コロナ禍で一気に普及が進んだ、オンラインのエンタメ。そのひとつが、スマホひとつで家にいながらにして楽しめる「ライブ配信」だ。

新たにライブ配信に参入した人も増えており、イチナナの愛称でも親しまれる日本No.1ライブ配信アプリ「17LIVE」の認証ライバー数は、コロナ禍で3.2倍に増加したという。

17LIVE Group Chief Operating Officer 兼 代表取締役 Alex Lien(アレックス・レン)氏に、ライブ配信の魅力や業界の現状および今後について聞いた。

  • 17LIVE Group Chief Operating Officer 兼 代表取締役 Alex Lien(アレックス・レン)氏

■ひとつの空のもと、七つの大陸を舞台に、すべての瞬間を楽しむことができる世界を目指す

――17LIVEはどのような事業を展開されているのでしょうか。

「『ライブ』テクノロジーを通して、人と人のつながりを豊かにすること。」をミッションに、ライブ配信アプリ「17LIVE」の運営およびライブコマースサービス「HandsUP(ハンズアップ)」の提供を行っています。

「17LIVE」は世界6地域に拠点を置き、全238地域に展開するグローバルプラットフォームです。「1」と「7」という数字には、「ひとつの空のもと、七つの大陸を舞台に、すべての瞬間を楽しむことができる世界を目指す」という想いが込められています。

――ご自身の経歴についてお聞かせください。

台湾で生まれ、14歳でアメリカに移住し、アメリカで教育を受けました。大学卒業後は、通信業界で約9年間勤務した後、スターバックスに転職し、中国に赴任。2008年にはゲーム業界に転身し、中国を拠点に、ゲームの設計・開発・運営・マーケティングの統括を行ってきました。

2019年に17LIVEに入社。台湾のCEOを務める傍ら、東南アジア・アメリカ・インドなど、多彩な市場の統括を行ってきました。

2022年9月には、17LIVE Group COO 兼代表取締役に就任。今回、日本市場を統括することになり、非常にワクワクしています。

――「17LIVE」にとって、日本市場の位置づけはどのようなものでしょうか?

ライブ配信という分野において、日本はまだ成熟した市場とはいえません。しかし、だからこそ、我々のプラットフォームを通じて日本に新しいタイプのコンテンツを紹介できる点が利点だと思っています。

台湾では、プロバスケットボールリーグと提携して露出を拡大したり、選挙前にさまざまな政党の政治家が集まって「17LIVE」上で政治的な考えを披露したりと、さまざまな取り組みを行っています。

ライブコマースに関しても、日本はまだ黎明期にあり、伸びしろが大きいといえます。エンターテイメントだけでなくEコマースなども含めて、今後日本でもより多方面に影響力を発揮するプラットフォームとしてのあり方を模索していきたいと考えています。

■リアルタイムだから生まれる「化学反応」がライブ配信の魅力

――ライバー、あるいはライブ配信の魅力についてお聞かせください。

ライブ配信の一番の強みは、「リアルタイムでユーザー同士がコミュニケーションが取れる」ことです。ほかの動画共有プラットフォームでは、撮影後に「編集」という工程がありますが、ライブ配信は違います。

リアルタイムなのでごまかしがきかないですし、だからこそ「ワクワク感」が生まれます。ライバーとリスナー(ライブ配信視聴者)のあいだに生まれる「化学反応」や「つながり」がライブ配信を特別なものにしていると感じますね。

ライブコマースにしても、商品を見て、説明を聞いて「欲しい! 」「買いたい! 」と思ったときに、リスナーがその場でコマーサー(販売者)に質問できる点が、テレビの通販番組などとは大きく違う点です。リアルタイムだからこそ、ほかのチャネルではできないことができる点がライブ配信の魅力であり、強みでもあると考えています。

■認証ライバーを自社で育成し、活動しやすい環境を整備

――さまざまなライブ配信サービスがある中で、「17LIVE」の特徴や立ち位置は?

