2月23日は「夫婦で妊活の日(ニニンサンキャク)」。子供を授かりたい夫婦が妊娠するために行う「妊活」は、夫婦が二人三脚で取り組むという意味を込めて、NPO法人男性不妊ドクターズが制定した。
同NPO法人は、男性不妊を担当する医師・医療研究者が共同して2014年9月に設立。不妊カップルの身体的・精神的及び経済的な負担を軽減し、よりよい妊活・出産ができる環境を確立するために市民講座の開催や男の妊活マークを作るなどの活動を行っている。
このほど2022年11月18日に東京・大手町で開催したセミナー「健康保険が使えるようになった今だからこそ知っておくべき男性妊活のすべて」にて行われたトークセッションの内容が公開された。
同NPO法人理事長の永尾光一氏は、「妻が不妊治療で大変な思いをしているのでどうサポートしたらいいのか?」と、不妊治療に取り組むカップルの男性からよく聞かれるという話を紹介。その上で、"不妊の48%は男性に原因がある""早期に治療をすれば自然妊娠する可能性が大きく広がる"という事実について、「まだあまり一般の方には認知が広がっていない」とし、男性側も泌尿器科をぜひ受診してほしいと訴えた。
副理事長の辻村晃氏が「日本の男性不妊の現状と男性の妊活について」と題して講演を行った。
現代人の精子の数は減り続けている
「現在、不妊に悩む夫婦のうち、精液に何等かの不良所見があるケースは約40%でした。しかし、不妊治療を始める前に医療機関で精液検査を受けたことがある人は、たった13%しかいませんでした。男性側に原因があるケースはかなり高い割合であるという事実は見聞きして知っていても、行動を伴って受診してみようという人が少ないのが現状です。その最大の理由は『自分に問題があると思っていないから』という根拠のないものです。
また、これから妊活を開始する一般男性にブライダルチェックを実施したところ、精子量、精子濃度、精子運動率など約25%(4人に1人の割合)の人に、精子になんらかの問題があることが分かりました。この数字は一般の方が想像しているより高い数字なのではないでしょうか。また、別の調査によると、現代人はここ40年、精子の数が減り続けており、その数は衝撃的なレベルの数字になっているのが実態です」
なぜ精液所見が悪いのか? 妊活にとってNGな習慣とは
「精液所見を悪化させる原因はいくつかあります。例えば肥満です。肥満男性が男性不妊で悩まれるケースは、普通の人と比較すると倍くらいあり、肥満が造精機能に影響を与えていることは明らかです。精子を作るベストな温度は33度くらいと言われていますが、肥満のために陰嚢の温度が上昇することが原因と考えられます。8週間ダイエットしたところ、陰嚢の温度が下がり、精子濃度や精子の直進性、形態についても改善されることが確認されました。つまり、生活習慣を改善することで精子の状態も改善することができるというわけです。
このほか、睾丸の温度をさげるために『ゆるい下着(トランクス)を使う』『長時間座ったままはやめる』『サウナや熱いお風呂は避けるようにする』などを実施すると良いでしょう。そのほか、『膝の上でパソコンを使わない』『携帯はズボンの前ポケットに入れない(陰嚢から遠ざける)』というちょっとした事も温度を下げるのに有効です。
そのほか『喫煙』『精神的なストレス』『Wi-Fi』も精子の状態を悪くすることが分かっています」
男性における生殖医療の保険適応化が開始
「2022年4月から生殖医療は保険診療となりました。保険診療になったことで、大きく変わったのは、『勃起障害(ED)』や『造精機能障害』の薬が保険適用となったことです。また、精子はたくさん作られているにも関わらず精子の通り道が何らかの原因で閉塞している『閉塞性無精子症』の方の場合、これまでも手術で精子を取り出すことが出来ました。しかし、手術が高額で躊躇していた人も多く、そういった方々にも医療を受け易くなる体制ができてきました」
「妊活」は夫婦ふたりで、男性はまず自分を知るところから
続いてゲストとして昨年7月に男児が誕生したばかりで妊活経験者のお笑いコンビ・よゐこの濱口優さんを迎え、トークセッションを展開。
「35。この数字は男性も年齢と共に子供を作る力が低下してくる、そういう意味で心に留めておきたい年齢です」「精液の中に精子がいると思っている人がほとんどなんです。でも年齢が上がるごとに総運動精子数は下がっていきますので、妊活は早期にスタートしていただきたいと思います」とドクターら。
「日本は世界でも性交渉がとても少ない民族と言われており、日本人は年平均57回(週1回ペース)、ギリシャは100回」「7時間睡眠を下回ると精子の数が22%減ると言われています。また、睡眠が少なくて健康に害があるとDNAのコピーにミスも起こってくるので、妊活を進める上で睡眠や生活習慣など規則正しい生活を送ることがとても大事です」「精子が作られるのに、74日ほどかかります。薬での治療を開始したとしても、風邪のように2~3日で効果が出るというものではありません」など妊活のポイントが紹介された。
濱口さんはこれから妊活を始めようとしている人に向けて、「いま不安に思っている男性も居ると思いますが、妊活は夫婦二人で取り組むこと」とアドバイス。「自分を知ることも大切なスタート。病院に行く前はすごく不安でしたが、自分の状態を知るということが大事だなと思います。優秀な専門ドクターに色々とサポートいただくこともできますし、ぜひ皆さんに知っていただければ」とメッセージを送った。