クルマのサブスクリプションサービス「KINTO」が好調な様子だ。トヨタ自動車「プリウス」の取り扱いを開始したことが功を奏し、月間申し込み件数は過去最高を達成する勢いを示しているという。プリウスのKINTO専用グレードを渋谷で展示中と聞いたので、現地で取材してきた。

  • トヨタ「プリウス」の「Uグレード」

    「プリウス」人気でKINTOが絶好調?

生産計画は別建て、今なら納期は1.5カ月から

新型プリウスが月額1.661万円から――。KINTOの価格設定は衝撃的だった。HPで確認すると、この料金はコンパクトカーの「アクア」よりも安い。

新型プリウスにはKINTO専用の「U」というグレードが設定されている。KINTOではプリウス Uグレードで新サービス「KINTO Unlimited」を開始。この取り組みについては前に詳報した

  • トヨタ「プリウス」の「Uグレード」

    新型「プリウス」のKINTO専用グレード「U」。排気量は1.8L、燃費は驚異の32.6km/Lだ。月額1.661万円で乗るには2WD/標準内装仕様、最安値パッケージ、追加オプションなし、初期費用フリープラン7年契約、ボーナス月加算16.5万円という条件があり、7年間の総支払い額は370.524万円となる。普通に買って7年乗るのとKINTOで乗るのとでは、結果的にどちらが安いのか。KINTO担当者は「かなり攻めた価格にしていますし、お値打ちな設定になっていると思います」と話していた

プリウス Uグレードには将来のアップグレードに備え、ハードを後付けするための施工作業の大部分を前もって織り込んでおく「アップグレードレディ設計」が施してある。自動車メーカーがサブスク専用グレードを用意することも新しい取り組みだが、クルマを作る際に原価が少し余計にかかる「予備工事」を行っておくというのも前代未聞の話だ。

クルマを購入する場合、どんなメーカーオプションを付けるかは購入時に選ぶのが普通なので、いろいろと不安になってついついオプションをてんこ盛りにしてしまったり、付けてはみたものの実際には使わないオプションがあったりと、無駄なことも多かった。プリウスのUグレードであれば、とりあえずオプションなしの素の状態で乗り始めても、「やっぱりあのオプションが欲しい」と思えば後付けできるのが利点だ。

後付け可能なオプションのメニューは第1弾が「ブラインドスポットモニター」「パノラミックビューモニター」「ステアリングヒーター」で、今後も増えていく見込み。アップグレードレディ設計により、オプションの後付けは全国のディーラーでやってもらえるし、施工時間も短くて済む。

クルマをアップグレードしていけば、クルマの価値の下落が抑えられる。つまり、何もしなかった場合よりも下取り価格が高くなる。KINTOユーザーは契約終了後、クルマを返却することになるので下取り価格アップの恩恵は受けられなさそうなものなのだが、KINTOではアップグレードによって生じる(はずの)価値の差額をユーザーに還元することで、月額料金を従来比10%程度抑えたという。

  • トヨタ「プリウス」の「Uグレード」

    KINTOは体験型ストア「b8ta Tokyo - Shibuya」(東京都渋谷区)にて2月12日まで新型「プリウス Uグレード」を展示中だ

  • トヨタ「プリウス」の「Uグレード」
  • トヨタ「プリウス」の「Uグレード」
  • Uグレードで選べるボディカラーは「アッシュ(新色、写真の色)」「ダークブルー」「エモーショナルレッドⅡ」「プラチナホワイトパールマイカ」「アティチュードブラックマイカ」の5色。せっかくサブスクで乗るのだから(購入しないのだから)、下取り価格への不安なしに新色「マスタード」(黄色)を選んでみたいと考えていた人には、少し残念?

  • トヨタ「プリウス」の「Uグレード」

    「U」グレードはホイールが専用のものとなっていたり、フェンダーの部分がピアノブラックで塗装されていなかったりなど、「Z」や「G」と比べれば外観に若干の違いはあるものの、他グレードとの差はほとんど感じなかった。「このホイールは少しスパルタンな感じで、走りが良くなった新型プリウスに似合っているのではないでしょうか」というのがKINTO担当者の意見だが、いかがだろうか?

  • トヨタ「プリウス」の「Uグレード」
  • トヨタ「プリウス」の「Uグレード」
  • 写真は上級内装仕様。体を左右から支えてくれるバケット状のシートになっている。ちなみに「Uグレード」には純正ナビも付いている

プリウスの取り扱いを開始した効果は絶大なようだ。KINTOでは「U」のほか、2.0Lエンジンを積む「Z」「G」もサブスクで乗れるが、全てのグレードで順調に受注が入っているとのこと。プリウス効果もあり、2023年1月の全体(全車種)申込み件数は2019年のサービス開始以降、過去最高となる見込みだという。

  • KINTOのアプリのでも画面

    KINTOでは2月6日にスマートフォン向けアプリをリリース予定。「KINTO Unlimited」利用者はアプリから欲しいアップグレードが選べたり、コネクティッド機能を活用した「ドライブトレーナー」などのサービスを利用できたりする。アプリなので、選べる後付けオプションが増えたりすれば通知で教えてくれる

  • KINTOのアプリのでも画面
  • KINTOのアプリのでも画面
  • KINTOのアプリのでも画面
  • コネクティッド機能を活用したさまざまなサービスも「KINTO Unlimited」の魅力。例えば、走行データを使ってエンジンオイルの劣化具合をモニタリングし、各ユーザーのクルマの使用状況に応じて適切な交換時期を知らせる機能などがある

納期についても耳よりな話が聞けた。KINTOが取り扱うプリウスは、トヨタの販売店で売るプリウス(サブスクではなく、購入して所有するプリウス)とは別建ての生産計画を構えているそうなのだ。例えばの話、プリウスを買いたい人がたくさんいた場合、購入から納車までの期間はどんどん伸びていってしまうわけだが、トヨタではKINTO向けのプリウスを別の生産計画で生産しているから、KINTOで申し込めば、普通に購入するよりも早くプリウスに乗れるかもしれないのである。1月20日の夜にHPで確認したところ、Uグレードなら契約から1.5~2カ月程度で納車してくれるそうだ。