私たちの最大の強みのひとつが、オンラインだけでなく、オフラインの体験も重視している点です。我々ほど、オフラインのイベントに力を入れているライブ配信サービスはありません。

ライバーが輝けるオフラインイベントを充実させることで、リスナーとライバーのつながりがより強固になります。

また、ライバーのサポートに力を入れているのも「17LIVE」の特徴です。ライバーの管理・育成をエージェントに任せるのではなく、ガイダンスやトレーニングの実施、フォロワー数等の情報提供を通じて、認証ライバーの支援・育成を自社で行っています。

どのようにリスナーと交流すればいいか、どのようにして自分の配信を見てくれるリスナーを見つけて収益化していけばいいのか、しっかりとレーニングをするので、比較的早く収益化することができます。テクニックの面だけでなく、精神面まで含めたサポートを行っているので、競合プラットフォームに比べて活動しやすい環境が整っていると思います。

■コロナ禍で国内の認証ライバー数が3.2倍に

――ここ数年は、コロナ禍でライブ配信への注目度も高まっているのではないでしょうか。

コロナ禍がライブ配信ビジネスの成長を後押ししたのは間違いないでしょう。

実際に、「17LIVE」で活動する日本国内の認証ライバー数は、2019年11月時点では1万7,000名以上でしたが、2021年9月には5万4,000名以上に増えています。トップライバーの中には、高級外車を購入できるような月収を得ている方もいらっしゃいます。

最近は「ポストコロナ」の局面に入ってきていて、業界全体の成長が緩やかになってきていますが、オフラインイベントに力を入れている我々にとってコロナ禍の収束はマイナスではありません。

今後のさらなる成長に向けて、新しいコンテンツの提供と、プロダクト・サービスの改善・機能拡充を通して、ユーザーにより価値ある体験を提供していきたいと考えています。

―トップライバーになれる人の特徴や、トップライバーになるために大切なことを教えてください。

さまざまなスタイルのライバーがいますが、やはりカギとなるのは「応援してくれるファン(リスナー)との交流」です。

そこで大事になってくるのが、「ペルソナ(キャラクター設定)」です。自分をどのようなキャラクターとして打ち出すのか、その上でどのようにリスナーとコミュニケーションをとるのかをきちんと設計することが成功への近道です。

台湾のトップライバーのひとりはお坊さんですし、人気ライバーの中にはかなり年配の方もいます。「見た目は関係ない」とはいいませんが、それ以上にユーザーとの交流を通して、「もっとこの人と話したい」「もっとこの人の話を聞きたい」と思わせられるかどうかが大事なんです。

それに加えて、「継続性」も重要な要素です。練習を重ねることで人の心をつかむ話し方ができるようになっていくので、最初の3カ月は諦めないで、とにかく続けていくことが大切です。中には、毎日9~10時間にわたって配信し続けたことでトップライバーの仲間入りを果たしたライバーもいます。

■Vライバーに「ゲーム」の要素を付加し「ストーリー」を演出

――ライブ配信業界、あるいはライバーは今後どのように変化・成長していくと考えていらっしゃいますか。17LIVE社としての今後の展望も含めてお聞かせください。

日本に関していえば、ライブコマースがまだ黎明期にあり、まだまだ伸びしろがあります。引き続きライブコマースビジネスを育てつつ、勝機があるようであれば、ライブコマース分野への投資をさらに加速させていこうと考えています。また、2022年7月にローンチした音声ライブ配信アプリ「WAVE」への投資も継続していきます。

2023年の日本市場で最も注力したいのが「ゲーム」と「Vライバー」の融合です。既存のVライバーは「2次元のキャラクターになって話す」という程度にとどまっていて、「ストーリー」がありません。

そこで我々は、ゲームの要素を付加し、キャラクターに「ストーリー性」を持たせたいと考えています。2次元のキャラクターにゲームの要素を取り入れ、ストーリー性を加えることによって、命が吹き込まれたようにキャラクターがより生き生きとしてくるはずです。

Netflixなどのプラットフォームを通して日本のアニメ作品が全世界に配信されている今、Vライバーは今後世界に広がっていく可能性を秘めていると思いますね。

――今後日本発のライブ配信カルチャーなども生まれていきそうですね。

リアルタイム字幕が導入されれば、言葉の壁がなくなるので、台湾のユーザーが日本のライバーの配信を見ることもできるようになります。実は、アメリカのトップライバーは現地在住の日本人なんです。

我々はグローバルプラットフォームなので、世界の人々が国を超えてライブ配信を楽しむという動きは今後さらに広がっていくでしょう。すると、「グローバルスーパーライバー」と呼ばれるような人も生まれていくのではないでしょうか。