材料開発のオープン化を促進

また、レゾナックとして統合されたことで、材料開発にもシナジーのメリットが出ているとする。昭和電工は素材を構築するための分子設計に長け、昭和電工マテリアルズ(旧日立化成)はそうして作られた素材を混ぜ合わせ機能設計することに長けているためで、「市場から求められる機能を昭和電工マテリアルズ側から昭和電工側にフィードバック、それを受ける形で新技術を昭和電工から昭和電工マテリアルズに提案するといった市場に最適なものを提供しやすくなった」といった動きがすでに目に見える形ででてきたとする。

  • 旧昭和電工と旧昭和電工マテリアルズ(日立化成)の得意な部分が連携

    旧昭和電工と旧昭和電工マテリアルズ(日立化成)の得意な部分が連携することで、よりよい半導体材料の提供が可能になるとする (提供:レゾナック)

こうした共創活動については社内だけで終わらせることなく、社外のパートナーとの連携も強化していくことをレゾナックでは掲げている。

  • ハブとなることをレゾナックは目指す

    社会課題の解決には1社だけの力では難しいことから、オープンイノベーションを活用し、そのハブとなることをレゾナックは目指すとする (提供:レゾナック)

「化学はたくさんの良いものを提供してきたが、地球環境に負荷をかけてきた。化学メーカーとして、この課題に真摯に向き合う意思表示として、パーパスを『化学の力で社会を変える』とした。しかし、この課題はあまりにも大きいため1社では解決できない。エコシステム全体で連携する必要がある。レゾナックはそうしたエコシステムが“つながる”起点となる共創型化学会社へと変化していく」と、オープンイノベーションを活用していくことを掲げる。

その実現のために会見では3つのオープンイノベーション戦略が披露された。1つ目はレゾナックの研究開発の中核となるオープンイノベーション施設で、2024年の全面オープンに向けて、2023年より開発メンバーの入居を開始。その対応分野も計算科学、材料解析、量産化技術・設備管理、化学品安全管理・評価などに加え、70名のAIスペシャリストなどと多岐にわたり、中長期の新技術探索を社内の技術者のみならず、社外の地域や企業との連携も開かれた形で推進していくとする。

例えば、長期研究開発のテーマとしては6Gの実現に向けた次世代高速通信材料の開発であったり、プラスチックtoプラスチックを実現するための技術開発などがあるという。6Gの実用化は2029年~2030年ころと見られており、2025年には大まかな技術の方針が打ち出される見通し。3~5年ほどのタイムスパンであり、長期というほどではないように思われるが、AI技術、特に材料分野においてはマテリアルインフォマティクス(MI)の発展が著しく、これまで10年かかっていた研究が、圧倒的に短い期間でできるようになってきたといった背景があり、数年というスパンでも長期として位置づけられるようになってきたという。同社でもすでに、「従来、1つの素材の組み合わせを計算するのに3か月かかっていたが、計算科学の発展により、3か月で90種類の検証が可能になった」と説明する。

  • 長期研究開発の例

    長期研究開発の例 (提供:レゾナック)

2つ目は電気自動車(EV)をはじめとする自動車の電動化を推進することを目指した「パワーモジュールインテグレーションセンター」。文字通り、自動車で用いられるパワーモジュール関連材料の評価、実証のための拠点という位置づけ。電動車(xEV)の燃費(電費)や航続距離を向上させるためには、パワーモジュールから生じる熱をコントロールすることが1つの鍵となる。それを実現するためには素材の持つ能力を活用することが必要であり、こちらも2023年より顧客との共創を進めるとしている。

  • パワーモジュールインテグレーションセンターの概要
  • パワーモジュールインテグレーションセンターの概要
  • パワーモジュールインテグレーションセンターの概要 (提供:レゾナック)

同社は車載向けパワー半導体として期待されているSiCのエピウェハでも高いシェアを有しており、先般発表されたInfineon Technologiesとの長期供給契約をはじめ、多くのSiCパワー半導体メーカーに対してSiCエピウェハを供給している。ただし「あくまでレゾナックが手掛けるのはSiCエピウェハまで」(髙橋氏)とのことで、その先まで手掛けることは現在は想定していないとする。 このパワーモジュールインテグレーションセンターでは、「機能改善に必要な材料面の進化を踏まえたパワーモジュールを試作し、評価を行い、シミュレーションも活用し、各社のパワーモジュールの特性に合わせた補正まで行う計画。ゴールは顧客の開発期間短縮であり、2025年までに採用期間までのスケジュールの短縮を実現することを目指す」としている。

そして3つ目は「パッケージングソリューションセンター」。後工程ラインを設置し、オープンイノベーションとして広く公開している。そのため、半導体メーカーは他社の材料も組み合わせた実験なども行うことが可能となっている。

  • パッケージングソリューションセンターの概要

    パッケージングソリューションセンターの概要 (提供:レゾナック)

このパッケージングソリューションセンターはもともと日立化成が所有していたもので、すでに次世代半導体パッケージ実装技術開発のためのコンソーシアム「JOINT2(ジョイント2)」が、装置や材料を組み合わせ半導体チップを重ねる接合技術、チップを横につなぐ配線技術、基板の大型化技術といった3つのテーマの開発を進めている。

なお、同社では今後の方針として、市場や顧客を意識した材料開発が重要であるとの認識を示しており、その実現のために共創の仕組みを多く作り出していくことを目指すとするほか、そうした取り組みを通じて、市場にアクセスできる技術力を次々と育てあげていくことで、市場のけん引役となることを目指すとしている。

  • レゾナックの語源

    レゾナックの語源。ResonateとChemistryを組み合わせた造語となる (提供:レゾナック)