藤井聡太王将に羽生善治九段が挑む第72期ALSOK杯王将戦七番勝負(毎日新聞社、スポーツニッポン新聞社、日本将棋連盟主催)は、第2局が1月21日(土)・22日(日)に大阪府高槻市の「摂津峡花の里温泉 山水館」で行われました。対局の結果、101手で勝利した羽生九段がスコアを1勝1敗のタイに戻しました。
相掛かりのテーマ図
藤井王将の先勝で迎えた本局は、先手となった羽生九段が相掛かりの序盤戦に誘導して幕を開けました。お互いに玉を中住まいに囲ったあと、羽生九段は飛車を中央に据えて後手の玉頭を狙います。ここまでは前例のある展開で、昨年8月に行われたA級順位戦の実戦例を下敷きに両者が研究を進めていたことがうかがわれました。
4筋で角交換が行われたとき、この角を銀で取り返した手が後手の藤井王将の用意していた対応でした。ここで先述の実戦から外れたものの、以降も両者はテンポよく指し手を進めていきます。1筋に味をつけたあと、先手の羽生九段が8筋で飛車をぶつけて交換を迫ったことで本格的な戦いが始まりました。
羽生九段の先攻と藤井王将の反撃
手番を握った羽生九段は、手にした飛車をさっそく敵陣に打ち込んで攻勢に出ます。端に打った角をすぐに敵玉そばの金と刺し違えたのは駒損の攻めだけに勇気のいる決断でしたが、続けて打った8筋への金打ちが意表の好手でした。控室の棋士たちを驚かせたこのへき地の金打ちは、旧来の価値観にとらわれない羽生九段が新時代の感覚にフィットしていることを物語っていました。
羽生九段が封じた封じ手が立会人の谷川浩司十七世名人によって開封されて2日目の戦いが始まります。玉が自陣で孤立している藤井王将は、ピッタリとした受けの手はないと見て攻め合いに舵を切りました。自陣に据えた馬と角、そして羽生陣に打ち込んだ飛車の3枚による藤井王将の攻めはさすがの迫力ですが、持ち時間で2時間ほどリードする羽生九段も慎重に読んで紙一重の受けを続けます。
「最強の攻め」を受け切って羽生九段が勝利
局面のテーマは「藤井王将が攻め切るか、羽生九段が受け切るか」に絞られました。駒を渡して攻めている藤井王将としては、攻めが一息ついてしまうと薄い自玉に王手をかけられてひとたまりもありません。このような状況の中で、羽生九段がふわっと自陣の歩を突いた手が受けの決め手になりました。3枚の大駒の利きをかわす脱出路を作られてみると、後手は先手玉が4筋から逃げ出すのを防ぐことができません。
攻めを続けるほかない藤井王将は二枚の角を切って最後の猛攻に出ますが、羽生九段の対応は冷静でした。約20手に及ぶ藤井王将からの王手ラッシュをかわしきり、最後はピッタリの合駒でこの追撃を受け切ります。終局時刻は17時56分、羽生玉への詰みがないことを確認した藤井王将が投了を告げて熱戦に幕が引かれました。これで勝った羽生九段は先手番をキープして1勝1敗のタイスコアに戻しました。
注目の第3局は1月28日(土)、29日(日)に石川県金沢市の「金沢東急ホテル」にて行われます。
水留啓(将棋情報局)