な状態で聞いた知らせなどに驚いたときに使用する慣用句です。
青天の霹靂(せいてんのへきれき)
「青天の霹靂」の意味は「突如発生した事件や、状況の変化」のこと。「突発的な衝撃」との意味もあります。「寝耳に水」同様、対象となる事件や状況などの良し悪しは問いません。
窓から槍(まどからやり)
「窓から槍」の意味は「突然の出来事」。「想像していない出来事」に対しても用います。
藪から棒(やぶからぼう)
「藪から棒」の意味は「唐突に物事を行うさま、物事が唐突に起こる」こと。直前の行動や話の流れとは何の脈絡もなく、突如として他人が起こす動作などに使用します。
字面が似ている慣用句として知られる「藪から蛇(やぶからへび)」の意味は「不要な行為で災いを招く」ことです。間違えやすいので注意して覚えましょう。
「寝耳に水」の類語表現-形容動詞・副詞-
「寝耳に水」を理解するのであれば、意味が似通っている形容動詞と副詞も頭に入れておきましょう。複数の言い換え表現を知っておくと、さらに表現力が豊かになりますよ。
思いがけず
「思いがけず」は「予期していなかったのに」との意味で使われる副詞です。「思い掛けず」と表記することもあります。
急遽(きゅうきょ)
「急遽」を形容動詞として使用する場合の意味は「いきなり物事が起こる様子」です。副詞としての「急遽」には「慌てるように物事を実施するさま」との意味があります。
突発的(とっぱつてき)
「突発的」は「事件などの物事が急に起こる」ことを意味する形容動詞です。事故が発生したときにも使用します。
図らずも(はからずも)
「図らずも」は「思いもかけず」との意味合いをもつ副詞です。意外な状況で使用されます。
予想外(よそうがい)
「予想外」の意味は「あらかじめ想像していた内容とは異なる成り行きになる」ことや様子です。思った以上の出来事が起こった際に使用します。
「寝耳に水」の対義語
「寝耳に水」に類語表現があるように、対の意味をなす言葉も当然存在します。あわせて覚えておきましょう。
石に灸(いしにきゅう)
「石に灸」とは「効果がない」ことを表す比喩表現です。同様の意味をもつ言葉として「石に針(いしにはり)」などがあります。
蛙の面へ水(かえるのつらへみず)
「蛙の面へ水」とは「あらゆる仕打ちを受けても動じない、平気である」ことの意味です。顔に水をかけられても蛙は平気であることに由来しています。「蛙の面に小便(かえるのつらにしょうべん)」も同じ意味です。
「寝耳に水」の使い方と例文
文章や会話などで「寝耳に水」を使用するには、正しい使い方を理解する必要があります。例文とともにみていきましょう。
驚いたときに使う
「予想だにしない出来事に驚く」との意味をもつからこそ、「寝耳に水」は何かに驚いた際に用いるのが一般的です。対象となる出来事の良し悪しは関係なく、驚きの表現として広く使われます。
いい出来事への使い方
「寝耳に水」は自分だけでなく、他者に対するいい出来事にも使用できます。
・彼が難関校に見事合格したことは、親戚にとって寝耳に水だったに違いない。
・働き始めてからさほど経っていないため、昇給の話はまさに寝耳に水だった。
悪い出来事への使い方
いい出来事同様、他者に対する悪い出来事にも「寝耳に水」を使えます。
・業績がいいと思っていたからこそ、有名大手企業の倒産は寝耳に水だった。
・信頼していた社員が資金を着服した事実は、全社員が寝耳に水だっただろう。
「寝耳に水」の英語表現
「寝耳に水」は英語でも同様の表現ができます。例文を参考にしながらみていきましょう。
a bolt from the blue
「a bolt from the blue」はそのまま「寝耳に水」や「青天の霹靂」と訳せます。
・Her acceptance into a difficult university was a bolt from the blue.
(難関大学への合格は青天の霹靂=寝耳に水であった)
a bolt out of the blue
「a bolt out of the blue」は「青天の霹靂」の英訳です。類語として「寝耳に水」の英語表現と考えてもいいでしょう。
・The sudden visit of an old friend was truly a bolt out of the blue.
(旧友の突然の訪問は、まさに青天の霹靂=寝耳に水であった)
great surprise
「寝耳に水」を端的に表現するなら「great surprise」も有効です。シンプルな英語表現として覚えておいてください。
・It was a great surprise for me to set up his own company.
(彼が会社を興すとは、とても驚き=寝耳に水だった)
「寝耳に水」への理解を深めて正しく使おう
「寝耳に水」とは突然の出来事に対して、良くも悪くも驚いたときに用いる慣用句のこと。『太閤記』の一節が由来とされています。
同じ意味のことわざ・慣用句には「足下から鳥が立つ」や「青天の霹靂」など、さまざまな表現があるので覚えておきましょう。「突発的」「予想外」を含む形容動詞・副詞も「寝耳に水」と似た意味の言葉です。
「寝耳に水」を英語で表すときは「a bolt from the blue」「great surprise」などとするのが適切。知識として頭に入れておくと、英文作成が必要になったときに役立ちますよ。