このように超銀河団は宇宙最大の自己重力系構造であり、巨大なものは100メガパーセク(約3億2600万光年)の単位で広がっており、宇宙大規模構造のフィラメントの一部を成す。ただし、超銀河団については定義そのものがまだ曖昧だ。なおかつ、その正体や内部で何が起こっているかなど、多くの謎が内包されているが、我々の近傍宇宙の成り立ちを明らかにする上で非常に重要な研究対象だという。

このように宇宙は広大だが、非常に広い視野を持つHSCを用いたすばる戦略枠プログラムでは、満月の見かけの大きさの約4400倍に相当する広範囲を100億光年以遠の彼方まで観測することに成功している。同プログラムから得られる高品質な画像データは、未知の超銀河団を探すために、現時点で最も適したリソースの1つとされる。

そこで研究チームは今回、過去に同チームによって発見された100天体近くの超銀河団候補の中から、密度超過を示す範囲が最も広い天体に対し、星の総質量とダークマターの分布を調べたという。その結果、3つのダークマター密集領域を中心に、少なくとも19の銀河団で構成されたおよそ満月15個分の天域にまたがる超銀河団構造が、約55億光年先の宇宙に検出されたとした。

宇宙論的シミュレーションとの比較から、この超銀河団は太陽質量の1016(1京)倍のダークマター質量を持っていることが示唆された。なお、これはおとめ座超銀河団のおよそ10倍に匹敵するという。さらに、そのすぐ外側にも超銀河団相当の巨大構造が2つ確認されており、近傍宇宙最大のラニアケア超銀河団のような超巨大構造の前身である可能性があるとしている。

今回の論文の主著者である嶋川氏は今後、間もなく稼働する予定のすばる望遠鏡の超広視野多天体分光器「PFS」や、欧州宇宙機関が2023年に打上げ予定(2022年予定から延期)の近赤外線宇宙望遠鏡「ユークリッド」(すばる望遠鏡が同宇宙望遠鏡のサーベイに協力の予定)を使って、この超銀河団の3次元構造や内部の銀河形態などに迫っていくとしている。