今回の研究の責任者である、阪大レーザー科学研究所の藤岡教授らは、微小空間において短時間ではあるが、キロテスラ級の非常に強い磁場を発生できることを2013年に発表済み。国内最大のレーザー装置である同研究所の「激光XII号レーザー」を用いて、レーザーをキャパシター・コイル・ターゲットと呼ばれる磁場発生装置に当てることでそれを実現した。

そこで今回は、その強磁場発生技術を磁気リコネクション用に改良。プラズマの圧力よりも磁場の圧力の方が大きい、「磁場駆動型リコネクション」を実験室で起こすことを目指して開発を進め、実験を行ったところ、無事に成功となり、その結果、電子が高エネルギーにまで加速されることが確認され、かに星雲のガンマ線フレアを引き起こす電子の超高加速が、磁気リコネクションによって起こっている可能性が示されたという。

また、磁気リコネクション中のプラズマの温度と密度の同時計測が行われ、それらがコンピュータシミュレーションと比較されたところ、磁気リコネクションによる加速機構の中でも、「直接電場加速」が最も有力な加速機構であることが示されたという。

  • 宇宙で起こっている磁気リコネクションが地上で再現された

    (左)藤岡教授らが開発したキャパシター・コイル・ターゲットの改良版を用いて、宇宙で起こっている磁気リコネクションが地上で再現された。(右)磁気リコネクションとはプラズマ中で磁力線(黒実線)がつなぎ変わる現象だ。橙色の領域で、磁力線がつなぎ変わり、大きく屈曲した磁力線が生まれる。この屈曲した磁力線はゴム紐のように真っ直ぐに戻ろうとし、その際に周囲のプラズマを引きずり、加速を起こすという (出所:阪大プレスリリースPDF)

なお、今回のような宇宙における加速機構を理解することは、それを応用した革新的な粒子加速器の発明につながる可能性があると研究チームでは説明している。