富士スピードウェイの隣接地にオープンした「富士モータースポーツミュージアム」には、国の垣根を越え、メーカーの垣根も越えて新旧の名車が集まっている。現地で実物を見て説明を聞いてきたので、印象に残った何台かのクルマをご紹介していきたい。今回はメルセデス・ベンツの「W25」というクルマだ。レーシングカーといえばカラフルな塗装も見ものだが、このクルマはなぜか地肌むき出しの銀色。その理由とは?

  • メルセデス・ベンツの「W25」

    メルセデス・ベンツの「W25」(取材日は2022年12月16日。展示内容は変更の可能性あり)

シルバー・アロー伝説の始まり

W25は1934年式のモデル。この年からグランプリでは「乾燥車両重量750kg以下」という新たな規定が導入された。なぜ重量を制限するかといえば、いくらでも重くできるとなれば、いくらでも大きなエンジンを積めてしまうからだ。

当時のレース界は国対抗という構図となっており、各車は「ナショナルカラー」を身にまとって参戦していた。ドイツのナショナルカラーは白で、W25も当初は白のペイントでレースに出る予定だった。ところがこのクルマ、出走直前に重量オーバーになってしまったそう。そこで塗装をはがして規定をクリアし、アルミボディむき出しの状態で出走して見事に優勝を果たしたのだ。これ以降、メルセデス・ベンツのレーシングカーは「シルバー・アロー」の異名をとることになる。

  • メルセデス・ベンツの「W25」
  • メルセデス・ベンツの「W25」
  • メルセデス・ベンツの「W25」
  • ボディサイズは全長4,040mm、全幅1,770mm、全高1,160mm、ホイールベースは2,725mm。重量は750kg。エンジンは水冷直列8気筒DOHCスーパーチャージャー、排気量は3,362cc。最高出力は260kW(354PS)との表示だった。軽量化のためシャシーフレームに無数の穴をあけたり、ボディやエンジンに軽合金を多用するなどの工夫があるクルマなのだが、レース前夜にわずかな重量オーバーが発覚。徹夜で白の塗装をはがしたそうだ

■Information
「富士モータースポーツミュージアム」
【場所】静岡県駿東郡小山町大御神645
【営業時間】10:00~17:00(入館受付は16:30まで)
【休館日】2023年3月までは無休

■入館料

【大人(18歳以上)】平日:オンライン予約1,600円/窓口購入1,800円、休祝日:オンライン予約1,800円/窓口購入2,000円
【中高生】平日:予約800円/窓口900円、休祝日:予約900円/窓口1,000円
【小学生】平日:予約600円/窓口700円、休祝日:予約700円/窓口800円